運営 / 更新 2026-10-24
訪問介護の個人情報:要配慮個人情報の範囲と、本人の同意なしで第三者に提供できる場合
訪問介護の記録に書かれた病歴や身体状況は、個人情報保護法でいう要配慮個人情報に当たりえます。要配慮個人情報の取得と、個人データを第三者に出す提供は、どちらも原則として本人の同意が要ります。同意なしで出せるのは、法令に基づく場合や生命・身体の保護で同意が困難な場合などの例外と、委託や共同利用のように相手が第三者に当たらない場合で、この記事は法の条文と、個人情報保護委員会と厚生労働省のガイダンス(令和8年4月一部改正)の範囲で整理します。
介護記録の何が要配慮個人情報に当たるか
要配慮個人情報には、病歴や犯罪により害を被った事実などが含まれます(法第2条第3項)。条文は、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他、不当な差別や偏見などの不利益が生じないよう取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報と定めています。
ガイダンスは、介護関係事業者で想定される要配慮個人情報として、診療録などの診療記録や介護関係記録に記載された病歴、診療や調剤の過程で知り得た診療情報、健康診断の結果と保健指導の内容、障害(身体障害・知的障害・精神障害等)の事実、犯罪により害を被った事実などを挙げています。訪問介護の記録に書く持病、服薬、既往歴、障害の状況は、これらに当たることがあります。ガイダンスはまた、診療録等の診療記録や介護関係記録は、媒体を問わず個人データに該当するとしています。
要配慮個人情報かどうかを個別の記載ごとに判定することは、この記事の範囲を超えます。記録の様式を決めるときは、病歴や障害に関わる記載が含まれる前提で、取得と提供の同意を整えておくのが、ガイダンスの考え方に沿います。
この記事で決めること
介護記録の病歴や身体状況が要配慮個人情報に当たるか、利用者の同意なしに情報を出せるのはどの場合か、委託先への提供は第三者提供かを知りたい訪問介護事業所の人向け。ための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、個人情報の提供先と同意の確認表(1枚):提供先ごとに、提供する情報、同意の有無と取得日、例外に当たるかの検討、委託・共同利用の場合の契約や通知の有無を作成できる状態を目指します。
取得するときは原則として本人の同意が要る
法第20条第2項は、法令に基づく場合や、人の生命・身体・財産の保護のために必要で本人の同意を得ることが困難なときなどを除き、あらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得してはならないと定めています。ガイダンスも、要配慮個人情報を取得する場合は、あらかじめ本人の同意を得なければならず、法第20条第2項各号の場合は同意が要らないとしています。
ガイダンスが同意が要らない例として挙げているのは、急病その他の事態が生じたときに、本人の病歴などを医師や看護師などの医療従事者が家族から聴取する場合(法第20条第2項第2号)です。一方、ガイダンスは、要配慮個人情報を書面または口頭等により本人から適正に直接取得する場合は、本人が情報を提供したことをもって、取得することについて本人の同意があったものと解されるとしています。
取得したときの利用目的は、あらかじめ公表している場合を除き、速やかに本人に通知するか公表します(法第21条第1項)。契約書など本人から直接書面に記載された個人情報を取得する場合は、第2項により、あらかじめ本人に利用目的を明示します(人の生命・身体・財産の保護で緊急に必要がある場合を除く)。利用目的を変更したときも、変更後の目的を本人に通知するか公表します(同条第3項。ガイダンスも同じ)。
第三者に提供するときも原則は本人の同意
法第27条第1項は、例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。ガイダンスは、介護関係事業者にも同じ原則を示し、例外に当たる場合は同意が要らないとしています。
介護関係事業者の同意の取り方について、ガイダンスは、指定基準でサービス担当者会議等に利用者の個人情報を用いるときは利用者の、家族の個人情報を用いるときは家族の同意を、あらかじめ文書で得ることとされていることを踏まえ、事業所内への掲示ではなく、サービス利用開始時に適切に、利用者から文書で同意を得ておく必要があるとしています。基準第33条の読み方は訪問介護の秘密保持等(基準第33条)にあり、重要事項説明の流れは重要事項説明で扱っています。
ガイダンスによれば、本人以外の者に病状などを説明する場合は、あらかじめ説明する家族等の対象者を本人に確かめ、同意を得ることが望ましいとされています。本人の申出があれば、現実に世話をしている親族などを対象に加えたり、家族の特定の人に限ったりする取扱いもできます。
同意なしで提供できる例外:法令・生命の保護など
同意なしで提供できる例外は、法第27条第1項に定められています。主なものは4つです。法令に基づく場合、生命・身体・財産の保護のために必要で同意が困難なとき、公衆衛生の向上や児童の健全な育成のために特に必要で同意が困難なとき、国や地方公共団体の法令に基づく事務に協力する必要があり同意を得ると支障が出るおそれがあるときです(学術研究に関する号は省いています)。
