運営 / 更新 2026-10-13

訪問介護事業所が労働条件を引き下げるとき:就業規則の不利益変更の要件(合意・合理性・周知)

報酬改定や人件費の見直しで、手当を減らす、労働時間を延ばすなど、職員に不利な労働条件の変更を考える事業所があります。就業規則だけで変えられるのか迷う場合は、労働契約法の決まりを確認します。このページは、合意が原則であること、就業規則の変更で変えられる条件、必要な手続を、条文と厚生労働省の資料で整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護事業所の経営者が、賃金や労働時間などの労働条件を職員に不利な内容へ変更したいときに、個別の合意が原則か、就業規則の変更で変えられる条件、必要な意見聴取・届出・周知を、労働契約法と厚生労働省の資料で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、労働条件の変更検討票(変更の内容と対象職員、変更が職員に不利かの判断、合意を取る方法、合理性の説明材料、意見聴取・届出・周知の予定)を作成できる状態を目指します。

労働条件の変更と労働者との合意(労働契約法第8条)

労働契約法第8条は、労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができると定めています。厚生労働省の解説は、原則として使用者が労働者の合意なく労働契約を一方的に変更することはできず、変更するときは事前に十分な話合いなどを行うよう呼びかけています。

合意で変更する場合でも、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、第12条により、その部分が無効になります。無効になった部分は、就業規則の基準によります。

就業規則の変更と不利益な変更の制限(第9条)

第9条は、使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働条件を変更することはできないと定めています。ただし、次の第10条の場合は、この限りでないとされています。

厚生労働省のQ&Aは、労働条件を労働者に有利に変更する場合は、手続を経れば可能で問題も生じないとする一方、不利に変更する場合は、原則として、その変更に対する個々の労働者との合意が必要としています。例として、1日7時間30分の所定労働時間を8時間にする場合が挙げられています。

合意なしに変更できる例外(第10条)の要件

第10条は、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、変更が合理的であるときは、労働契約の労働条件は変更後の就業規則によると定めています。合理的かどうかは、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の事情に照らして判断されます。

ただし、労働契約で、就業規則の変更によっては変更されない労働条件として労働者と使用者が合意していた部分は、この例外の対象外です。個別の変更が合理的といえるかは事情で決まるため、このページは判断しません。

第10条で就業規則の変更により労働条件を変更できる要件(労働契約法、2026-10-13確認)
要件内容
周知変更後の就業規則を労働者に周知させている
合理性労働者の受ける不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の事情に照らして合理的
除外就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分は対象外

就業規則を変更するときの手続(意見聴取・届出・周知)

就業規則の変更の手続は、労働契約法第11条により、労働基準法第89条と第90条によります。厚生労働省のQ&Aは、作成の場合と同じく、過半数代表の意見を聴取し、その者の氏名を記載した意見書を添付して労働基準監督署長に届け出ること、変更後の内容を周知することが必要としています。

常時10人以上の労働者を使用する事業所の就業規則の作成と届出の人数の目安は、別のページで整理しています。意見聴取と届出の手続を踏むことと、第10条の合理性があることは、別の要件です。

このページの範囲と、あわせて確認するページ

このページが確認したのは、労働契約法第8条〜第12条と、厚生労働省のQ&Aおよび労働条件の変更の解説です。個々の変更が合理的か、職員が合意したといえるかは判断しません。変更の前に、社会保険労務士か都道府県労働局に確認してください。

就業規則の作成と届出は就業規則と36協定で、減給の懲戒の上限は懲戒処分と減給の上限で、有期契約の更新は有期契約と無期転換で確認できます。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 変更したい内容と、対象になる職員を書き出す。賃金、手当、労働時間、勤務地などのうち、職員にとって不利になる点はどれかを分けて書き、有利になる変更と区別する
  2. 職員に不利な変更は、原則として個々の職員との合意が必要なことを前提に、説明の方法と合意の取り方(書面にするかなど)を決める。変更の必要性と、不利益を和らげる措置があるかを、説明の材料として整理する
  3. 合意が得られない場合に就業規則の変更で対応できるかを検討する。変更後の就業規則を周知させることに加え、不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、労働組合等との交渉の状況などに照らして合理的といえるかを、社会保険労務士に確認する
  4. 就業規則を変更する場合は、過半数代表の意見を聴取して意見書を作り、労働基準監督署へ届け出る日程と、職員への周知の方法を決める。合意で変える場合も、就業規則の基準を下回っていないかを確認する

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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