運営 / 更新 2026-10-17
訪問介護の入浴介助と訪問入浴介護の違い:老計10号1-2・介護保険法第8条・基準第45条
訪問介護の入浴介助と訪問入浴介護は、介護保険法では定義が別で、浴槽の提供の有無のほか、職員の体制も指定の種類も異なります。この記事は、管理者と訪問介護員が、自事業所で提供できる入浴の支援と、ケアマネジャーに相談する場面を見分けるための整理です。個々の利用者にどちらが適するかは、担当のケアマネジャーと主治の医師に確認する事項です。
法律上の定義:浴槽を提供するかどうかが分かれ目
介護保険法第8条第2項は、訪問介護を、居宅要介護者の居宅で、介護福祉士その他政令で定める者が行う、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるものと定義しています。入浴は、訪問介護が行う世話の例として条文に挙がっている一つです。
第3項は、訪問入浴介護を、居宅要介護者の居宅を訪問し、浴槽を提供して行われる入浴の介護と定義しています。訪問介護の定義には浴槽の提供という言葉はなく、訪問入浴介護の定義は入浴の介護だけに絞られています。
通知の例示は、定義の違いを補う参考になります。老計第10号の全身浴(1-2-3)の流れには、浴室での安全確認、浴槽の清掃、湯はり、入湯、洗体・洗髪、浴槽の簡単な後始末が含まれ、浴室と浴槽がある場面の手順として書かれています。浴槽を持ち込むかどうかの区別は、通知の例示ではなく、法第8条第3項の定義から読みます。
さらに、指定は居宅サービスの種類ごと、事業所ごとに行われます(第70条第1項)。訪問介護の指定を受けていることは、訪問入浴介護の指定を受けていることを意味しません。
| 項目 | 訪問介護の入浴介助 | 訪問入浴介護 |
|---|---|---|
| 法の定義 | 第8条第2項。入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話の一つ | 第8条第3項。居宅を訪問し、浴槽を提供して行われる入浴の介護 |
| 浴槽 | 定義に浴槽の提供はない(老計第10号1-2-3は浴室・浴槽がある場面の手順を例示) | 浴槽を提供する(事業所は浴槽等の設備・備品等を備える。基準第47条) |
| 1回の訪問の体制 | 訪問介護員等が行う(員数と資格は基準第5条) | 看護職員1人と介護職員2人(基準第50条第6号) |
| 事業所に置く職員 | 訪問介護員等と、サービス提供責任者(基準第5条) | 看護職員1以上・介護職員2以上、うち1人以上は常勤(基準第45条) |
| 指定 | 訪問介護としての指定(法第70条第1項) | 訪問入浴介護としての別の指定(法第70条第1項) |
この記事で決めること
訪問介護事業所の管理者・訪問介護員が、利用者の入浴の支援について、訪問介護の入浴介助と別の居宅サービスである訪問入浴介護の違いを法令で見分け、自事業所で提供できる範囲と、ケアマネジャーへ連絡して相談する場面を決めるための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、入浴の相談の受付メモ(相談者・利用者の希望・自宅の浴室の状況・居宅サービス計画での位置づけ・ケアマネジャーへ伝えた日と内容)を作成できる状態を目指します。
訪問介護の入浴介助の中身(老計第10号1-2)
老計第10号の身体介護の区分1-2「清拭・入浴、身体整容」は、湯につかる全身浴だけの区分ではありません。清拭(全身清拭、1-2-1)、部分浴(手浴・足浴は1-2-2-1、洗髪は1-2-2-2)、全身浴(1-2-3)、洗面等(1-2-4)、身体整容(1-2-5)、更衣介助(1-2-6)が並んでいます。
全身浴の例示は、安全確認と声かけ・説明、浴槽の清掃、湯はり、物品の準備、排泄の確認、脱衣室の温度確認、脱衣、皮膚等の観察、浴室への移動、湯温の確認、入湯、洗体・すすぎ、洗髪・すすぎ、体を拭く、着衣、身体状況の点検・確認、髪の乾燥と整髪、居室への移動、水分補給、汚れた衣服の処理、浴槽の簡単な後始末などです。準備と後始末を含む一連の流れが、身体介護の入浴介助として示されています。
老計第10号は、示した個々のサービス行為の一連の流れは例示であり、実際に提供するときは利用者個々人の身体状況や生活実態に即した取扱いが求められると述べています。例示にある行為をすべて行うことが入浴介助の条件ではありませんし、例示にない手順だからといって直ちに入浴介助でなくなるわけでもありません。
身体介護の定義の注には、入浴や整容そのものは要介護状態が解消されても日常生活に必要な行為であるが、それを介助する行為は要介護状態が解消されれば不要になる、という説明があります。この説明が、入浴を手伝う行為が身体介護に当たる理由です。
