運営 / 更新 2026-10-12

訪問介護事業所の職場のハラスメント防止措置:パワハラ・セクハラで事業主が講ずる4つの措置

訪問介護事業所の事業主には、職員間のパワーハラスメントとセクシュアルハラスメントを防ぐために、方針の周知、相談窓口の整備、事後の対応、プライバシーの保護を行う義務があります。パワーハラスメントの防止措置は、中小企業の事業主にも令和4年4月1日から義務になっています。この記事は、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法と厚生労働省の指針を、2026-10-12に確認した範囲で整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護事業所の事業主が、職員間のパワーハラスメント・セクシュアルハラスメントについて、労働施策総合推進法第31条と男女雇用機会均等法第11条が求める雇用管理上の措置を、厚生労働省の指針で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、職場のハラスメント防止の方針と相談対応の手順書(方針の周知記録・相談窓口の担当者・事後対応の流れ・プライバシー保護の取り決め)を作成できる状態を目指します。

法律が事業主に求めること(パワハラは労働施策総合推進法、セクハラは男女雇用機会均等法)

パワーハラスメントについては、労働施策総合推進法の第31条第1項が、職場で行われる優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによって労働者の就業環境が害されないよう、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることを、事業主に求めています。条番号は、e-Govで確認した現行のものです。

セクシュアルハラスメントについては、男女雇用機会均等法の第11条第1項が、職場の性的な言動に対する労働者の対応で労働条件に不利益を受けたり、性的な言動で就業環境が害されたりしないよう、同じく相談への対応の体制整備などの措置を求めています。どちらの法律も、相談したことや、相談への対応に協力して事実を述べたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをすることを禁じています。

厚生労働省のリーフレットによると、中小企業のパワーハラスメント防止措置は令和4年3月31日まで努力義務で、同年4月1日から義務になりました。現在は、事業所の規模にかかわらず、措置を整えて運用する前提で準備します。

パワハラの3つの要素と6つの類型

厚生労働省の指針は、職場のパワーハラスメントを、優越的な関係を背景とした言動であること、業務上必要かつ相当な範囲を超えていること、労働者の就業環境が害されることの3つをすべて満たすものとしています。客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、該当しません。

指針の「職場」は、労働者が業務を遂行する場所を指し、通常働いている場所以外でも、業務を行う場所なら含まれます。訪問介護員が業務で訪れる利用者宅も、この考え方で職場に当たるかどうかを検討します。労働者には、パートタイムや契約社員など非正規雇用も含め、事業主が雇用する労働者のすべてが対象です。

指針は、代表的な言動の類型を6つ挙げ、該当する例と該当しない例を示しています。ただし、例は限られたものではなく、個別の事情で判断が異なることがあると明記されています。

パワーハラスメントの6類型(厚生労働省の指針、2026-10-12確認)
類型該当すると考えられる例(指針より)該当しないと考えられる例(指針より)
身体的な攻撃殴打、足蹴りを行うこと誤ってぶつかること
精神的な攻撃人格を否定する言動、必要以上に長時間にわたる厳しい叱責の繰り返し再三注意しても改善されない労働者に一定程度強く注意すること
人間関係からの切り離し意に沿わない労働者を長期間別室に隔離する、集団で無視する新規採用者の育成のために短期間集中的に別室で研修をすること
過大な要求業務とは関係のない私的な雑用を強制的に行わせること繁忙期に業務上の必要から通常より一定程度多い業務を任せること
過小な要求嫌がらせのために仕事を与えないこと能力に応じて業務内容や業務量を一定程度軽減すること
個の侵害性的指向や病歴などの機微な個人情報を、本人の了解なく他の労働者に暴露すること本人の了解を得て、必要な範囲で人事労務の担当者に伝え、配慮を促すこと

セクハラの2つの型と、行為者になり得る人

セクシュアルハラスメントの指針は、性的な言動への対応で労働条件に不利益を受ける対価型と、性的な言動で就業環境が害される環境型の2つを挙げています。同性に対するものも含まれ、被害を受けた人の性的指向やジェンダーアイデンティティにかかわらず、指針の対象です。

