運営 / 更新 2026-10-17
訪問介護員が無断欠勤したとき:解雇予告除外認定の基準・申請書類・標準処理期間
訪問介護員が連絡なしに出勤しなくなったとき、30日前の解雇予告や解雇予告手当なしで解雇するには、事業所の判断だけでは足りず、労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)が必要です。厚生労働省のQ&Aは、認定基準の例示として「2週間以上正当な理由がなく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」を挙げています。労働基準法第20条、厚生労働省のQ&A、福井労働局の参考資料をもとに、認定の基準、申請先と書類、標準処理期間を整理します(個別の事案は労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください)。
条文:予告なしで解雇できる場合でも、監督署長の認定が必要
労働基準法第20条第1項は、解雇する場合に少なくとも30日前の予告をするか、30日分以上の平均賃金を支払うことを求めています。ただし書きで、天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能になった場合と、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は、この限りでないとしています。無断欠勤が続くヘルパーの解雇で使うのは、後者です。
ただし、後者に当たるかどうかは事業者が自分で決められません。第20条第3項は、前条(第19条)第2項を準用しており、ただし書きの場合は、その事由について行政官庁の認定を受けなければならないとしています。厚生労働省のQ&Aも、除外事由があるかどうかは労働基準監督署長の認定が必要だと説明しています。
この記事が扱うのは、30日前の予告と予告手当を不要にする手続きです。解雇そのものが有効かどうかは別の問題で、30日前の予告と予告手当の基本は、訪問介護員を解雇するときの30日前の予告と解雇予告手当(労働基準法第20条)で読めます。
この記事で決めること
訪問介護事業所の管理者・事業者が、連絡なく出勤しなくなった訪問介護員を30日前の予告や予告手当なしで解雇したいときに、労働基準法第20条の認定の仕組み、無断欠勤の認定基準の例示、申請先・提出書類・標準処理期間、認定を取らない選択肢を確かめ、欠勤と督促の記録をどう残すかを決めるための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、無断欠勤の記録票(欠勤の開始日・割り当てていた訪問予定・出勤の督促の日時と手段・本人の返答・申請書類6点の準備状況)を作成できる状態を目指します。
認定基準の例示:無断欠勤は「2週間以上・正当な理由なし・督促に応じない」
認定は、解釈例規(昭和23年11月11日基発第1637号、昭和31年3月1日基発第111号)に示された認定基準で判断されます。厚生労働省のQ&Aは、例示を6つ挙げています。窃盗・横領・傷害などの刑法犯に当たる行為、賭博や職場の風紀を乱す行為、経歴詐称、他の会社への転職、無断欠勤、遅刻・欠勤が多く注意を受けても改めない場合です。
このうち無断欠勤は、2週間以上、正当な理由がなく無断で欠勤し、出勤の督促に応じない場合とされています。福井労働局の参考資料は、「原則として2週間以上」と書いています。日数だけでなく、正当な理由の有無と、督促に応じなかったことが問われます。
例示は目安で、認定は必ずしも個々の例示にとらわれず、総合的かつ実質的に判断されます。就業規則に懲戒解雇の事由として書いてあっても、それに拘束されることはないとされています。就業規則に書いてあることだけを理由に、認定が下りると考えないでください。
| 要素 | 例示の文言 | 事業所で残す記録(運用の提案) |
|---|---|---|
| 期間 | 原則として2週間以上 | 欠勤が始まった日と、その間に割り当てていた訪問予定、代わりに入った職員の記録 |
| 正当な理由がない | 正当な理由なく無断で欠勤 | 本人から連絡があったか、病気・事故・家族の事情などの申し出がなかったかの確認記録 |
| 督促に応じない | 出勤の督促に応じない | 電話・メッセージ・書面などで出勤を求めた日時と手段、その内容、本人の返答の有無 |
