運営 / 更新 2026-10-16

訪問介護の時間外労働の上限規制:月45時間・年360時間と特別条項の4つの上限

36協定を結んで届け出れば法定労働時間を超えて働かせられますが、時間外労働には労働基準法第36条が定める上限があり、守らないと罰則の対象になるおそれがあります。この記事では、原則の限度時間(月45時間・年360時間)と、特別条項を付けても守る4つの上限、休日労働を含める数え方、協定に定める事項を、条文と厚生労働省の解説で確認します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護事業所の事業者や労務担当者が、36協定を結んでも超えられない時間外労働の上限を、原則の限度時間(月45時間・年360時間)と特別条項の4つの上限、休日労働を含める数え方、36協定に定める事項、違反時の罰則に分けて、労働基準法第36条と厚生労働省の解説で確認する。ための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、時間外労働の月次点検表(職員ごとの時間外労働、休日労働、その合計、月45時間を超えた月数の累計)を作成できる状態を目指します。

結論:原則は月45時間・年360時間。特別条項でも4つの上限は超えられない

労働基準法第36条第3項は、36協定で定める時間外労働の限度時間を、1か月について45時間、1年について360時間としています。厚生労働省の解説は、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできないと説明しています。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満、2〜6か月の平均が1か月当たり80時間以内とし、月45時間を超えられるのは年6か月までとされています。

この記事は、条文と厚生労働省の資料で確認できた範囲を書いています。個々の職員の時間外労働が上限を超えるか、協定の文面が適切かの判断はしません。

時間外労働の上限(労働基準法第36条第3項・第5項・第6項、厚生労働省の解説。2026年10月16日確認)
区分上限休日労働の扱い
原則の限度時間(1か月)45時間含めない(時間外労働のみ)
原則の限度時間(1年)360時間含めない(時間外労働のみ)
特別条項:1年の時間外労働720時間以内含めない(時間外労働のみ)
特別条項:1か月時間外労働と休日労働の合計が100時間未満含める
特別条項:複数月の平均時間外労働と休日労働の合計の2〜6か月平均が、すべて1か月当たり80時間以内含める
特別条項:月45時間を超える月数1年について6か月以内月45時間の判定は時間外労働のみ

休日労働を含めるものと含めないものを分けて数える

厚生労働省の解説は、原則の上限(月45時間・年360時間)は「休日労働は含まず」の時間外労働の上限と説明し、月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内は、時間外労働と休日労働の合計の上限と説明しています。

第36条第6項の月100時間未満と平均80時間以内は、特別条項があるかどうかに関わらず、協定どおりに働かせる場合の使用者の要件です。解説は、時間外労働が44時間で特別条項にならない場合でも、休日労働が56時間あって合計が100時間以上になれば法律違反になる、という例を示しています。

訪問介護では、土日にもサービスを提供するため、法定休日に働く職員が出る月があります。法定休日以外の休日の労働の数え方は、この記事では確認していません。

時間外労働だけを見て月45時間以内だと安心せず、休日労働との合計も毎月確かめます。法定休日の考え方は訪問介護事業所の法定休日:勤務表と実績の確認手順で確認できます。

法違反の有無は、所定外労働時間ではなく、法定外労働時間の超過で判断されると解説に書かれています。事業所の所定労働時間が法定より短い場合、所定外でも法定内であれば、ここでいう時間外労働には当たりません。

特別条項を使うために36協定に定めること

第36条第5項は、限度時間を超えて働かせる必要がある場合として、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に必要な場合を定められるとしています。あわせて、月45時間を超えることができる月数を、1年について6か月以内で定めなければなりません。

施行規則第17条第1項は、特別条項を定める協定に、限度時間を超えて労働させることができる場合、限度時間を超えて労働させる労働者の健康及び福祉を確保するための措置、限度時間を超えた労働の割増賃金の率、限度時間を超えて労働させる場合の手続を定めることを求めています。協定の有効期間と1年の起算日も定める事項です。

