運営 / 更新 2026-10-16
訪問介護の1か月単位の変形労働時間制:定める事項・月の労働時間の上限・シフト変更の制約
1か月単位の変形労働時間制は、1か月以内の期間を平均して週40時間以内になるように勤務日と労働時間を決めておけば、特定の日に8時間、特定の週に40時間を超えて働かせても、その分が直ちに時間外労働にならない制度です。この記事では、労働基準法第32条の2と厚生労働省のリーフレットで、導入の方法、定める事項、月の労働時間の上限、割増賃金が必要な時間、勤務の変更の制約を確認します。
この記事で決めること
訪問介護事業所の事業者が、月によって忙しさが違う職員の勤務に1か月単位の変形労働時間制を使えるかを考えるとき、労働基準法第32条の2が求める導入の方法、定める事項、月の労働時間の上限の計算、時間外労働として割増賃金が要る時間、勤務日や労働時間を後から変えられない点を、条文と厚生労働省のリーフレットで確認する。ための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、1か月単位の変形労働時間制の導入チェック表(対象者、対象期間と起算日、月の労働時間の上限、勤務表の作成日、協定または就業規則の保管場所)を作成できる状態を目指します。
結論:期間を平均して週40時間以内にし、勤務日と労働時間を前もって具体的に決める
労働基準法第32条の2第1項は、労使協定、または就業規則その他これに準ずるものにより、1か月以内の一定の期間を平均して1週間当たりの労働時間が週40時間を超えない定めをしたときは、特定された週や日に法定労働時間を超えて労働させることができると定めています。条文は業種を限っていません。
厚生労働省のリーフレットは、対象期間のすべての労働日と労働日ごとの労働時間を、シフト表や会社カレンダーなどであらかじめ具体的に定める必要があり、特定した労働日や労働時間を任意に変更することはできないと説明しています。
この記事は、条文とリーフレットで確認できた範囲を書いています。事業所や職員にこの制度を使えるかの判断はしません。
導入の方法と、定める4つの事項
リーフレットによると、導入は労使協定または就業規則で行い、協定を結んだとき、または就業規則を作成・変更したときは、所轄の労働基準監督署に届け出ます。協定の届出は施行規則第12条の2の2第2項が様式第3号の2によると定めています。
協定には有効期間の定めが必要です(施行規則第12条の2の2第1項)。リーフレットは、有効期間を対象期間より長くし、適切に運用するには3年以内程度が望ましいとしています。
| 事項 | 定める内容 |
|---|---|
| 対象労働者の範囲 | 法令上の制限はないが、範囲を明確に定める |
| 対象期間と起算日 | 対象期間は1か月以内。例: 毎月1日を起算日とし、1か月を平均して週40時間以内とする |
| 労働日と労働日ごとの労働時間 | 対象期間のすべての労働日の労働時間をシフト表などで前もって具体的に定め、対象期間を平均して週40時間を超えないようにする |
| 労使協定の有効期間 | 対象期間より長い期間。3年以内程度が望ましい |
月の労働時間の上限は、暦日数で決まる
リーフレットによると、対象期間の労働時間の上限は、週40時間に対象期間の暦日数を掛けて7で割った時間です。対象期間が1か月の場合の上限は、次の表のとおりです。
月の所定労働時間がこの上限を超える職員がいる場合は、勤務表の組み方を見直す必要があります。
| 月の暦日数 | 上限(時間) |
|---|---|
| 28日 | 160.0 |
| 29日 | 165.7 |
| 30日 | 171.4 |
| 31日 | 177.1 |
割増賃金が必要な時間外労働になる時間
リーフレットは、この制度でも割増賃金の対象になる時間外労働を3つに分けています。1つ目は1日で、8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間です。
2つ目は1週間で、40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間です(1つ目の時間を除く)。3つ目は、対象期間の法定労働時間の総枠を超えて労働した時間です(1つ目と2つ目の時間を除く)。
割増賃金の率と計算の基礎に入れない手当は訪問介護事業所の割増賃金:時間外・休日・深夜の割増率と、計算の基礎に入れない手当で、時間外労働の月の上限は訪問介護の時間外労働の上限規制:月45時間・年360時間と特別条項の4つの上限で確認できます。
訪問介護で気をつける点:利用者の都合で変わる訪問と、勤務表の変更
リーフレットは、特定した労働日または労働日ごとの労働時間を任意に変更できないと明記しています。訪問介護では、利用者の都合で訪問の日時が変わることがあるため、勤務表をどの時点で確定させるかを、導入前に決めておく必要があります。
確定した勤務表を変えたときに、変更後の時間をどう扱うか、割増賃金が要るかは、この記事では確認していません。労働基準監督署または社会保険労務士に確かめてください。
登録ヘルパーの雇用契約や勤務表の考え方は訪問介護の登録ヘルパーの雇用契約・勤務表・移動時間で、労働時間の記録方法は訪問介護員の労働時間の記録方法:始業・終業時刻の確認と、自己申告制で必要な措置で確認できます。
対象にできない職員と配慮が必要な職員
リーフレットは、満18歳未満の年少者(満15歳以上18歳未満の一部は1週間48時間・1日8時間を超えない範囲で採用可)と、請求した妊産婦には、この制度を採用できないと説明しています。
育児を行う者、老人などの介護を行う者、職業訓練や教育を受ける者などには、必要な時間を確保できるよう配慮しなければならないとも説明しています。
この記事で確認していないこと
この記事は、労働基準法第32条の2、施行規則第12条の2・第12条の2の2、厚生労働省のリーフレットで確認できた範囲だけを書いています。リーフレットは平成26年の作成で、その後の改正は確認していません。
リーフレットにある週44時間の特例措置の対象事業場に訪問介護が当たるか、1年単位の変形労働時間制やフレックスタイム制、就業規則の作成と届出の手順は、この記事の対象外です。就業規則は訪問介護事業所の就業規則と36協定:作成・届出が必要な人数、意見聴取、周知の方法で確認できます。
協定や就業規則の文面、個々の職員への適用の判断は、労働基準監督署または社会保険労務士に確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 対象にする職員の範囲を決め、対象期間(1か月以内)と起算日を具体的に定める
- 対象期間の暦日数から、月の労働時間の上限(週40時間×暦日数÷7)を計算し、職員ごとの月の所定労働時間がこれを超えないようにする
- 対象期間の労働日と労働日ごとの労働時間を、勤務表であらかじめ具体的に定め、労使協定または就業規則に定める(協定の有効期間は対象期間より長くする)
- 労使協定を結んだとき、または就業規則を作成・変更したときは、所轄の労働基準監督署に届け出る。勤務表を変えた場合の時間外労働の扱いを、賃金計算の担当者と確認しておく
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「労働基準法第32条の2・労働基準法施行規則第12条の2・第12条の2の2(1か月単位の変形労働時間制)」(確認日 2026-10-16)
- 厚生労働省「1か月単位の変形労働時間制(厚生労働省のリーフレットシリーズ労基法32条の2)」(確認日 2026-10-16)