運営 / 更新 2026-10-14

訪問介護事業所の電子取引データ保存:請求書・領収書の3つのルールと猶予措置

メールやクラウドで受け取った請求書や領収書のデータは、印刷して紙で持っているだけでは保存したことになりません。電子帳簿保存法は、令和6年1月以降にやり取りした電子取引データを、決められたルールに沿って電子データのまま保存するよう求めています。この記事では、国税庁の令和6年11月のパンフレットを中心に、保存義務の根拠となる法律の条文も確認して、保存が必要なデータ、3つの保存ルール、検索の簡易な方法、対応が間に合わないときの猶予措置を、訪問介護事業所の経理担当者向けに整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護事業所の経理担当者が、メールやクラウドで受け取った・交付した請求書や領収書のデータを、電子帳簿保存法の電子取引データ保存のルール(改ざん防止・備付け・検索)に沿って保存する方法を、国税庁の資料で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、電子取引データの保存ルール運用表(対象データの種類、受領・交付の経路、保存先、ファイル名の付け方、改ざん防止の方法、確認者)を作成できる状態を目指します。

保存が必要なのは、データでやり取りした請求書・領収書などの全部

電子帳簿保存法の第7条は、所得税(源泉徴収に係る所得税を除く)と法人税の保存義務者に、電子取引を行った場合は取引情報の電磁的記録を保存するよう定めています。法人の訪問介護事業所も、個人事業主として開業した事業所も、この保存義務者に当たる場合があります。

国税庁のパンフレットは、書面でやり取りしていたら保存が必要な書類に相当するデータ、つまり注文書、契約書、送り状、領収書、見積書、請求書などを、受領したときも交付したときも電子保存するよう求めています。保存するファイルの形式は問いません。

対象になるのは、あくまでデータでやり取りしたものです。紙でやり取りしたものをデータにしなければならないわけではありません。

訪問介護事業所で電子取引データになりやすい場面(運用例)

次の場面は、国税庁の資料が訪問介護を例に挙げているものではなく、事業所でデータの経路を洗い出すための運用例です。取引先から届く請求書では、介護ソフトやクラウドサービスの利用料、求人媒体、車両のリースやガソリンカード、社会保険労務士や税理士の報酬の請求書がメールやマイページで届く場合があります。

事業所が交付する側では、利用者や家族に利用料の領収証をPDFでメール送信する場合があります。領収証に書く内容と交付義務は「訪問介護の利用料の領収証:交付義務と費用の区分記載」で確認できます。ここで扱うのは、そのデータを事業所が保存するときのルールです。

どのデータがこの制度の対象になるかは、取引の内容と事業所の税務上の位置づけで変わります。個別の判断は、税務署や税理士に確認してください。

原則の3つのルール:改ざん防止・備付け・検索

パンフレットが示す原則のルールは3つです。1つ目は、改ざん防止の措置をとることで、方法は4つあり、いずれかをとれば足ります。内訳は、タイムスタンプ付きデータの受領、受領データへのタイムスタンプの付与、履歴が残るシステムでの授受と保存、事務処理規程の策定と運用です。

2つ目は、保存したデータを確認するためのディスプレイやプリンタ等を備え付けることです。3つ目は、日付、金額、取引先の3つの要素で検索できるようにすることです。

3つ目の検索には、次の追加条件があります。日付または金額での範囲指定検索と、2つの要素を組み合わせた検索ができること、または税務調査等で電子取引データのダウンロードの求めに応じられることのどちらかです。

電子取引データ保存の原則的な3つのルール(国税庁・令和6年11月のパンフレット)
ルール内容専用のシステムを使わない方法の例
改ざん防止の措置タイムスタンプ、訂正・削除の履歴が残るシステム、事務処理規程のいずれか事務処理規程を策定して運用し、備え付ける
ディスプレイ等の備付け保存データを確認できる画面とプリンタ等を備える事業所のパソコンとプリンタ
日付・金額・取引先での検索3つの要素で検索できることに加え、範囲指定・組み合わせ検索、またはダウンロードの求めへの対応索引簿を表計算ソフトで作る、または規則性のあるファイル名で1つのフォルダにまとめる

検索の簡易な方法:索引簿か、規則的なファイル名

パンフレットは、検索の要件を満たす簡易な方法を2つ示しています。1つは、表計算ソフト等で索引簿を作り、連番、日付、金額、取引先、備考を記録して、その検索機能を使う方法です。

もう1つは、データのファイル名を日付、金額、取引先の順で規則的に付け、特定のフォルダにまとめて、フォルダの検索機能を使う方法です。パンフレットの例は「20240331_110000_(株)霞商店.pdf」のような形です。

訪問介護事業所では、ケアマネジャーや利用者との連絡に使うフォルダと経理のフォルダを分けておくと、取引先ごとの確認がしやすくなります。個人情報を含むデータの保管の注意は、「訪問介護事業所の情報安全管理:厚労省の手引き(令和8年4月)のチェックリスト5区分」で確認できます。

検索の要件が不要になる場合と、猶予措置

パンフレットは、基準期間(2年前の事業年度)の売上高が5,000万円以下の方などは、電子取引データのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、3つ目の検索の要件を満たす必要はないと書いています。これは令和6年11月時点の記載で、税制改正で変わる可能性があります。

原則のルールに対応が間に合わないときの猶予措置もあります。所轄税務署長が、原則のルールに従って保存できなかったことに相当の理由があると認めることと、税務調査の際に、電子取引データのダウンロードの求めと、プリントアウトした書面の提示・提出の求めの、両方に応じられることの、2つを満たす場合です。事前の届出は要りません。

パンフレットには、人手不足、システム整備の資金不足、システム整備が間に合わないことも相当の理由として認められると書かれています。まずは電子取引データを消さずに保存することが重要だと、国税庁は案内しています。

次に確認すること

介護保険サービスの消費税の扱いとインボイスは、「訪問介護の消費税とインボイス:介護保険サービスは非課税、課税の対象になる場面」で整理しています。毎年の労務と税務の手続きの時期は、「訪問介護事業所が毎年行う労務・税務手続きの月別期限」を確認してください。

この記事は令和6年11月の国税庁のパンフレットと電子帳簿保存法第7条に基づくもので、最新の要件は国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトで確認してください。特定の会計ソフトの設定や、個別の取引が制度の対象になるかどうかは、税務署や税理士に確認して決めてください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. メール、クラウド、介護ソフトなどで受け取る・交付する請求書、領収書、契約書、見積書のデータの種類と経路を洗い出す
  2. データを消さずに保存する場所を決め、ファイル名を日付・金額・取引先の順に付けるなど、検索できる方法を決める
  3. 改ざん防止の方法(事務処理規程を定めて守るなど)を決め、規程を備え付ける
  4. 税務調査でデータの提出を求められたときに出せることを、保存先を開いて確かめ、確認者と確認日を残す

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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