運営 / 更新 2026-10-17

訪問介護の新人の同行訪問期間の賃金:労働時間になる範囲と最低賃金・試用期間の減額特例

新人の訪問介護員が先輩に同行して現場を見る期間は、事業所の指示で行うなら、賃金を払う労働時間として扱う必要が出てきます。この記事は、厚生労働省の労働時間のガイドラインと最低賃金法の条文で、同行訪問の時間が労働時間になる考え方、最低賃金との関係、試用期間の減額特例の条件を整理します。個別の事業所の扱いが適法かどうかの判断は、この記事では確定しません。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

同行訪問は労働時間になるか:使用者の指示で参加するなら労働時間

事業所が命じた同行訪問の時間は、労働時間として扱う前提で考えます。厚生労働省のガイドラインは、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間と定め、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たるとします。

ガイドラインは、労働時間として扱わなければならない時間の例に、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講を挙げています。労働時間に当たるかは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めによらず、労働者の行為が使用者から義務づけられ、または余儀なくされていた等の状況から、客観的に個別具体的に定まります。

このため「同行は見学だから無給」「研修期間だから無給」と書面に定めても、それだけでは労働時間でなくならないと読むのが安全です。同行を命じる事業所は、見学中心の時間も含めて、賃金の対象にする前提で人件費を組みます。

この記事で決めること

訪問介護事業所の経営者や管理者が、採用直後の新人が先輩に同行する期間の時間を労働時間として扱うか、賃金は最低賃金とどう関係するか、試用期間の減額特例が使えるかを、ガイドラインと最低賃金法で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、新人の同行期間の賃金メモ(同行の位置づけ・同行時間数と時給・記録方法・試用期間の減額特例の許可の有無)を作成できる状態を目指します。

同行期間の賃金:最低賃金以上、試用期間の減額は許可がある場合だけ

同行の時間が労働時間なら、最低賃金法第4条第1項により、使用者は最低賃金の適用を受ける労働者に、最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。最低賃金額は都道府県ごとに定められているため、事業所の所在地の額を確認します。時給の確認方法は、訪問介護員の時給と最低賃金:移動時間・記録時間を含めた時間額の確認方法で整理しています。

試用期間中の扱いには特例があります。最低賃金法第7条第2号は、使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときに限り、試の使用期間中の者について最低賃金額から一定率を減額して第4条を適用すると定めます。厚生労働省・都道府県労働局の案内によると、許可は、本採用労働者の賃金水準が最低賃金額と同程度であることなど、最低賃金額未満とすることに合理性がある場合が対象で、期間は必要最小限度とし最長でも6箇月、減額率の上限は20%(最低賃金法施行規則第5条)です。

許可を受けていなければ、試用期間中でも最低賃金額以上を支払います。同行期間が試用期間と重なっていても、同行そのものを理由に最低賃金を下回ってよいことにはなりません。

同行訪問の期間の賃金の扱い(条文とガイドラインの整理)
場面扱い根拠
事業所の指示で先輩に同行する労働時間として扱う前提で考える。見学中心でも、書面で無給と定めただけでは変わらないと読むのが安全労働時間のガイドライン 3(研修・教育訓練の受講、指揮命令下)
同行の時間に支払う賃金最低賃金額以上を支払う最低賃金法第4条第1項
試用期間中に最低賃金を減額したい都道府県労働局長の許可が必要。期間は最長6箇月、減額率の上限は20%最低賃金法第7条第2号、同法施行規則第5条
許可を受けていない試用期間中でも最低賃金額以上を支払う最低賃金法第4条、第7条第2号

同行期間の人件費を事業計画に入れる:同行時間数×時給の試算

採用した人数ごとに、同行の時間数に時給をかけて、単独で訪問できるようになるまでの人件費を見込みます。仮の数値で計算すると、時給1,300円、同行20時間なら1人あたり26,000円、10人を採用すれば260,000円です。この数値は計算の仕方を示す仮のもので、実際の時給と同行時間数は事業所ごとに決めます。

同行の時間数や単独訪問への切り替えの基準は、事業所が決める運用で、本記事で確認した範囲では法令が定める基準は見当たりません。人件費率の見方は訪問介護の人件費率は67.8%(令和7年度調査)|自事業所の数字で比べる計算つきで確認できます。新規の利用者への初回加算で求められるサービス提供責任者の同行は別の論点で、訪問介護の初回加算(200単位)の算定要件と、過去2月間・同行の扱いで扱っています。

同行期間に決めておくこと:位置づけ・記録・賃金・特例の許可

同行を命じるときは、先に同行の位置づけ、時間の記録、賃金、試用期間の特例の許可の有無を決めておきます。ガイドラインは、使用者が労働日ごとの始業・終業時刻を確認し記録することを求めているため、同行の日もほかの勤務日と同じ方法で記録します。記録の方法は訪問介護員の労働時間の記録方法:始業・終業時刻の確認と、自己申告制で必要な措置を参照してください。

同行期間に決めておく項目
項目決めること根拠・扱い
同行の位置づけ事業所が指示する同行は労働時間として扱う。募集時や雇入れ時に賃金の対象であることを伝えておく(運用の提案)ガイドライン 3(指揮命令下)
時間の記録同行の日も始業・終業時刻を確認し記録するガイドライン 4(1)
賃金の額所在地の最低賃金額以上であることを確認する最低賃金法第4条第1項
試用期間の減額減額する場合は労働局長の許可を得てから適用する(事業所の判断だけでは減額できない)最低賃金法第7条第2号

次に読む記事

次に読む記事は3本です。採用から単独配置までの計画は訪問介護員の採用・研修・定着計画、人件費の目安は訪問介護の人件費率は67.8%(令和7年度調査)|自事業所の数字で比べる計算つき、同行の日の時間の記録は訪問介護員の労働時間の記録方法:始業・終業時刻の確認と、自己申告制で必要な措置で確認できます。

この記事は、厚生労働省のガイドラインと最低賃金法を整理したもので、個別の事業所の同行期間の扱いが適法かどうかの確定ではありません。法令や通達は改正されることがあるため、実際の取扱いは労働基準監督署・都道府県労働局の案内や社会保険労務士に確認してください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 事業所が指示する同行訪問の時間を労働時間として扱う方針を決め、雇入れ時に賃金の対象であることを伝える
  2. 事業所の所在地の最低賃金額を確認し、同行期間の時給が最低賃金額以上であることを確かめる
  3. 同行時間数に時給をかけて1人あたりの人件費を試算し、採用人数をかけて事業計画の人件費に入れる
  4. 試用期間中に減額する場合は、都道府県労働局長の許可を受けてから適用し、許可がなければ最低賃金額以上を支払う。同行の日も始業・終業時刻を記録する

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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