運営 / 更新 2026-10-26

訪問看護は介護保険か医療保険か:末期の悪性腫瘍等・特別訪問看護指示書14日・精神科訪問看護

要介護・要支援の人の訪問看護は、原則として介護保険の給付です。医療保険の訪問看護療養費は、同じ傷病で介護保険から給付を受けられるときは支給されず(健康保険法第55条第3項)、例外は、特別訪問看護指示書、別表第七に掲げる疾病等、精神科訪問看護基本療養費の3つです。この記事は、利用者の訪問看護がどちらの保険かを、訪問介護の事業者が告示の文言で読めるように整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

原則:同じ傷病で介護保険の給付を受けられるなら、医療保険は支給されない

健康保険法第55条第3項は、訪問看護療養費の支給について、「同一の疾病又は負傷について、介護保険法の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない」と定めています。2026年10月26日にe-Gov法令検索の現行条文で確認しました。

医療保険側の通知(保発0305第12号、令和6年3月5日)も同じ立場です。要介護被保険者等の訪問看護は、基準告示第4の1に規定する場合を除き、算定の対象としないと書いています。つまり、要介護・要支援の認定を受けた人の訪問看護は、まず介護保険の側で考え、例外に当たるときだけ医療保険に回ります。

この記事で決めること

利用者の訪問看護が介護保険と医療保険のどちらの給付になるのか、要介護・要支援の人が医療保険の訪問看護に切り替わるのはどんな場合かを、訪問介護の事業者が告示と通知の文言で確かめたい人向け。ための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、訪問看護の保険の種類の確認票(利用者ごとに1枚。認定の有無・疾病等・指示書の交付日・精神科訪問看護の有無・聞いた相手と日を記入)を作成できる状態を目指します。

例外は3つ:特別訪問看護指示書・別表第七の疾病等・精神科訪問看護

医療保険の訪問看護を要介護被保険者等に行える場合は、「訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等」(平成18年厚生労働省告示第103号)の第四の一に列挙されています。厚生労働省掲載の告示本文で、次の3つであることを確認しました。

このうち(2)と(3)は、介護保険の側の告示(平成12年厚生省告示第19号)でも訪問看護費の対象から外されています。(1)の特別訪問看護指示書は、介護保険の側では特別の指示として別に扱われます。

要介護被保険者等でも医療保険の訪問看護になる3つの場合(基準告示第四の一)
例外告示の文言この記事で扱う範囲
(1) 特別訪問看護指示書「特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を行う場合」交付の日から14日以内の扱いを4つ目の節で整理
(2) 別表第七の疾病等「特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等の者に対する指定訪問看護を行う場合」介護保険の側の告示が挙げる疾病等を3つ目の節で整理。別表第七の全項目の照合はしていない
(3) 精神科訪問看護「精神科訪問看護基本療養費が算定される指定訪問看護を行う場合」介護報酬告示の注1が除外している点だけを3つ目の節で整理

介護保険の側の告示:末期の悪性腫瘍等と精神科は訪問看護費の対象から外れる

介護報酬の告示(平成12年厚生省告示第19号)の別表、訪問看護費の注1は、通院が困難な利用者への訪問看護の規定です。その括弧書きで、末期の悪性腫瘍その他別に厚生労働大臣が定める疾病等の患者と、精神科訪問看護・指導料および精神科訪問看護基本療養費に係る訪問看護の利用者を除いています。厚生労働省掲載の告示本文で確認しました。

注1の「厚生労働大臣が定める疾病等」のうち、末期の悪性腫瘍は注1が明記しています。それ以外は、利用者等告示(平成27年厚生労働省告示第94号)の第四号が、次の19項目を並べています。多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患、多系統萎縮症、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、頚髄損傷、人工呼吸器を使用している状態です。

パーキンソン病関連疾患は、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、およびパーキンソン病のうちホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上で生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度のものに限る、と告示が括弧書きで範囲を絞っています。多系統萎縮症も、線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群を指すと定義されています。病名が同じでも、重症度などの条件に当たるかは、主治医と訪問看護の事業所が確かめる事項です。

この一覧は介護保険の側の告示の文言です。医療保険の側で参照される別表第七は別の告示で、2026年10月26日の確認では、全項目を照合していません。医療保険側の一覧は、訪問看護の事業所または厚生労働省掲載の告示で確かめてください。