第17条第2項は、健康及び福祉を確保するための措置の実施状況の記録を、協定の有効期間中と、有効期間の満了後5年間、保存することを求めています。

36協定の指針について厚生労働省のリーフレットは、限度時間を超えて労働させることができる場合を、できる限り具体的に定めること、「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものは認められないことを示しています。限度時間を超える時間外労働の割増賃金率は、25%を超える率とするよう努めることとされています。

限度時間を超える職員の健康・福祉を確保する措置の例

厚生労働省のリーフレットは、限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保する措置として、次の9つの中から協定することが望ましいと示しています。

健康・福祉を確保する措置の例(36協定の指針第8条。厚生労働省のリーフレット)
番号措置
1医師による面接指導
2深夜業(22時〜5時)の回数制限
3終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
4代償休日・特別な休暇の付与
5健康診断
6連続休暇の取得
7心とからだの相談窓口の設置
8配置転換
9産業医等による助言・指導や保健指導

訪問介護の事業所で毎月確かめること

上限は、月ごとの時間外労働と休日労働の集計がなければ確かめられません。始業・終業時刻をどう記録するかは訪問介護員の労働時間の記録方法:始業・終業時刻の確認と、自己申告制で必要な措置、移動時間を含めた労働時間の考え方は訪問介護の登録ヘルパーの雇用契約・勤務表・移動時間、夜間・休日の呼出待機の扱いは訪問介護の夜間・休日オンコール(呼出待機)は労働時間か:手待時間と賃金で確認できます。

毎月の点検は、職員ごとに、時間外労働、休日労働、その合計、月45時間を超えた月数の累計を並べて行います。月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内は、直近の月を含む複数月の合計で見るため、前月までの数字を並べて確かめます。

ほかの事業所でも働く職員がいる場合の労働時間の通算は訪問介護員の副業・兼業(掛け持ち)の労働時間の通算:事業所が確認する手順と割増賃金で、勤務間インターバルの努力義務は訪問介護の勤務間インターバル制度:努力義務の内容と、導入コース助成金の条件(令和8年度)で確認できます。

36協定届の様式と違反したときの罰則

厚生労働省の解説によると、時間外労働や休日労働を行わせる必要がある場合は、36協定届(様式第9号)を所轄の労働基準監督署長に届け出ます。限度時間を超えて時間外労働を行わせる場合は、様式第9号の2です。届出が必要な事業場の要件は訪問介護事業所の就業規則と36協定:作成・届出が必要な人数、意見聴取、周知の方法で確認できます。

第119条第1号は、第36条第6項の規定に違反した者を、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処すると定めています。厚生労働省の解説も、上限に違反した場合は罰則が科されるおそれがあると説明しています。

時間外労働の割増賃金の率と計算は訪問介護事業所の割増賃金:時間外・休日・深夜の割増率と、計算の基礎に入れない手当で確認できます。

この記事で確認していないこと

この記事は、労働基準法第36条・第119条、施行規則第17条、厚生労働省のパンフレットとリーフレットで確認できた範囲だけを書いています。パンフレットは2019年の施行時点の解説で、適用の猶予があった事業・業務や、その後の改正は確認していません。

1年単位の変形労働時間制で対象期間が3か月を超える場合の限度時間(月42時間・年320時間)と、新技術・新商品の研究開発業務の除外は、この記事の対象外です。限度時間を超える時間外労働の割増賃金率(25%を超える率に努める)は、法定の割増率とは別の話です。

個々の職員の時間外労働が上限を超えるか、協定の文面や特別条項の事由が適切か、休日労働の扱いの個別判断は、この記事では行いません。労働基準監督署または社会保険労務士に確認してください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 職員ごとに、法定労働時間を超えた時間外労働と、法定休日の労働を別の列で毎月集計する
  2. 時間外労働が月45時間・年360時間の範囲に収まっているかを毎月確かめ、収まらない月が出たら36協定に特別条項があるかを見る
  3. 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満か、直近2〜6か月の平均が80時間以内かを、特別条項の有無に関わらず確かめる
  4. 特別条項を使った月は、月45時間を超えた月数(年6か月まで)と年の時間外労働(720時間以内)を累計し、協定に定めた手続と健康・福祉確保措置を実施した記録を残す

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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