運営 / 更新 2026-10-20

訪問介護員の年末調整:対象になる人・ならない人と年の途中の退職者(所得税法第190条)

訪問介護事業所の年末調整は、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を出している職員が対象で、出していない人は対象になりません。年の途中で辞めた人、年の途中で入職した人、他社の給与がある人の扱いと、過不足の精算と納付期限を、所得税法第190条と国税庁のタックスアンサーで確認します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

年末調整は何を精算する手続きか

国税庁のタックスアンサー No.2662は、年末調整を、1年間に給与から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税の合計額を、その人が1年間に納めるべき額に一致させる手続きとしています。毎月の源泉徴収は税額表で求めた概算なので、年末に差額を精算します。

精算の流れは、No.2662が6段階で示しています。この記事は、その計算ではなく、誰に年末調整をするかと、精算した差額の扱いを中心に扱います。

年末調整の順序(国税庁タックスアンサー No.2662)
段階内容
11月1日から12月31日までに支払うべきことが確定した給与の合計額から、給与所得控除後の給与等の金額を求める
21で求めた額から、扶養控除などの所得控除額を差し引く
32の額(1,000円未満切捨て)に所得税の税率を当てはめて税額を求める
4住宅借入金等特別控除を年末調整で行う場合は、3の税額から差し引く
53又は4の税額に102.1パーセントを乗じ、100円未満を切り捨てた額が、1年間に納めるべき所得税及び復興特別所得税の額
6源泉徴収をした合計額が5より多ければ差額を還付し、少なければ差額を徴収する

この記事で決めること

訪問介護事業所の経営者や経理担当者が、登録ヘルパーやパートを含む職員のうち誰に年末調整をするか、年の途中で辞めた人や他社の給与がある人をどう扱うか、過不足の精算と納付期限をどうするかを判断するために、所得税法第190条と国税庁のタックスアンサーで確認する。ための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、年末調整の対象者名簿(職員ごとの扶養控除等申告書の提出日・年末調整の有無・対象外の理由・前職の源泉徴収票の受取日の記録)を作成できる状態を目指します。

12月に行う年末調整の対象になる人・ならない人

所得税法第190条は、年末調整の対象を、給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、その年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が2,000万円以下の人としています。提出の際に経由した給与等の支払者が、その年最後に給与等を支払うときに行います。その後12月31日までに別の支払者へ申告書を提出すると見込まれる場合は除かれます(掛け持ちのヘルパーの個別の判断は、所轄の税務署に確認してください)。

No.2665は、対象を申告書を提出している人としており、登録ヘルパーかパートかという雇用の形には触れていません。毎月の源泉徴収で申告書を出していない人に使う乙欄の人は、申告書を提出した人ではないので、対象にならないと読めます(乙欄の使い分けは次に挙げる記事で確認できます)。申告書の出し方と掛け持ちの扱いは、源泉徴収税額表の甲欄・乙欄・丙欄で確認できます。

申告書は、支払者が電磁的方法で記載事項の提供を適正に受けられる措置を講じているなどの要件を満たす場合に、紙に代えて電磁的方法で提供できます(所得税法第198条第2項)。受理した日に提出されたものとみなされます(同条第1項)。

12月に行う年末調整の対象(国税庁タックスアンサー No.2665)
区分年末調整
申告書を提出していて、1年を通じて勤務している人対象
申告書を提出していて、年の中途で就職し年末まで勤務している人対象
申告書を提出していない人(乙欄で源泉徴収している人)対象にならない(第190条の「申告書を提出した居住者」から読む)
1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人対象にならない
災害減免法の規定で、その年の給与の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人対象にならない

年の途中で辞めたヘルパーの扱い

年の中途で辞めた人は、No.2665が挙げる次の5つのどれかに当たるときだけ、その時点で年末調整を行います。(1)から(4)以外で年の中途に退職した人は、年末調整の対象になりません。

年の中途で辞めた人のうち、この5つに当たらない人は、年末調整の対象になりません。辞めた人に渡す源泉徴収票など退職時の手続きは、訪問介護員の退職時手続きで確認できます。

年の中途で年末調整を行う人(国税庁タックスアンサー No.2665・令和8年4月1日現在)
番号当てはまる人
(1)海外支店等に転勤したことなどの理由により非居住者となった人
(2)死亡によって退職した人
(3)著しい心身の障害のために退職した人(退職後に再就職して給与を受ける見込みのある人を除く)
(4)12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人
(5)パートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が136万円以下の人(退職後その年に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある人を除く)

対象になる給与と、年の途中で入職した人の前職の給与

No.2668は、年末調整の対象となる給与を、その年の1月1日から12月31日までの間に支払うことが確定した給与としています。実際に支払ったかどうかに関係なく、未払の給与も含まれます。前年に未払だった給与を今年になって支払っても、支払った年の対象には含まれません。

