運営 / 更新 2026-10-17

訪問介護の年間事業計画と月次の予実管理(年間目標・月次の数字・差への動き方)

訪問介護の年間事業計画は、売上の合計を決めるより先に、月ごとの訪問時間、必要な人員、費用、現金を並べて作ります。国保連からの入金はサービスを提供した月の約2か月後になるため、利益が出ていても手元の現金が足りない月が起きえます。この記事は、年間計画に置く数字、全国の経営指標の使い方、入金日程の確かめ方、月次で差が出たときの動き方を、厚生労働省と国保連の資料で整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

年間計画に置く数字は、訪問時間・人員・費用・現金の4つ

訪問介護の売上は、提供した訪問時間に報酬を掛けて決まります。年間計画では、売上の合計だけを目標にせず、12か月の列に、提供する訪問時間、その時間をまかなう訪問介護員とサービス提供責任者の人数、給与や事務所費などの費用、月末の現金を置きます。訪問時間から人員が決まり、人員から費用が決まる順に並べると、どの数字が動くと全体が動くかが見えます。

計画値は、利用者の見込み、訪問介護員の勤務可能時間、休みの月(年末年始・お盆)を、事業所の実際の予定から置きます。額は事業所の規模、地域、利用者の状況で変わり、一次資料に事業所共通の値がないため、この記事では目標額や目安の額を示しません。数字を組み立てる入力欄は事業計画シミュレーターで試せます。

この記事で決めること

開業後の訪問介護事業所の運営者が、年間の事業計画に置く目標の種類(訪問時間・人員・現金)と、月次の予実管理で見る数字、全国の経営指標の使い方、国保連の入金日程の確かめ方を整理するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、年間事業計画の月次一覧表(月ごとの訪問時間・人員・入金額の計画値と、差が出たときの確認先)を作成できる状態を目指します。

全国の経営指標は目標にせず、比べる列として置く

厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査(令和5年度・令和6年度決算)では、訪問介護の税引前収支差率(物価高騰対策関連補助金を含まない)は、令和5年度決算が11.1%、令和6年度決算が9.6%でした。収入に対する給与費の割合は、令和5年度決算が67.0%、令和6年度決算が67.8%です。令和6年度決算で赤字の事業所は35.1%でした。

これは調査に回答した事業所の集計値で、概況調査(改定後2年目に実施)は3年に1度の経営実態調査とは別の調査です。同じ調査で赤字の事業所が3割を超えているように、事業所ごとの差は大きいため、全国の9.6%を自事業所の目標値にはしません。年間計画では、全国の値を「自事業所の過去の月と並べて、離れ具合を見る列」として使います。

訪問介護の経営指標(令和7年度介護事業経営概況調査)
指標令和5年度決算令和6年度決算
税引前収支差率(物価高騰対策関連補助金を含まない)11.1%9.6%
収入に対する給与費の割合(物価高騰対策関連補助金を含まない)67.0%67.8%

入金は提供月の約2か月後:現金が最も少ない月を探す

国保連への請求は、サービスを提供した月の翌月に出し、その翌月に入金される並びで、提供から入金まで約2か月あきます。東京都国民健康保険団体連合会の令和8年度の表では、請求の受付は毎月1日から10日で、受付月ごとに支払日が決まっています。たとえば10月受付分の支払日は11月24日、11月受付分は12月23日、12月受付分は1月25日です。

給与や事務所費の支払は提供した月からかかるため、利用者が増える月ほど、入金が追いつくまでの現金が減ります。年間計画では、月ごとの入金額と支払を並べて、手元の現金が最も少なくなる月を先に見つけておきます。

他の都道府県の日程は、所属する国保連の年度の表で確認してください。年度が変わると日程も変わるため、前年度の表は使い回しません。入金の月次サイクルは訪問介護の国保連請求・入金・返戻の月次サイクルで整理しています。

東京都国保連の令和8年度の受付月と支払日(一部)
受付月支払日
令和8年10月11月24日(火)
令和8年11月12月23日(水)
令和8年12月令和9年1月25日(月)
令和9年1月2月24日(水)

月次で見る数字と、差が出たときの動き方

月次では、年間計画に置いた4つの数字(訪問時間、人員、費用、現金)の計画と実績を並べます。差が出たら、売上の差を、件数、1件あたりの時間、費用、入金時期のどれから来ているかに分けて原因を探します。分け方は訪問介護の月次KPIと予実差異分析に、請求・入金・勤怠・帳簿を照合して締める手順は訪問介護の月次決算・記録照合の手順にまとめています。

動き方は、差の原因ごとに先に決めておきます。訪問時間が計画を下回る月は新規受入の見込みと既存利用者の予定を、人員が不足する月は採用と勤務の調整を、費用が計画を上回る月は増えた項目を、現金が計画を下回る月は入金日と支払の時期を確認します。一度の差で年間計画を直さず、同じ方向の差が続いたときに直す条件を、あらかじめ書いておきます。

介護報酬の改定で前提が変わるときは、年間計画の算定の前提から見直します。進め方は訪問介護の介護報酬改定時の事業計画見直しで確認できます。

この記事で確かめていないこと

個別の事業所の収支や利益の目標額、税務申告と会計処理はこの記事では扱いません。東京都以外の国保連の請求・支払の日程は確認していません。経営指標は令和6年度決算までの集計値で、その後の調査結果は確認していません。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 12か月の列を作り、月ごとに、提供する訪問時間、必要な訪問介護員とサービス提供責任者の人数、費用(給与・事務所費など)の計画値を書く
  2. サービスを提供した月の翌月に請求し、その翌月に入金される並びで、月ごとの入金額と支払の予定を並べ、手元の現金が最も少なくなる月を見つける。国保連の受付期間と支払日は、所属する国保連の年度の表で確認する
  3. 全国の収支差率や給与費割合は目標にせず、自事業所の過去の月と比べる列として別に置く。月次で差が出る数字(件数・時間・費用・現金)と、見直しを判断する差の大きさを先に決めておく
  4. 月次決算のあとに、計画と実績の差を原因ごとに書き、翌月の動き(採用・訪問枠の調整・費用の見直し)と、年間計画を直す条件を記録する

関連ガイドで計画をつなぐ

隣接する判断をつなぎ、記事単体で計画を止めないためのガイドです。

よくある質問

迷いやすい範囲と確認順を、質問ごとに整理します。

訪問介護の年間事業計画には何を置けばよいですか?

売上の合計だけでなく、月ごとの訪問時間、必要な人員、費用、現金の4つを置きます。訪問時間が決まれば必要な人員が決まり、国保連の入金は提供月の約2か月後になるため、現金は別の列で見ます。目標額の設定は事業所の規模や地域で変わり、この記事では額を示していません。

全国の訪問介護の収支差率は事業所の目標にしてよいですか?

しません。厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査では、訪問介護の令和6年度決算の税引前収支差率は9.6%ですが、これは調査に回答した事業所の集計値です。同じ調査で赤字の事業所は35.1%あり、事業所ごとの差が大きいため、自事業所の過去の月との比較を主にします。

国保連からの入金はいつですか?

東京都国民健康保険団体連合会の令和8年度の表では、請求の受付は毎月1日から10日で、たとえば10月受付分の支払日は11月24日です。サービスを提供した月の翌月に請求し、その翌月に入金される並びです。他の都道府県の日程は、所属する国保連の表で確認してください。

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

次に読む: 訪問介護の月次KPIと予実差異分析 →