運営 / 更新 2026-10-22
訪問介護員ができるインスリン注射・血糖測定の介助:医政発1201第4号の範囲と異常値の報告
糖尿病でインスリン注射をしている利用者の訪問で、訪問介護員が原則として行えるのは、医師から指示されたタイミングでの声かけ、見守り、未使用の注射器の手渡し、使い終わった注射器の片付けと記録、血糖値が指示の範囲かの確認までです。測定された数値から投薬の要否を判断することは医行為で、範囲外の数値が出たら医師・歯科医師・看護職員に報告します。
令和4年12月1日の通知が整理した範囲
厚生労働省医政局長は令和4年12月1日に、各都道府県知事あての通知「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その2)」(医政発1201第4号)を出しました。医療機関以外の介護現場で実施されることが多い行為のうち、原則として医行為ではないと考えられるものを別紙に列挙し、介護職員が行うときの患者・家族・医療従事者との合意形成や協力に関する事項を示しています。この通知は厚生労働省の社会・援護局と老健局と調整済みと明記されています。
インスリンに関する行為は、別紙の1から3と、血糖測定に関する4にあります。服薬準備や湿布の貼付などは別の通知(令和7年12月26日 その3)の範囲で、介護職員ができる服薬準備・湿布貼付・蓄尿バッグ接続の条件で整理しています。
この記事で決めること
糖尿病でインスリン注射をしている利用者の訪問介護で、声かけ・見守り・注射器の手渡し・片付け、血糖値が医師の指示の範囲かの確認、持続血糖測定器の読み取りを訪問介護員がどこまで行えるかを、令和4年12月1日の厚生労働省医政局長通知で確認し、異常値が出たときの報告先と事業所が決めておくことを整理するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、インスリン・血糖測定の介助の確認メモ(利用者の氏名、主治医から指示された実施のタイミングと血糖値の範囲とインスリンの単位数、持続血糖測定器の有無、訪問介護員が行う範囲と行わない範囲、範囲外の数値が出たときの報告先と連絡方法、確認した日と相手)を作成できる状態を目指します。
インスリン注射の準備・片付けで行える3つの行為
別紙の1は、あらかじめ医師から指示されたタイミングでの実施の声かけ、見守り、未使用の注射器等の患者への手渡し、使い終わった注射器の片付け(注射器の針を抜き、処分する行為を除く)と記録です。針を抜いて処分する行為が除かれている点に注意してください。
別紙の2は、患者が血糖測定と血糖値の確認を行ったあとに、介護職員が、その血糖値があらかじめ医師から指示されたインスリン注射を実施する血糖値の範囲と合っているかを確認することです。別紙の3は、患者が準備したインスリン注射器の目盛りが、医師から指示されたインスリンの単位数と合っているかを読み取ることです。どちらも、血糖測定や注射器の準備は患者本人が行い、介護職員は指示との照合を担う形です。
注射を打つ行為そのものは、この通知が挙げる行為に入っていません。通知に挙がっていない行為は、医行為に当たるかを個別に判断する必要があるため、主治医や看護職員に確認します。
血糖測定:持続血糖測定器の貼付と読み取り
別紙の4は、患者への持続血糖測定器のセンサーの貼付や、その測定器の測定値の読み取りといった、血糖値の確認を行うことです。センサーの貼付も読み取りも、血糖値を確認する行為として整理されています。
確認した数値は、そのまま医師への報告や記録に使います。数値を見て自分で何かを決める場面ではない、という線引きが次の節の内容です。
数値を見て判断しない:範囲外の異常値は報告する
通知の注2は、別紙の2、4、16、17に挙げる行為で測定された数値をもとに、投薬の要否など医学的な判断を行うことは医行為であるとしています。そのうえで、事前に示された数値の範囲外の異常値が測定された場合には、医師、歯科医師または看護職員に報告するべきものと書いています。
たとえば、医師から示された範囲より血糖値が低い・高いと分かったとき、訪問介護員が注射の要否など投薬に関わる判断を自分で行うことはできません。事業所としては、範囲外の数値が出たときの報告先と連絡の順番をあらかじめ決めておくとよいでしょう。
条件:血糖値や食事摂取量が不安定でないこと
注2は、別紙の1から4までの行為について、患者の血糖値や食事摂取量等が不安定でないことが必要としています。また、1から19までと注1の行為は原則として医行為ではないと考えられるものの、病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得るとしています。