年の中途で入職した人が、入職前にほかの会社などで給与を受け取り、その会社などに扶養控除等(異動)申告書を提出していたときは、前の会社などの給与を含めて年末調整をします(所得税法第190条第1号、No.2668)。

前の会社などの給与の金額と源泉徴収税額は、源泉徴収票で確認します。No.2668は、確認ができないときは年末調整を行うことはできないとし、No.2674は、その場合は本人が確定申告で精算することになるとしています。No.2668は、前の会社などの源泉徴収票の提出を速やかに求めるよう示しています。

No.2674は、年の中途で入職した人の基礎控除や扶養控除などは、所得のあった月数に応じたあん分計算をせず、全額が認められるとしています。

還付と不足額の徴収・納付期限

源泉徴収した税額の合計が、その年に納めるべき税額より多いときは、所得税法第190条により、超過額をその年最後に給与等を支払う際に徴収すべき所得税に充当します。少ないときは、その不足額をその際に徴収し、徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければなりません。

半年分をまとめて納める納期の特例との関係は、この記事では確認していません。特例の内容と期限は、源泉所得税の納期の特例で確認し、個別の取扱いは所轄の税務署に確認してください。

事業所で確認すること(運用の例)

次の表は、上の決まりに合わせた確認の例で、国が定めた様式ではありません。

年末調整の前に確認すること(事業所の運用の例)
確認すること根拠となる決まり
給与を払った全員(登録ヘルパーを含む)について、扶養控除等(異動)申告書を出してもらっているかを名簿で確かめる所得税法第190条・No.2665
年の途中で辞めた人が、年の中途で年末調整をする5つのどれに当たるかを確かめ、当たらない人は対象外として記録するNo.2665
年の途中で入職した人の前職の源泉徴収票を速やかに求め、受け取った日を記録する所得税法第190条第1号・No.2668・No.2674
還付と不足額の徴収を、年最後の給与の支払の際に行い、不足額の納付日を決める所得税法第190条

確かめた資料と確認できていないこと

この記事は、2026年10月20日に、e-Govで公開されている所得税法第190条・第198条と、国税庁のタックスアンサー No.2662・No.2665・No.2668・No.2674(令和8年4月1日現在法令等)を読んで書きました。保険料控除、配偶者控除、住宅借入金等特別控除など個別の控除の要件と計算、年末調整計算ソフトの操作、翌月払いの給与の扱いの細部は扱っていません。

年末調整の対象になるかどうかは、個々の職員の申告書の提出状況と給与の状況で決まります。判断に迷う点は、所轄の税務署や税理士に確認してください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. その年に給与を払った全員(登録ヘルパーを含む)を名簿に並べ、扶養控除等(異動)申告書を出してもらっている人かどうかを書く。出していない人は年末調整の対象にならない
  2. 年の途中で辞めた人は、死亡・心身の障害・12月分の給与を受けた後の退職・給与総額136万円以下のパートなど、年の中途で年末調整をする5つのどれに当たるかを確かめ、当たらない人は対象外の理由を書く
  3. 年の途中で入職した人は、前の勤務先の給与の源泉徴収票を受け取った日を記録する。受け取れない人は年末調整ができず、本人の確定申告になる
  4. 年末調整の結果、源泉徴収額が多ければ還付し、少なければ徴収して、徴収の日の属する月の翌月10日までに納付する日を決める。判断に迷う点は所轄の税務署に確認して日付とともに残す

関連ガイドで計画をつなぐ

隣接する判断をつなぎ、記事単体で計画を止めないためのガイドです。

よくある質問

迷いやすい範囲と確認順を、質問ごとに整理します。

登録ヘルパーにも年末調整をしますか?

年末調整の対象は、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出している人です(国税庁タックスアンサー No.2665)。雇用の形には触れておらず、申告書を出している人が対象で、出していない人は対象になりません(2,000万円超などを除く)。個別の事情は所轄の税務署に確認してください。

年の途中で辞めたヘルパーの年末調整は必要ですか?

年の中途で辞めた人は、死亡退職、著しい心身の障害による退職、12月分の給与を受けた後の退職、年間の給与総額が136万円以下のパートの退職などに当たる場合だけ年末調整の対象です(No.2665)。それ以外は対象外です。

年の途中で入職したヘルパーの前の勤務先の給与はどう扱いますか?

前の勤務先に扶養控除等(異動)申告書を出して受け取った給与があれば、その給与を含めて年末調整をします。金額は源泉徴収票で確認し、確認できないときは年末調整ができません(No.2668)。その場合は本人が確定申告で精算します(No.2674)。

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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