特別訪問看護指示書は、交付の日から14日以内が医療保険の対象

特別訪問看護指示書は、主治医が、急性増悪などで一時的に頻回の訪問看護が必要と認めたときに交付する指示書です。医療保険側の通知(保発0305第12号)は、特別訪問看護指示書が交付された人の訪問看護を、交付の日から起算して14日以内に行った場合は、月1回に限り、14日を限度として算定できると書いています。基準告示第二の一に規定する疾病等の利用者は、この扱いから除かれています。

気管カニューレを使用している状態の人と、真皮を越える褥瘡の状態の人は、同じ通知が月2回までとしています。指示書の期間は、介護保険の訪問看護を続けている利用者でも、医療保険の訪問看護に切り替わる期間になります。

介護保険の側で、この期間の訪問看護費をどう扱うか、月の途中で医療保険に切り替わった場合の日割りをどう数えるかは、老企第36号の通則と訪問看護の項に書かれています。この記事は、その全文を厚生労働省掲載版で照合していないため、請求の細部は書きません。請求の判断は、訪問看護の事業所と国民健康保険団体連合会(国保連)の案内で確かめる事項です。

訪問介護の事業者が確かめること:切り替わりの有無と、連絡の窓口

訪問介護の事業者は、利用者の訪問看護の保険の種類を決める立場にはありません。ただ、利用者が末期の悪性腫瘍と診断された、人工呼吸器を使い始めた、特別訪問看護指示書が出たといった変化は、訪問介護の現場で先に気づくことがあります。気づいたときは、利用者の状態の変化として、ケアマネジャーと訪問看護の事業所に伝えます(伝え先の整理は訪問介護の変化の伝え先早見表)。

訪問介護と訪問看護の役割の違い、計画書の作り方は訪問介護と訪問看護の違いで扱っています。訪問看護の単位数は訪問看護費の単位数、介護保険の側の月額型の加算は訪問看護の主な加算にまとめています。

確認の手順:認定の有無、疾病等、指示書、精神科の順に聞く

利用者の訪問看護の保険を確かめるときは、まず要介護・要支援の認定を受けているかを見ます。認定を受けていなければ、介護保険の訪問看護の話にはなりません。認定を受けている場合は、末期の悪性腫瘍や告示が挙げる疾病等の診断があるか、特別訪問看護指示書が出ているか、精神科訪問看護の指示が出ているかを、訪問看護の事業所とケアマネジャーに順に聞きます。

答えは、聞いた日と相手を残します。月の途中で切り替わる場合は、切り替わった日と、指示書の交付日・期間も一緒に記録します。どちらの保険の請求になるかは訪問看護の事業所の請求の話で、訪問介護の請求に影響があるかは、個別の利用者ごとに保険者へ確かめます。

資料の範囲

2026年10月26日に、健康保険法第55条(e-Gov法令検索)、基準告示第103号の第四の一、保発0305第12号、介護報酬告示の別表の訪問看護費の注1、利用者等告示の第四号を確認しました。老企第36号の訪問看護の項と、日割りの細部、医療保険側の別表第七の全項目は、この記事では確認していません。

個別の利用者がどちらの保険に当たるか、指示書が有効か、請求がどうなるかの判断は、この記事の対象外です。主治医、訪問看護の事業所、ケアマネジャー、保険者の確認事項です。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 訪問看護を使う利用者ごとに、要介護・要支援の認定を受けているかを書き、認定がなければ介護保険の訪問看護の対象でないことを表の先頭に残す
  2. 末期の悪性腫瘍の診断と、告示第四号の19項目に当たる診断があるか、パーキンソン病関連疾患などの条件付きの項目は重症度の条件に当たるかを、訪問看護の事業所とケアマネジャーに聞いて日付つきで残す
  3. 特別訪問看護指示書が出た場合は、交付日と14日の期間、月1回または月2回の別を訪問看護の事業所に聞いて書き、期間の前後でサービスの組み合わせを見直す日を決める
  4. 精神科訪問看護の指示の有無を聞いて残し、切り替わりに気づいたときの連絡先(ケアマネジャー・訪問看護の事業所)と伝えた日を記録する