このため通知は、介護サービス事業者等がサービス担当者会議の開催時等に、必要に応じて医師、歯科医師または看護職員に、専門的な管理が必要な状態かどうかを確認することが考えられるとしています。病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、医師、歯科医師または看護職員に連絡する等の措置を速やかに講じる必要があります。
事業所で決めておくこと
注3は、患者本人や家族に分かりやすく適切な説明を行うこと、必要に応じて書面等で指示を受けること、ケアの実施後に医師、歯科医師または看護職員へ報告することなどを望ましいとしています。注4は、業として行う場合に実施者へ一定の研修や訓練が行われることが望ましいこと、事業者が事業遂行上、安全に行為が行われるよう監督することを求めています。
実務では、利用者ごとに、主治医から指示されたタイミング・血糖値の範囲・単位数を支援記録に残し、訪問介護員が行う範囲と行わない範囲を訪問介護計画に反映します。数値が範囲外だったときの連絡先と、連絡した相手と時刻の記録様式も決めておきます。体温・血圧などの測定と報告の考え方は訪問介護員の体温・血圧・パルスオキシメータ測定と記録、平成17年通知が示す医行為ではない行為の一覧は医行為ではない行為(医政発第0726005号)と介助の条件で確認できます。
このページは厚生労働省の通知の要約で、個別の利用者への医療的な指示ではありません。注5のとおり、事故が起きた場合の刑事上・民事上の責任は別途判断されます。個別の利用者の対応は、主治医・看護職員に確認してください。
在宅酸素・人工呼吸器の利用者の場合
同じ通知には、酸素マスクの扱いや人工呼吸器の利用者の体位変換に関する行為もあります。範囲と条件は在宅酸素・人工呼吸器の利用者に訪問介護員ができること(医政発1201第4号)にまとめています。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 糖尿病でインスリン注射をしている利用者について、主治医から指示されたタイミング、注射を実施する血糖値の範囲、インスリンの単位数を、書面やケアマネジャー経由で確認して支援記録に残す
- サービス担当者会議などで、血糖値や食事摂取量が不安定でないか、病状が不安定で専門的な管理が必要な状態でないかを医師・看護職員に確認し、訪問介護員が行う範囲と行わない範囲を訪問介護計画に反映する
- 訪問介護員には、声かけ・見守り・未使用の注射器の手渡し・使い終わった注射器の片付け(針を抜いて処分する行為を除く)・記録と、血糖値や注射器の目盛りが指示と合っているかの確認までを伝え、数値から投薬の要否を判断しないことを徹底する
- 指示された範囲外の数値が出たとき、病状が急変したときの連絡先(医師・歯科医師・看護職員)と連絡の順番を決め、連絡した相手と時刻を記録する様式を用意する
関連ガイドで計画をつなぐ
隣接する判断をつなぎ、記事単体で計画を止めないためのガイドです。
よくある質問
迷いやすい範囲と確認順を、質問ごとに整理します。
ヘルパーはインスリン注射そのものを打ってよいですか?
令和4年12月1日の通知(医政発1201第4号)が医行為ではないと整理しているのは、あらかじめ医師から指示されたタイミングでの声かけ、見守り、未使用の注射器の患者への手渡し、使い終わった注射器の片付け(針を抜いて処分する行為を除く)、記録などです。注射を打つ行為はこの通知に挙がっていません。通知に挙がっていない行為は、医行為に当たるかを個別に判断する必要があるため、主治医・看護職員に確認します。
血糖値が指示された範囲を外れていたら、ヘルパーはどうしますか?
通知の注2は、測定された数値をもとに投薬の要否などの医学的な判断を行うことは医行為であり、事前に示された数値の範囲外の異常値が測定された場合は、医師、歯科医師または看護職員に報告するべきとしています。ヘルパーは注射の実施を自分で決めず、あらかじめ決めた連絡先に報告します。
血糖値が安定しない利用者でも、同じ介助をしてよいですか?
通知の注2は、インスリン注射の準備・片付けや血糖値の確認(別紙1〜4)について、患者の血糖値や食事摂取量等が不安定でないことが必要としています。病状が不安定で専門的な管理が必要な場合は医行為とされることもあるため、サービス担当者会議の開催時などに、医師・歯科医師・看護職員へ確認することが考えられると通知は述べています。
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(第8条・第27条・第29条・第37条・第39条)」(確認日 2026-10-04)
- 厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その2)(令和4年12月1日 医政発1201第4号)」(別紙の1〜3(インスリンの投与の準備・片付け関係)、4(血糖測定関係)、5・6(経管栄養関係)、7(喀痰吸引関係)、8〜10(在宅酸素療法・人工呼吸器関係)、注1〜注6)(確認日 2026-10-22)