運営 / 更新 2026-10-16
市町村の介護給付適正化(ケアプラン点検・縦覧点検)と訪問介護事業所
市町村から「利用者の訪問記録を見せてください」「この月の請求内容を確認させてください」と連絡が来ることがあります。背景には、市町村が国の指針に沿って進める介護給付適正化事業があります。この記事は、令和5年9月12日付の厚生労働省の通知(老介発0912第1号)の別紙を2026-10-16に確認し、事業所に及ぶ場面と備えを、書かれている範囲だけで整理します。
この記事で決めること
市町村から資料の提出や請求内容の確認を求められた訪問介護事業所の管理者が、その背景にある国の介護給付適正化計画の指針(令和5年9月12日 老介発0912第1号)の主要3事業・給付実績の活用・介護給付費通知を知り、事業所に及ぶ場面と備えを整理するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、市町村からの資料提出・請求内容の照会への対応メモ(依頼元、依頼文に書かれた根拠と期限、対象の利用者と月、突き合わせた記録、回答日、過誤調整の有無)を作成できる状態を目指します。
結論:指針は市町村向けで、事業所に及ぶのは「資料提出」「請求の照会」「過誤調整」「通知への説明」の場面
この指針は、厚生労働省老健局介護保険計画課長から各都道府県の介護保険担当部(局)長に宛てた通知の別紙です。適正化事業を行うのは保険者である市町村で、事業所に義務を課す書き方ではありません。
ただし、指針の本文には、ケアプランの点検で事業者に資料提出を求めること、請求の誤りがあれば事業者へ照会して過誤処理につなげること(国保連へ委託することも可能)、不適切な給付や請求誤りの多い事業者を抽出して指導することが書かれています。訪問介護事業所に連絡が来る理由は、この仕組みで説明できます。
計画期間は令和6年度から令和8年度(指針でいう第6期)です。目標値や点検の頻度は市町村ごとの計画で決まるため、この記事では書きません。
給付適正化主要3事業と、訪問介護事業所への及び方
指針は、第5期まで保険者が取り組む事業としてきた主要5事業を再編しました。介護給付費通知は任意事業に位置づけ、住宅改修等の点検と福祉用具購入・貸与調査はケアプランの点検に統合し、要介護認定の適正化、ケアプラン等の点検、医療情報との突合・縦覧点検の3事業を「給付適正化主要3事業」としています。
次の表は、3事業と任意の取組が、訪問介護事業所にどう関わるかを整理したものです。右の列のうち「指針の記述」は原文に沿った内容で、「この記事の整理」は事業所の実務に引き直した読みです。
| 事業 | 指針の記述 | 訪問介護事業所の関わり(この記事の整理) |
|---|---|---|
| 要介護認定の適正化 | 居宅介護支援事業所等に委託している区分変更申請・更新申請の認定調査の結果を、保険者が点検する | 指針に事業所への依頼の定めはなく、点検の対象は認定調査の結果。事業所が直接対応する場面は書かれていない |
| ケアプラン等の点検 | 介護支援専門員が作成した居宅サービス計画の記載内容について、事業者に資料提出を求め又は訪問調査を行い、第三者が点検・支援する | 点検の対象は居宅サービス計画で、訪問介護計画ではない。計画の根拠となる訪問の記録を、ケアマネジャーと共有する場面は考えられる |
| 医療情報との突合・縦覧点検 | 複数月にまたがる請求明細書の内容や、医療の入院情報との整合を点検し、請求内容の誤り等を早期に発見して処置する。保険者から国保連へ、事業者への照会・確認から過誤申立書の作成・過誤処理まで委託できる | 請求の誤りが見つかると、事業所に照会や過誤処理の連絡が来る。入院中の請求との重複は入院・死亡時の算定の記事で確認する |
| 給付実績の活用による確認等(積極的な実施が望まれる取組) | 不適切な給付や請求誤り等の多い事業者等を抽出して確認し、過誤調整や事業者等への指導を行う | 請求の傾向が偏っていると、確認の対象に挙がる可能性がある |
| 介護給付費通知(任意事業) | 保険者から受給者本人(家族を含む)へ、請求と給付状況を通知する。事業者や事業者団体への周知など、協力と理解を求める工夫を行う | 利用者から通知の内容を問われることがある。提供した日と請求の日が合っているかを説明できるようにする |
ケアプランの点検で使われる帳票と、請求の確認
指針は、小規模な保険者でも効果的に点検できるように、国保連の適正化システムが出力する帳票のうち、効果が高いと見込まれるものを使って点検対象を絞り込むとしています。ケアプランの点検で挙げられているのは、認定調査状況と利用サービス不一致一覧表と、支給限度額一定割合超一覧表(推奨数値70%)の2つです。何の70%かは、指針には書かれていません。