老計第10号全体の区分と、できる行為・できない行為の線引きは、老計10号とは?訪問介護でできること・できないこと一覧(身体介護・生活援助の区分)で整理しています。
訪問入浴介護の体制:看護職員1人と介護職員2人
運営基準第45条は、訪問入浴介護の事業所に、看護師または准看護師(看護職員)を1以上、介護職員を2以上置くことを求めています。これらの従業者のうち1人以上は常勤でなければなりません。
第50条第6号は、1回の訪問につき看護職員1人と介護職員2人で行い、そのうち1人をサービス提供の責任者とすると定めています。ただし、利用者の身体の状況が安定していることなどから、入浴によって身体の状況等に支障を生ずるおそれがないと認められるときは、主治の医師の意見を確認したうえで、看護職員に代えて介護職員を充てることができます。
利用者から受け取れる費用は、法定代理受領の利用料の一部負担のほか、通常の事業の実施地域以外での交通費と、利用者の選定による特別な浴槽水等に係る費用です(第48条第3項)。これらの費用を受け取るときは、あらかじめ利用者またはその家族に内容と費用を説明して同意を得る必要があります(第4項)。
訪問介護の事業所が、訪問入浴介護と同じ体制を整えるには、訪問入浴介護としての指定を別に受ける必要があります。他のサービスへ事業を広げるときの指定の主体と人員の比べ方は、訪問介護から広げる5サービスの比較:指定の主体・人員・管理者の兼務で扱っています。
入浴の相談を受けたときの確認手順
利用者や家族から入浴の相談を受けたら、まず、希望する入浴の形(全身浴・部分浴・清拭など)と、自宅の浴室を使えるかどうかを聞き取ります。ここで得た情報は、ケアマネジャーに伝えるときの材料になります。
訪問介護の事業者は、居宅サービス計画が作成されている場合は、その計画に沿って訪問介護を提供しなければなりません(基準第16条)。居宅サービス計画に入浴介助が位置づけられていれば計画に沿って提供し、位置づけが無い入浴の支援を始めたいときは、提供の前に担当のケアマネジャーへ連絡します。
利用者が居宅サービス計画の変更を希望する場合は、その利用者を担当する居宅介護支援事業者への連絡その他の必要な援助を行う必要があります(基準第17条)。浴槽を持ち込む形の入浴を希望している、または自宅の浴室での介助が難しいと感じたときは、自事業所が訪問入浴介護の指定を受けていなければ、ケアマネジャーに居宅サービス計画の見直しを相談します。
どちらのサービスが適するかは、利用者の心身の状況や住環境、主治の医師の意見を踏まえて、ケアマネジャーが居宅サービス計画の中で判断する事項です。以下は条文の定めではなく事業所内の運用例ですが、訪問介護員が自分で判断して切り替えたり、他事業所のサービスの利用を勧めたりせず、見たままの状況を記録して管理者に報告し、管理者からケアマネジャーへ伝えます。
訪問介護の事業所が、ケアマネジャーとの間でサービスの提供状況や変化を共有する手順は、訪問介護のサービス提供・ケアマネ連携・月次報告にまとめています。
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老計第10号の区分と、身体介護・生活援助にならない行為の線引きは、老計10号とは?訪問介護でできること・できないこと一覧(身体介護・生活援助の区分)で確認できます。
短期入所や通所サービスを利用している間、訪問看護と同じ時間帯に訪問介護を算定できるかどうかは、訪問介護と他サービスの算定関係(短期入所・通所・訪問看護)で整理しています。
ケアマネジャーへ利用者の変化を伝える手順は、訪問介護のサービス提供・ケアマネ連携・月次報告で扱っています。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 利用者や家族から入浴の相談を受けたら、希望する入浴の形(全身浴・部分浴・清拭など)と、自宅の浴室を使えるかどうかを聞き取り、受付メモに書く
- 居宅サービス計画に訪問介護の入浴介助が位置づけられているかを確かめ、位置づけがあれば計画に沿って提供し、無いときは提供を始める前に担当のケアマネジャーへ連絡する
- 浴槽を持ち込む形の入浴を希望している、または自宅の浴室での介助が難しいと感じたときは、自事業所が訪問入浴介護の指定を受けていなければ、ケアマネジャーへ居宅サービス計画の見直しを相談する
- ケアマネジャーへ伝えた内容と返ってきた回答を受付メモに残し、計画が変わるまでの間の対応を訪問介護員に共有する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。