行為者になり得る人について、指針は、事業主、上司、同僚に限らず、取引先等の他の事業主やその雇用する労働者、顧客、患者またはその家族などもなり得ると記しています。訪問介護では、利用者や家族からの言動がこれに関わります。利用者や家族からのハラスメントに事業主が講ずる措置は、カスタマーハラスメント防止措置の義務で整理しているため、このページでは職員間の言動を中心に扱います。

パワハラ指針が定める4つの措置と、訪問介護事業所での整え方

パワーハラスメントの指針は、事業主が講じなければならない措置を4つにまとめています。セクシュアルハラスメントも、法律は同じ構造で雇用管理上の措置を求めているため、個別の措置の中身は同指針で確認し、パワーハラスメントの4つを土台に手順書を作ると整えやすくなります。

指針の例では、相談窓口は、担当者をあらかじめ定める、相談に対応する制度を設ける、外部の機関に委託する、のいずれでも定めたと認められます。小規模の事業所では、管理者自身が行為者や関係者になる場合に備えて、外部機関への委託や別の担当者を決めておく方法が考えられます。

指針は、事実確認で、相談者と行為者の主張が食い違い確認が十分にできないときは、第三者からも事実関係を聴くことを例に挙げています。また、ハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合にも、方針を改めて周知する、研修を再度行うなどの再発防止の措置を講ずるとしています。

事業主が講ずべき4つの措置(パワーハラスメントの指針、2026-10-12確認)
措置指針の内容事業所での形の例(指針の例示)
⑴ 方針の明確化と周知・啓発ハラスメントを行ってはならない方針と、行為者を厳正に対処する方針・内容を、就業規則などに規定して管理監督者を含む労働者へ周知する就業規則に方針と懲戒規定を書く、研修や講習を実施する
⑵ 相談に応じ適切に対応する体制の整備相談窓口をあらかじめ定めて周知し、担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。該当するか微妙な場合も広く相談に対応する担当者を定める、外部の機関に委託する、対応マニュアルや担当者への研修を用意する
⑶ 事後の迅速かつ適切な対応事実関係の迅速かつ正確な確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止の措置を行う双方からの事実確認、配置転換や謝罪、方針の再周知
⑷ 併せて講ずべき措置相談者・行為者のプライバシーの保護と周知、相談したことなどを理由とする不利益取扱いをしない旨の周知プライバシー保護をマニュアルに定め、担当者に研修を行う

事業所での確認の手順と、このページが判断しないこと

事業所では、就業規則その他の服務規律の文書にハラスメントを行わない方針と懲戒規定があるかを確かめ、なければ就業規則と時間外労働協定の整え方の確認と合わせて追加します。そのうえで、相談窓口の担当者を決めて連絡先を知らせ、相談を受けたときの流れとプライバシーの取り扱いを手順書にまとめ、周知した日を記録します。

このページは、個々の言動がパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントに当たるかの判断、懲戒処分の妥当性、妊娠・出産や育児・介護休業に関するハラスメントの措置を判断しません。個別の判断は、弁護士や社会保険労務士、都道府県労働局に確認します。

指針は、事実の確認が難しいときに、労働施策総合推進法第37条に基づく調停の申請など、中立な第三者機関に紛争の処理を委ねる方法も挙げています。勤務体制や研修の機会の確保は勤務体制の確保と研修機会の運営基準、育児・介護休業は育児・介護休業の事業主の義務も参照します。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. パワーハラスメントとセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針と、行為者を懲戒の対象にする旨を就業規則その他の服務規律の文書に書き、全職員へ周知した日と方法(配布・研修・掲示)を記録する
  2. 相談窓口の担当者をあらかじめ定めるか、外部の機関に委託し、連絡先を全職員に知らせる。相談を受けた担当者が使う留意点の手順書を作り、担当者への研修の日を記録する
  3. 相談があったときの流れとして、相談者と行為者の双方からの事実確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止の周知を手順に書く。事実が確認できなかった場合にも再発防止の措置をとることを入れる
  4. 相談者・行為者のプライバシーを守る取り扱いと、相談したことを理由に不利益な取扱いをしない旨を手順書に書いて周知し、年に1回、方針と窓口の周知が行き渡っているかを点検した日を記録する

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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