運営 / 更新 2026-10-17
訪問介護事業所のケアマネへの周知:伝える情報と利益供与の禁止の境界
訪問介護の新しい事業所にとって、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに事業所を知ってもらうことは、利用者を迎える入口になります。ただし、ケアマネジャーが利用者にどの事業者を勧めるかは、居宅介護支援の基準で公正中立と定められており、訪問介護側も、利用させることの対償としての金品の供与を禁じられています。この記事では、周知として伝えてよい情報と、越えてはいけない線を、運営基準の条文で確認できた範囲で整理します。
結論:周知は情報の提供に絞り、紹介の見返りを渡さない
訪問介護の運営基準第35条は、指定訪問介護事業者が、居宅介護支援事業者またはその従業者に対し、利用者に特定の事業者のサービスを利用させることの対償として、金品その他の財産上の利益を供与することを禁じています。居宅介護支援の基準第25条第3項は、受け取る側にも同じ趣旨の禁止を置いています。
一方で、居宅介護支援の基準第13条は、ケアマネジャーが居宅サービス計画を作るとき、当該地域の居宅サービス事業者等のサービスの内容や利用料などの情報を、利用者やその家族に適正に提供することを求めています。ケアマネジャーが地域の事業者の情報を持っていることは、制度の前提です。事業所の周知は、この情報を正確に届けることと位置づけると、境界が分かりやすくなります。
この記事は、条文で確認できた範囲を書いています。個別の行為が第35条に違反するかの判断はしません。
| 基準 | 条文 | 定めていること |
|---|---|---|
| 居宅介護支援の基準(省令第38号) | 第1条の2第3項 | 居宅サービス等が特定の種類や特定の事業者に不当に偏しないよう、公正中立に行う |
| 居宅介護支援の基準(省令第38号) | 第4条第2項 | 利用者は複数の事業者を紹介するよう求めることができると、提供の開始前に説明する |
| 居宅介護支援の基準(省令第38号) | 第13条 | 地域の居宅サービス事業者等のサービスの内容・利用料等の情報を、利用者や家族に適正に提供する |
| 居宅介護支援の基準(省令第38号) | 第25条第3項 | 利用させることの対償として、居宅サービス事業者等から金品等を収受してはならない |
| 訪問介護の基準(省令第37号) | 第35条 | 利用させることの対償として、居宅介護支援事業者等へ金品等を供与してはならない |
この記事で決めること
訪問介護事業所の開業者や管理者が、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに事業所を知ってもらうとき、対応地域・時間帯・受入れ状況などの情報提供と、利用させることの対償としての金品の供与の禁止の境界を、運営基準の条文で確認する。ための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、居宅介護支援事業所への周知用の事業所情報シート(対応地域・曜日と時間帯・対応できるサービス・受入れ状況・連絡先、更新日)と、渡したものの記録を作成できる状態を目指します。
ケアマネジャーが利用者に事業者を勧めるときの前提
居宅介護支援の基準第1条の2第3項は、居宅介護支援の提供に当たって、利用者に提供されるサービスが特定の種類または特定の居宅サービス事業者等に不当に偏しないよう、公正中立に行うことを求めています。第4条第2項は、提供の開始前に、居宅サービス計画が利用者の希望に基づいて作られること、利用者は複数の事業者を紹介するよう求められることを説明するとしています。
さらに第4条第3項は、前6か月に作った居宅サービス計画のうち、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与、地域密着型通所介護がそれぞれ位置づけられた割合と、それらの回数のうち同一の事業者が提供した割合を、利用者に説明するよう努めることを求めています。ケアマネジャーは、特定の事業者に偏っていないかを利用者に説明する立場にあります。
このため、訪問介護の事業所が「うちを優先して使ってほしい」と頼む形の働きかけは、相手の基準と衝突しやすくなります。周知では、利用者の希望に沿って選ばれる候補の一つとして、正確な情報が届いている状態を目指します。
周知で伝える情報の例(運用の例)
どの情報を伝えるかは、条文が決めているわけではありません。次の項目は、条文の趣旨に沿った運用の例であり、事業所が自分で決める部分です。
| 項目 | 伝える内容の例 | 更新するとき |
|---|---|---|