申請先・書類・時期:事業場の所在地を管轄する監督署へ解雇日までに
福井労働局の参考資料によると、申請先は本社の所在地ではなく、対象の労働者が所属する事業場の所在地を管轄する労働基準監督署です。訪問介護では、ヘルパーが所属する事業所の所在地が基準になります。この資料は福井労働局が作成したもので、様式の細部や受付の方法は、事業所を管轄する監督署に確認してください。
認定は、原則として解雇を行う日(解雇日)までに受ける必要があります。すでに解雇の意思表示をしたり解雇をしたりしている場合は、解雇の意思表示日と解雇日が分かる解雇通知書を出すとされています。解雇通知書を添えれば解雇後でも申請できますが、認定の結果を待たずに解雇を通知する進め方は、避けるのが安全です(運用の提案)。
福井労働局の資料では、標準処理期間は原則として2週間です。ただし、対象の労働者と連絡が取れないなどの状況では、処理期間が延びる可能性があるとされています。連絡が取れないヘルパーのケースこそ、延びやすい場面に当たります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請先 | 事業場の所在地を管轄する労働基準監督署(本社の所在地の監督署ではない) |
| 提出書類 | ①解雇予告除外認定申請書(様式第3号)、②労働者名簿、③労働条件通知書、④就業規則・労働協約、⑤事由の内容が分かる資料、⑥担当者の名刺 |
| ⑤の例 | 事由の経緯を時系列にまとめた社内調査報告書、本人の署名がある始末書(顛末書・自認書)、懲罰委員会の議事録など |
| 部数 | ①〜⑥について正本2部(②〜⑥は写しでよい) |
| 時期 | 原則として解雇日までに認定を受ける |
| 標準処理期間 | 原則として2週間。連絡が取れないなどの状況では延びる可能性がある |
認定を取らない選択肢:予告か予告手当を払えば認定は不要
福井労働局の参考資料は、懲戒解雇を行う場合でも、労働基準法第20条に定める手続き、つまり30日以上前の予告か、平均賃金30日分以上の解雇予告手当の支払いをして解雇するのであれば、解雇予告除外認定を受ける必要はないとしています。
認定の申請には書類の準備と処理の期間がかかります。無断欠勤の事実を時系列で示せない場合や、認定を待てない事情がある場合は、予告手当を払う方法と比べて、どちらが事業所の実情に合うかを、社会保険労務士や労働基準監督署に相談して決めます。この記事は、どちらを選ぶべきかの判断をするものではありません。
起こりやすい失敗:欠勤の記録と督促の記録が残っていない
訪問介護では、ヘルパーが直行直帰で、管理者が出勤の状況を日々見ていないことがあります。連絡が取れなくなった時点で、いつから欠勤か、誰が何回、どの手段で連絡したかを残していないと、申請書の事由欄と⑤の資料を作れません。連絡の日時と内容は、その場で記録に残します(運用の提案)。
また、資料は事由欄に具体的な事実を端的に書くよう求めています。福井労働局の参考資料は、「会社の製品と備品を盗んだこと」ではなく、期間と点数と金額を示した書き方を例に挙げています。無断欠勤でも、「勤務を怠った」とだけ書かず、欠勤の期間、督促の回数と日付を書く形が近いと考えられます(運用の提案)。
利用者の訪問が空くときは、代わりの職員の手配と、居宅介護支援事業者への連絡を先に行います。人事の手続きの進み具合に関係なく、サービスの提供が止まらない体制を先に整えます(運用の提案)。
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実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 連絡なく出勤しなかった日を欠勤の開始日として記録し、その間に割り当てていた訪問予定と、代わりに入った職員を記録票に残す
- 電話・メッセージ・書面で出勤を求めたら、その日時と手段、内容、本人の返答の有無を、その場で記録票に書く
- 欠勤が2週間以上に及び督促にも応じないときは、認定の申請と、30日前の予告か予告手当の支払いのどちらで進めるかを、社会保険労務士か労働基準監督署に相談して決める
- 認定を申請するときは、申請書・労働者名簿・労働条件通知書・就業規則・事由の資料・担当者の名刺の6点を正本2部で用意し、解雇日までに事業場を管轄する監督署へ出す
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。