運営 / 更新 2026-10-23
訪問介護事業所の交際費:損金にならない範囲と、1人1万円以下の飲食・年800万円の枠
訪問介護の法人が、紹介元のケアマネジャーや関係者との飲食や贈答に使った費用は、法人税では交際費等として扱われ、原則として全額が損金になりません。ただし、資本金の額が1億円以下の法人には、飲食費の50%を基にする計算か、年800万円の定額の枠を基にする計算が用意されています。この記事は、国税庁のタックスアンサー(No.5265)で、交際費等の範囲、除かれる費用、1人1万円以下の飲食で残す書類を整理します(居宅介護支援事業者への金品の提供が運営基準で禁じられる範囲は、別に確認が必要です)。
交際費等とは何か、損金にならないのはどこまでか
国税庁の案内(令和8年4月1日現在法令等)は、交際費等を、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものと説明しています。訪問介護では、紹介元のケアマネジャーや医療機関の関係者との飲食や手土産が、この「事業に関係のある者」への接待や贈答に当たるかどうかが論点になります。
交際費等の額は、原則として全額が損金不算入です。損金不算入とは、会計上は費用に計上しても、法人税の所得の計算では費用として差し引けないことをいいます。ただし、資本金の額または出資金の額が1億円以下である等の法人には、次の2つのうち、いずれかの金額を損金不算入額とする措置があります。
1つ目は、交際費等のうち、飲食等のために要する費用の50%に相当する金額を超える部分の金額です。2つ目は、交際費等の額のうち、800万円にその事業年度の月数を掛けて12で割った金額(定額控除限度額)を超える部分の金額です。案内は、この2つの金額を並べて「次のいずれかの金額」と書いています。
| 計算 | 損金不算入になる部分 |
|---|---|
| 飲食費の50%を基にする計算 | 交際費等のうち、飲食等のために要する費用の50%に相当する金額を超える部分 |
| 年800万円の定額の枠を基にする計算 | 交際費等の額のうち、800万円に事業年度の月数を掛けて12で割った金額を超える部分 |
この記事で決めること
訪問介護を法人で運営する経営者・管理者が、紹介元のケアマネジャーや関係者との飲食・贈答の費用を、法人税の交際費等として扱うときの範囲、損金不算入額の計算、1人1万円以下の飲食で保存する書類を、国税庁の案内で確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、接待交際費の記録表(日付・相手の氏名または名称と関係・参加人数・費用・店名と所在地・1人あたりの金額)を作成できる状態を目指します。
交際費等から除かれる費用と、1人1万円以下の飲食
次の費用は、交際費等の範囲から除かれます。1つ目は、専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用です。
2つ目は、飲食等のための費用のうち、支出する金額を参加した人数で割った金額が10,000円以下であるものです。ただし、専らその法人の役員もしくは従業員またはこれらの親族に対する接待等のためのものは除かれます。
3つ目として、カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいなどを贈与するために通常要する費用と、会議に関連して茶菓や弁当などの飲食物を供与するために通常要する費用も、交際費等から除かれます。
1人あたり10,000円以下の飲食の規定は、令和6年3月31日以前に支出した飲食等では5,000円以下でした。この規定が使えるのは、次の事項を記載した書類を保存している場合に限られます。飲食等のあった年月日、参加した得意先などの氏名または名称とその関係、参加した人数、費用の額と飲食店等の名称・所在地、その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項です。
1万円以下かどうかの判定は、法人が適用している消費税等の経理処理(税抜経理方式または税込経理方式)で算定した価額で行います。
| 費用 | 条件 | 訪問介護での当てはめの例 |
|---|---|---|
| 専ら従業員の慰安のための運動会・演芸会・旅行等 | 通常要する費用 | 職員の慰安旅行や運動会(専ら従業員のためのもの) |
| 1人あたり10,000円以下の飲食等 | 参加者数で割った金額が1万円以下。専ら役員・従業員やその親族のための接待は除く。書類の保存が必要 | 紹介元のケアマネジャーとの会食で、1人あたりが1万円以下のもの |
| カレンダー・手帳・扇子・うちわ・手ぬぐい等の贈与 | 通常要する費用 | 事業所名入りのカレンダーや手帳 |
| 会議に関連した茶菓・弁当等 | 通常要する費用 | サービス担当者会議で出す茶菓 |
運営基準第35条は、税務の扱いとは別に確認する
交際費等が損金にならないかどうかと、居宅介護支援事業者やその従業者に金品などを渡してよいかどうかは、別の問題です。訪問介護の運営基準第35条は、利用者に特定の事業者のサービスを利用させることの対償として、居宅介護支援事業者やその従業者に金品その他の財産上の利益を供与することを禁じています。
税務上は1人1万円以下の飲食として交際費等の範囲から除かれる場合でも、その飲食が運営基準の禁止に当たらないことを示すものではありません。どの行為が第35条の対象になるかは、訪問介護の利益供与の禁止(基準第35条):居宅介護支援事業者への金品で読めます。個別の行為が気になるときは、事業所の指定権者に確認してください。
この記事で決めないこと
個別の支出が交際費等に当たるか、どちらの損金不算入額の計算を使うか、申告書にどう書くかは、この記事では判断しません。
国税庁の案内は法人税の取扱いで、個人事業として運営している場合の所得税の取扱いは対象外です。資本金の額が1億円を超える法人や、資本金5億円以上の法人の100%子法人などは、案内の中で計算が別になっています。顧問の税理士か税務署に、支出の記録表を見せて確認するのが確実です。
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実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- ケアマネジャーや紹介元との飲食・贈答の費用を、支出のたびに日付、相手の氏名または名称と関係、参加人数、費用、店名と所在地で記録表に残す
- 飲食の費用は、費用を参加者数で割った1人あたりの金額を出し、1万円以下かどうかを、会社の消費税の経理方式(税抜・税込)に合わせて確認する
- 決算で、交際費等の合計を出し、期末の資本金の額に応じて、飲食費の50%の枠と年800万円の枠のどちらで損金不算入額を計算するかを税理士と決める
- ケアマネジャーなど居宅介護支援事業者への金品や接待は、税務上の扱いとは別に運営基準第35条の確認が必要なので、提供前に管理者が目的と内容を記録し、迷うものは指定権者に確認する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 国税庁「タックスアンサー No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算(令和8年4月1日現在法令等)」(概要、交際費等の範囲から除かれるもの、計算方法・計算式)(確認日 2026-10-23)