| 対応地域 | 訪問できる市区町村・地区、移動に時間がかかる地域の扱い | 対応地域を変えたとき |
| 曜日と時間帯 | 対応できる曜日、早朝・夜間・土日の可否 | 勤務表を組み替えたとき |
| サービスの内容 | 身体介護・生活援助・通院等乗降介助など、対応できる内容 | 提供できる内容が変わったとき |
| 受入れ状況 | 新しい利用者を受けられる曜日・時間帯、受けられない条件 | 受入れ状況が変わったとき |
| 連絡先と担当者 | 相談を受ける人、連絡のつきやすい時間帯 | 担当が変わったとき |
空き状況の伝え方
受入れ状況は、周知のなかでケアマネジャーが最も使う情報の一つです。伝えるときは、受けられる曜日と時間帯を具体的に書き、伝えた日付を添えます。受入れ状況は職員の勤務で変わるため、古い情報のままにしておくと、ケアマネジャーが依頼してから断られる場面が増えます。
訪問介護の運営基準第9条は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならないと定めています。受けられない条件を事前に伝えておくことは、依頼を受けたときに断る理由を整理する助けにもなります。提供を断るときの扱いは訪問介護の提供拒否禁止と提供困難時の紹介・連絡で確認できます。
稼働の余裕を数字でどう把握するかは、訪問介護の「稼働率」の計算式と平均:指定基準に定義なし、公的な平均値もなしで扱っています。
越えてはいけない線:金品・接待・物品の提供
第35条が禁じるのは、利用者に特定の事業者のサービスを利用させることの対償としての、金品その他の財産上の利益の供与です。どのような金品や接待が「対償」に当たるかの線引きは、確認した条文には書かれていません。会食、物品の提供、広告料の名目の支払いなどが禁止の対象になるかは、事業所のある指定権者に確認します。
運用の例としては、居宅介護支援事業所への連絡を情報の提供と相談への応答に絞ること、金品や接待などを渡す場合は事前に管理者が目的と内容を確認すること、判断に迷うものは渡さずに指定権者へ確認し、確認した日と回答を記録することが考えられます。条文の読み方は訪問介護の利益供与の禁止(基準第35条):居宅介護支援事業者への金品で確認できます。
相手のケアマネジャーも、第25条第3項で金品の収受を禁じられています。受け取る側が断る可能性があることも、前提として知っておくと、渡す側として無理のない関係を保てます。
周知のあとの関係づくり
利用者を受けたあとの連絡、報告、会議への出席などの通常の連携は、周知とは別の実務です。訪問介護のサービス提供・ケアマネ連携・月次報告で確認できます。
周知を行った日、相手、伝えた内容を簡単に記録しておくと、受入れ状況を更新するときに共有先を落とさずに済みます。記録は、金品などを渡していないことを後から確認するときの手がかりにもなります。
この記事で確認していないこと
この記事は、居宅介護支援の基準(省令第38号)第1条の2・第4条・第13条・第25条と、訪問介護の基準(省令第37号)第9条・第35条を、e-Govの現行条文で2026-10-17に確認した範囲を書いています。
解釈通知、都道府県や市町村が独自に出している指導の内容、居宅介護支援の報酬上の扱い(特定の事業者への集中を理由とする減算など)は、この記事では確認していません。個別の行為が第35条に違反するかの判断は、事業所のある指定権者に確認してください。
次に知りたいこと
第35条の条文と、違反したときの定めは、訪問介護の利益供与の禁止(基準第35条):居宅介護支援事業者への金品で確認できます。
依頼を断らざるを得ないときの扱いは、訪問介護の提供拒否禁止と提供困難時の紹介・連絡で確認できます。
受入れの余裕を数字で見る方法は、訪問介護の「稼働率」の計算式と平均:指定基準に定義なし、公的な平均値もなしで確認できます。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 対応できる地域、曜日と時間帯、サービスの内容、受入れできる状況を、1枚の情報シートにまとめ、更新日を入れる
- 居宅介護支援事業所へは、情報シートの共有と、相談があったときの応答に絞り、特定の事業者を位置付けてほしいという依頼の形にしない
- 金品、会食、物品、広告料の名目の支払いなど、紹介の見返りと受け取られるおそれのあるものは、管理者が事前に確認し、判断に迷うときは指定権者に確認する
- 空き状況を伝えた日、相手、内容を記録し、受入れ状況が変わったときは共有済みの事業所へ更新を伝える
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。