運営 / 更新 2026-10-18

訪問介護の利益率と収支差率の違い(9.6%の読み方)

訪問介護の利益率を調べると、厚生労働省の調査の収支差率9.6%(令和6年度決算)に行き当たります。ただし収支差率は、自社の月次の営業利益率と同じ式ではありません。この記事では、調査の収支差率の定義を原文で確認し、自社の数字と比べるときに揃えるべき点を整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

調査の収支差率の式と、収入・支出に含まれるもの

厚生労働省の「令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要」は、収支差率を「(介護サービスの収入額 − 介護サービスの支出額)/ 介護サービスの収入額」と定めています(2026-10-18に原文で確認)。

収入額は、介護報酬による収入(利用者負担分を含む)、保険外利用料収入、補助金収入(物価高騰対策関連補助金を除く)の合計です。支出額は、介護事業費用、借入金利息、本部費繰入の合計です。

本部費繰入は、各事業所に共通する人事労務経理に係る経費等に充てられるもので、支出に含めていると資料に書かれています。

調査の収支差率に含まれる項目(令和7年度介護事業経営概況調査)
区分含まれるもの
収入額介護報酬(利用者負担分を含む)、保険外利用料収入、補助金収入(物価高騰対策関連補助金を除く)
支出額介護事業費用、借入金利息、本部費繰入

この記事で決めること

訪問介護の利益率を調べる運営者が、公表の収支差率の定義を理解し、自社の月次の利益率と比べるときの注意を把握して、人件費率・損益分岐の記事へ進むための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、月次利益率の比較表(自社の収入・支出を調査の定義に組み替えた収支差率、税引前か税引後か、比べた公表値と確認日)を作成できる状態を目指します。

訪問介護の数値:9.6%は3種類ある収支差率の1つ

同じ資料には、収支差率が3通りで載っています。括弧なしは税引前収支差率(物価高騰対策関連補助金を含まない)、<>内は税引前収支差率(同補助金を含む)、()内は税引後収支差率(同補助金を含む)です。

訪問介護の括弧なしの値は、令和5年度決算が11.1%、令和6年度決算が9.6%で、対前年度は▲1.5ポイントです。税引後(補助金を含む)は10.6%から9.1%でした。

利益率を公表値と比べるときは、どの種類の数字かを先に決めてください。税引前の数字と、自社の税引後の利益を並べると、差が出ます。

訪問介護の収支差率(令和7年度概況調査)
種類令和5年度決算令和6年度決算
税引前・物価高騰対策関連補助金を含まない11.1%9.6%
税引後・物価高騰対策関連補助金を含む10.6%9.1%

自社の営業利益率と並べるときにずれる点

一般的な会計では、営業利益は売上高から売上原価と販売費及び一般管理費を引いた額で、借入金の利息は営業外費用として営業利益の外に置かれます。調査の収支差率は、支出に借入金利息を含めています。借入がある事業所は、同じ事業でも営業利益率より収支差率が低く出る方向にずれます。

収入にも違いがあります。調査の収入には保険外利用料収入や補助金収入が入るため、介護報酬だけの売上を分母にした自社の利益率とは分母が一致しません。

本部費繰入を支出に入れる点も、法人本部をもつ事業者と、1事業所で運営する事業者とでは意味が違います。この調査の表は、代表者の報酬をどの項目に入れて集計したかを示していないため、代表者報酬の扱いは揃えられるか分かりません。

比べる前に、自社の月次の損益を「介護報酬・保険外・補助金の合計を収入」「事業費用+借入金利息+本部の経費を支出」に組み替えると、調査の定義に近づきます。組み替えても、平均値に当たる事業所は実在しない点は変わりません。

実態調査との違いと、赤字の事業所の割合

令和7年度の調査は「介護事業経営概況調査」で、3年に1度の「介護事業経営実態調査」(前回は令和5年度)とは別の調査です。概況調査は改定後2年目に実施し、令和5年度と令和6年度の2年分の決算を調べています。訪問介護の客体数は1,502、有効回答数は638です。

令和6年度決算で赤字だった訪問介護の事業所は35.1%、黒字は64.9%でした。9.6%は平均の値で、赤字の事業所が3割強あることも合わせて読む必要があります。

規模による収支差率のばらつきは訪問介護の事業所規模別の収支比較(月約300回・700回・1,650回、令和6年度決算)で、収入の平均値の見方は訪問介護の売上構造と報酬計算で確認できます。

自社の利益率を見るときの次の一歩

売上に対する人件費の割合は訪問介護の人件費率67.8%(令和7年度・訪問回数階級別)で、黒字になる訪問件数は訪問介護の損益分岐点(訪問件数)で確認できます。

利益率は、公表値と同じ数字に近づけることが目的ではありません。公表値の定義を知ったうえで、自社の月次の変化(どの費用が増えたか)を見るために使ってください。

この記事で確認していないこと

確認したのは、厚生労働省の「令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要」の収支差率の定義と、訪問介護の収支差率・赤字割合の数値です(2026-10-18に確認)。調査の記入要領は確認できていないため、給与費や本部費繰入に含める項目の細部は書いていません。

自社の利益率の望ましい水準は、この記事では示していません。借入や法人の形態で数字は変わるため、顧問税理士などと確かめてください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 月次の損益を、収入(介護報酬・保険外利用料・補助金)と支出(事業費用・借入金利息・本部の経費)に組み替え、補助金に物価高騰対策関連補助金が含まれるかを分けて書く
  2. 組み替えた収入と支出から、収支差率を(収入−支出)÷収入で計算し、税引前か税引後かを明記する
  3. 比べる公表値は、税引前(物価高騰対策関連補助金を含まない)の9.6%か、税引後(含む)の9.1%かを選び、同じ種類の数字と並べる
  4. 差が大きい月は、人件費率と損益分岐の訪問件数に分けて、どの費用が増えたかを確かめ、結果と日付を比較表に残す

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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