ガイダンスは、法令に基づく場合の例として、介護保険法に基づく不正受給者に係る市町村への通知などを挙げています。生命・身体の保護の例としては、意識不明で身元不明の患者について、関係機関へ照会したり、家族や関係者からの安否確認に必要な情報を提供したりする場合と、意識不明の患者の病状や重度の認知症の高齢者の状況を家族等に説明する場合を挙げ、後者は本人の同意を得ずに第三者提供できる場合と考えられるとしています。
ただし、これは例示です。意識不明か重度の認知症か、同意を得ることが困難といえるかは、場面ごとの事情で変わります。迷う場面は、提供する前に指定権者や個人情報保護委員会の窓口に確かめ、日付と回答を記録に残しておくと、後から経緯をたどれます(この記事の運用の提案です)。
なお、要配慮個人情報である個人データは、本人の求めに応じて提供を停止する方式(法第27条第2項のオプトアウト)による第三者提供が認められていません。
| 場面 | 同意 | 根拠の整理 |
|---|---|---|
| サービス担当者会議等で利用者の個人情報を用いる(ケアマネジャーや他のサービス担当者への提供) | 利用開始時に文書で同意を得ておく | ガイダンスのⅣ9。基準でサービス担当者会議等の文書同意が定められている |
| 意識不明の人や重度の認知症の人の状況を家族等へ説明 | 本人の同意を得ずに第三者提供できる場合と考えられる | 法第27条第1項第2号(生命・身体の保護で同意が困難)。個別の場面の判断が要る |
| 不正受給に係る市町村への通知など法令に基づく提供 | 同意は要らない | 法第27条第1項第1号(法令に基づく場合) |
| 一般の家族に病状を説明 | 対象者を確かめて同意を得ることが望ましい | ガイダンス。申出があれば範囲を広げる・限る取扱いもできる |
第三者に当たらない場合:委託・事業承継・共同利用
法第27条第5項は、次の場合の提供を受ける者は、同条第1項などの適用上、第三者に該当しないとしています。1つ目は、利用目的の達成に必要な範囲内で個人データの取扱いの全部または一部を委託する場合、2つ目は合併その他の事由による事業の承継に伴う場合、3つ目は特定の者との間で共同して利用する場合で、その旨と共同して利用する項目・範囲・利用目的・責任者の氏名などをあらかじめ本人に通知するか、本人が容易に知りうる状態に置いている場合です。
ガイダンスは、検体検査や、介護サービス利用者への食事の提供、施設の清掃などの業務を委託された事業者にも、適切な安全管理措置を求めています。委託する側は、ガイダンスの趣旨を理解して対応する事業者を委託先に選び、委託先の監督にも当たります(法第25条)。委託先に渡す範囲は、委託する業務に必要な範囲にとどめます。
共同利用は、病院と訪問看護ステーションが共同で医療サービスを提供する場合のように、あらかじめ本人に通知等をしていることが前提です。通知等をしていない提供を、共同利用として扱うことはできません。
事業所で整える手順:提供先ごとの同意と例外の確認
提供先ごとに、出す情報、目的、同意の有無と取得日を1枚にまとめると、利用開始時の同意の範囲を超える提供に気づけます。同意の範囲を超える提供は、あらためて本人の同意を得ます。同意が取れない提供は、上の例外に当たるかを確かめ、当たると判断した理由を記録に残します。
委託先や共同利用の相手がいる場合は、委託の範囲、安全管理の確認、共同利用の通知の有無を、提供先の一覧に加えます。漏えいが起きたときの報告と本人への通知は利用者情報の漏えいへの対応に、事業所の情報の安全管理は情報安全管理の手引きにあります。
ケアマネジャーに服薬や口腔の状況を伝える基準上の定めは服薬・口腔の状況の情報共有で扱っています。
資料の範囲
2026年10月24日に、個人情報保護法の条文はe-Gov法令検索で、ガイダンスは個人情報保護委員会の掲載ページ(令和8年4月一部改正の表示)で確かめました。政令で定める要配慮個人情報の記述等の全体と、令和8年4月の改正内容は、この記事では確認していません。
個別の場面で第三者に提供してよいかの判断や、個別の記載が要配慮個人情報かの判定は、この記事の対象外です。判断が付かない場合は、指定権者や個人情報保護委員会の窓口に確かめます。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 利用者の情報を出す相手(ケアマネジャー、主治医、家族、委託先、行政など)を書き出し、相手ごとに、どの情報をどの目的で出すかを書く
- 相手ごとに、利用開始時に文書で同意を得ているかを確かめ、同意の範囲に入るかを書く。同意の範囲を超える提供は、あらためて本人の同意を得る
- 同意がない提供は、法令に基づく場合、生命・身体・財産の保護で同意が困難な場合などの例外に当たるかを書き、当たるかの判断が付かない場合は、提供の前に個人情報保護委員会などの窓口に確かめた日と回答を残す
- 委託先や共同利用の相手は、第三者に当たらない条件(委託の範囲、共同利用の通知)を満たしているかを確かめ、満たしていない提供は同意を取る
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「個人情報の保護に関する法律(第2条第3項・第17条・第20条・第21条・第27条)」(法第2条第3項(要配慮個人情報)、第20条第2項(要配慮個人情報の取得)、第21条(利用目的の通知等)、第27条第1項・第5項(第三者提供の制限と例外、第三者に該当しない場合))(確認日 2026-10-24)
- 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(令和8年4月一部改正)」(Ⅰ3 対象事業者の範囲、Ⅳ2 要配慮個人情報の取得、Ⅳ9 個人データの第三者提供(法第27条)の(1)本人の同意・(2)例外・(4)第三者に該当しない場合)(確認日 2026-10-24)