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

  • 厚生労働省「訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等(平成18年厚生労働省告示第103号)第四の一(要介護被保険者等に医療保険の訪問看護を行える場合)」(第四の一(要介護被保険者等である利用者について指定訪問看護の費用に要する額を算定できる場合)の(1)〜(3))(確認日 2026-10-26)
  • 厚生労働省保険局「訪問看護療養費の算定に関する通知(保発0305第12号、令和6年3月5日)」(要介護被保険者等の指定訪問看護の費用の額の扱い、特別訪問看護指示書が交付された者に対する指定訪問看護(交付の日から起算して14日以内))(確認日 2026-10-26)
  • 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)第四号(訪問看護費の注1の疾病等)・第五号(訪問看護費の注6の複数名訪問加算の基準)」(第四号(訪問看護費の注1の厚生労働大臣が定める疾病等)、第五号(訪問看護費の注6の厚生労働大臣が定める基準)、第六号(注7の厚生労働大臣が定める状態。イ〜ホの5区分)、第七号(注13の特別管理加算の区分。(Ⅰ)は第六号イ、(Ⅱ)は第六号ロ・ハ・ニ・ホ)、第八号(注15の厚生労働大臣が定める状態。イ・ロ))(確認日 2026-10-26)
  • 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 3 訪問看護費 注1(対象となる利用者)・注6(複数名訪問加算)」(別表 3 訪問看護費 注1(通院が困難な利用者。末期の悪性腫瘍等・精神科訪問看護の利用者を除く。理学療法士等の訪問はイ(5)で1日2回を超えると100分の90)、注6(複数名訪問加算(Ⅰ)(Ⅱ))、注20(イ(5)の1回8単位の減算)、ヘ 看護・介護職員連携強化加算(250単位。1月に1回)、イ(4)・ロ(4)(所要時間1時間以上1時間30分未満)、注7(特別な管理を必要とする利用者への1時間以上1時間30分未満の訪問後に引き続き訪問し通算1時間30分以上で1回300単位)、注12(緊急時訪問看護加算。ステーション(Ⅰ)600単位・(Ⅱ)574単位、病院・診療所(Ⅰ)325単位・(Ⅱ)315単位)、注13(特別管理加算(Ⅰ)500単位・(Ⅱ)250単位。1月につき)、注15(ターミナルケア加算。死亡月につき2,500単位)、ト 看護体制強化加算((Ⅰ)550単位・(Ⅱ)200単位。1月につき)、ホ 退院時共同指導加算(600単位。退院・退所につき1回、特別な管理を必要とする利用者は2回。ニの初回加算を算定する場合は算定しない)、注5(夜間・早朝100分の25・深夜100分の50。イ及びロが対象。1回につき)、イ・ロの所要時間別の所定単位数、注8(同一敷地内建物等の利用者と同一の建物に20人以上居住する利用者は1回につき100分の90、同一敷地内建物等に50人以上居住する建物の利用者は100分の85。訪問介護費の注12にある100分の88のただし書きは訪問看護費の注8にはない)、リ サービス提供体制強化加算(イ又はロを算定する場合は1回につき(Ⅰ)6単位・(Ⅱ)3単位、ハを算定する場合は1月につき(Ⅰ)50単位・(Ⅱ)25単位。ハは定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所と連携して行う訪問看護で2,961単位)、注9(特別地域訪問看護加算。大臣が定める地域に所在し届出をした事業所。イ・ロは1回につき・ハは1月につき100分の15)、注10(地域に所在し大臣が定める施設基準に適合し届出をした事業所。100分の10)、ニ 初回加算((Ⅰ)350単位・(Ⅱ)300単位。1月につき。(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定しない)、ホ 退院時共同指導加算の注(ニの初回加算を算定する場合は算定しない)、注11(大臣が定める地域に居住する利用者へ通常の事業の実施地域を越えて訪問。100分の5)、注14(専門管理加算。緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門ケア及び人工膀胱ケアの専門の研修を受けた看護師はイ250単位、特定行為研修を修了した看護師はロ250単位。1月に1回に限る)、注16(遠隔死亡診断補助加算。情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修を受けた看護師が主治の医師の指示で死亡診断の補助を行った場合、死亡月につき150単位))(確認日 2026-10-26)
  • デジタル庁(e-Gov法令検索)「健康保険法(大正十一年法律第七十号)第五十五条(他の法令による保険給付との調整)」(第五十五条第3項)(確認日 2026-10-26)

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