開業準備 / 更新 2026-10-10
訪問介護の消費税とインボイス:介護保険サービスは非課税、課税になる交通費と登録の考え方
訪問介護は、介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービスにあたり、国税庁は消費税の非課税取引として整理しています。報酬のうち保険から支払われる部分だけでなく、利用者の自己負担分も非課税です。この記事は、非課税になる範囲、課税対象になる交通費などの扱い、インボイス発行事業者の登録を受けると何が変わるかを、国税庁の説明の範囲で整理します。個別の税額や登録の可否は、税務署または税理士への確認が必要です。
この記事で決めること
訪問介護の報酬が消費税の非課税取引である範囲と、課税対象になる負担分、インボイス発行事業者の登録を受けた場合の課税事業者としての申告の必要性を、国税庁の説明の範囲で確認できるようにするための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、消費税の確認メモ(課税になる取引の有無・交通費の請求ルール・登録の要否を確認する相手と期限)を作成できる状態を目指します。
結論:報酬は非課税、課税になるのは利用者が選んだ負担分など
国税庁のタックスアンサー(No.6201)は、非課税となる取引の一つに「介護保険サービスの提供等」を挙げ、介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービスや施設サービスなどが当たると説明しています。訪問介護は、消費税法施行令第14条の2第1項が定める居宅サービスの種類に含まれます(国税庁の質疑応答事例)。確認日は2026年10月10日です。
課税になるのは、利用者の選択による特別な居室の提供や送迎などの対価と、利用者の居宅が通常の事業実施区域になっていない事業者を利用した場合の交通費などです。この記事の範囲は介護保険の訪問介護で、保険の対象外の自費サービスの課税関係は確認していません。
非課税の範囲:保険給付の部分・自己負担分・限度額を超えた分
国税庁の質疑応答事例は、非課税になる居宅サービスを、保険者から実際に支給される部分に限らず、指定居宅サービスの種類として特定していると説明しています。このため、次の表のとおり、自己負担分や支給限度額を超えて利用者が全額を負担する分も、要介護者に対して提供される指定居宅サービスであれば非課税です。
利用者の自己負担割合は所得などで異なります。割合の判定は介護保険負担割合証と後期高齢者医療の窓口負担割合の違い(判定基準・有効期間)、限度額の考え方は訪問介護の区分支給限度基準額と利用者負担割合で確認できます。
| 取引 | 消費税の扱い | 国税庁の根拠 |
|---|---|---|
| 保険給付の対象となる訪問介護の報酬(保険者から支払われる部分) | 非課税 | No.6201・質疑応答事例(居宅サービスの範囲) |
| 利用者の自己負担分(居宅介護サービス費の支給対象となる種類のサービス) | 非課税 | 質疑応答事例(要介護者が負担する介護サービス費用) |
| 支給限度額を超えて利用者が全額負担する指定居宅サービス | 非課税(基本通達6-7-2) | 質疑応答事例(居宅サービスの範囲) |
| 通常の事業実施区域になっていない利用者の居宅へ行く場合の交通費など、利用者の選定に係る負担部分 | 課税対象 | 質疑応答事例(要介護者が負担する介護サービス費用) |
| 特別な居室の提供や送迎などの対価 | 非課税取引には当たらない | No.6201 |
インボイス発行事業者の登録で変わること
国税庁は、インボイスを交付するには事前にインボイス発行事業者の登録を受ける必要があり、登録を受けると課税事業者として消費税の申告が必要になると説明しています。納税義務の免除についても、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は免除されません(No.6501)。
インボイスは、買手が仕入税額控除を受けるために保存するものです。納付税額は、売上げ時に受け取った消費税額から、仕入れ等で支払った消費税額を差し引いて計算します。
訪問介護の報酬は非課税のため、介護保険の訪問介護の範囲で課税の対象になりうる売上は、交通費など課税対象の負担分です。国税庁は、登録を受けるかどうかを判断する事業者向けに事前準備のチェックシートも案内しており、登録は事業者が判断する手続きです。登録が必要かどうかは、課税対象の売上がどれだけあるか、取引先から求められるかで変わるため、税務署または税理士に確認してください。
新しく設立した法人は、設立1期目と2期目に基準期間がないため原則として納税義務が免除されますが、その事業年度の開始の日の資本金の額が1,000万円以上である場合などは免除されません。出資額を決める段階では、訪問介護を開業する法人形態6種の比較(設立の手間・目的・決算後の報告)と合わせて確認してください。
事業計画に入れるときの確認の順番
確認は、次の順で進めると漏れが少なくなります。1つ目は、自社の取引のうち課税になるものがあるかを、交通費の請求ルールと訪問介護の利用料等の受領(基準第20条・交通費と保険外サービスの別料金の扱い)で確認することです。通常の事業の実施地域は訪問介護の通常の事業の実施地域の決め方と地域外の利用者への対応で決めます。
2つ目は、課税対象の売上が見込めるかを数字にすることです。3つ目は、設立後の税務署への届出と毎年の手続きの期限を、訪問介護の法人設立後に出す労働保険・社会保険・税務署への届出の期限と提出先と訪問介護事業所が毎年行う労務・税務手続きの月別期限(年度更新・算定基礎届など)の表に入れることです。資金面は訪問介護の運転資金と資金繰りの見積りに反映します。
この記事で確認できていないことは3つあります。非課税の売上しかない事業者が開業時に支払う消費税の取扱い、保険外の自費サービスの課税関係、登録の可否や申告の要否の判断です。いずれも税務署または税理士へ確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 自社の請求項目を、報酬(非課税)と交通費などの利用者が選んだ負担分に分けて書き出す
- 通常の事業の実施地域と、地域外の利用者から交通費を受け取るかどうかを運営規程と重要事項説明書に照らして決める
- 課税対象になる売上の見込みと、資本金の額、インボイス発行事業者の登録を検討する理由を一枚にまとめる
- 税務署または税理士に、登録の要否と申告の要否、開業時の消費税の取扱いを確認し、結果と日付をメモに残す
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 国税庁「タックスアンサー No.6201 非課税となる取引」(確認日 2026-10-10)
- 国税庁「質疑応答事例 非課税となる「居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス」の具体的な範囲」(確認日 2026-10-10)
- 国税庁「質疑応答事例 要介護者が負担する介護サービス費用の取扱い」(確認日 2026-10-10)
- 国税庁「タックスアンサー No.6501 納税義務の免除」(確認日 2026-10-10)
- 国税庁「インボイス制度について(売手・買手の留意点)」(確認日 2026-10-10)