不一致一覧表で不合理であることが疑われる請求を特定できた場合は、その請求に係る事業者への点検・調査等を行い、計画を作ったケアマネジャーの支援につなげるとされています。あわせて、不適正な請求であれば是正を図ると書かれています。
サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどの入居者に焦点を当てた点検では、支給限度額一定割合超支援事業所における対象サービス利用者一覧表を活用することが望ましいとされています。どのサービスが対象になりやすいかは、指針には書かれていません。
給付実績の活用と介護給付費通知:事業所が知っておくこと
給付実績の活用による確認等では、国保連の適正化システムで被保険者や事業者ごとの給付実績を見て、各種指標の偏りから不適切な可能性のある事業者を抽出します。確認が必要な事項は赤色、注意すべき事項は黄色の強調表示で出る仕組みがあり、抽出された事業者への確認を集中的に行って、過誤調整や指導を実施すると書かれています。
介護給付費通知は、保険者が受給者本人(家族を含む)に、事業者からの請求と給付の状況を知らせるものです。指針は、受け取った人が内容を理解できるよう、説明文書やQ&Aの同封、居宅介護支援事業所のケアマネジャーによる説明などの工夫を例に挙げています。送付の範囲や時期は保険者が工夫して決めるものとされ、指針は絞り込みや、認定の更新・変更の時期に合わせた送付を例に挙げています。
請求を訂正する手順そのものは、国保連の審査結果の読み方:返戻・保留・査定の違いと縦覧点検・医療情報との突合と訪問介護で利用者が入院・死亡・サービス中止になったときの算定と請求の整理で確認できます。
指導監督との連携:事業所の情報が共有される範囲
指針の「事業の推進方策」には、指導監督との連携が書かれています。指導監督の対象になった事業者と、適正化事業で抽出された事業者の情報は、保険者内で相互に共有するとされています。
介護給付費通知を受け取った受給者からの苦情も含めて、保険者・都道府県・国保連に寄せられた事業者に関する苦情・告発・通報の情報を把握・分析し、事業者への指導監督を実施するとも書かれています。請求の誤りや利用者からの問い合わせは、指導につながる情報になりうるため、記録と説明を整えておく意味があります。
事業所の備え(この記事の整理。指針の定めではない)
指針に事業所向けの手順は書かれていないため、次の備えは、指針の記述から実務に引き直した例です。市町村から連絡が来たときは、依頼元、依頼文に書かれた根拠、対象の利用者と請求月、回答の期限を最初に記録します。
そのうえで、対象月のサービス提供記録、訪問介護計画、居宅サービス計画の写しを、請求した日数・回数・時間と突き合わせます。食い違いがあれば、請求を直す必要があるか、過誤申立てが要るかを保険者に確認します。
生活援助中心型の回数が基準を超えるプランの届出は、ケアマネジャーが行う別の制度です。訪問介護(生活援助中心型)の回数基準とケアプラン届出で、届出の対象と根拠を確認できます。運営指導で確認される書類は訪問介護の運営指導(実地指導)で確認される記録・書類にまとめています。
確認していないこと
この記事は、令和5年9月12日付の指針を、世田谷区が公開している写しで2026-10-16に確認した範囲だけを書いています。厚生労働省サイト上の掲載ページは取得できませんでした。令和9年度以降の次の計画期間の指針は、公表された時点で確かめてください。
個々の市町村の適正化計画の目標、点検の頻度、依頼文の書式、提出の期限は、市町村ごとに異なります。依頼を受けたときは、依頼文を出した市町村の窓口に確かめます。個別の請求が適正かどうかの判断は、この記事ではしません。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 依頼が来たら、依頼元(市町村、国保連合会、居宅介護支援事業所)、依頼文に書かれた根拠、対象の利用者と請求月、回答の期限を記録する
- 対象月のサービス提供記録、訪問介護計画、居宅サービス計画の写しを請求内容と突き合わせ、日数・回数・時間の食い違いがないか確かめる
- 食い違いが見つかったときは、請求を直す必要があるかを管理者が判断し、過誤申立ての要否を保険者へ確認して、手順は国保連合会の案内に従う
- 回答した内容と日付、保険者からの返答を保存し、介護給付費通知について利用者から問い合わせがあった場合の説明の担当者も決めておく
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。