運営 / 更新 2026-10-21

利用者に誤嚥性肺炎が疑われるとき:訪問介護員が食事・口腔ケアで見る点と伝え方

誤嚥性肺炎を疑うときは、むせの有無だけで判断せず、咳や痰、発熱、食事量の変化を見て早めの受診につなぎます。厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き 第3版」(令和5年9月)は、誤嚥性肺炎は他の利用者に伝播しない疾患で、飛沫予防策などは必要ないとしています。このページは、疑うきっかけ、日頃の対応、報告の考え方を手引きで確認し、感染症全般の手順は訪問介護の感染対策の手引きで扱っています。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

誤嚥性肺炎とは:口の中の細菌が肺に入って起こる肺炎

手引きは、誤嚥性肺炎を、誤嚥がきっかけになって主に口腔内の細菌が肺に入り込んで起こる肺炎と説明しています。脳梗塞などで中枢神経系の麻痺がある高齢者では嚥下機能が低下していることがあり、通常の食事でも誤嚥を起こす可能性が高くなるとされています。

高齢者は一般に咳反射が低下しており、むせる症状もなく、睡眠中などに口腔内の唾液が肺へ流れ込む「不顕性誤嚥」もあると書かれています。ノロウイルス感染症などで嘔吐したときに誤嚥を起こす場合もあり、その際は胃液に含まれる胃酸によっても肺炎が起こるとされています。

この記事で決めること

訪問介護員やサービス提供責任者が、食事介助や口腔ケアの場面で利用者の誤嚥性肺炎を疑うきっかけ、日頃の予防の考え方、疑ったときの受診・報告、他の利用者への感染対策が必要かどうかを、厚生労働省の感染対策の手引き第3版で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、誤嚥が疑われるときの連絡メモ(食事中のむせ・食後の咳・摂食量の変化・咳や痰や発熱の有無・連絡先と受診の相談の記録欄)を作成できる状態を目指します。

疑うきっかけ:食事中のむせ・食後の咳と、むせないときの注意

手引きは、食事の際に起こる誤嚥性肺炎は食事中にむせたり食後に咳が続いたりすることが多いため、そのような場合は誤嚥を起こした可能性を考えるとしています。一方で、食事の際に誤嚥しなくても誤嚥性肺炎は起こりうるため、むせるなどの症状がなくても否定はできないとも書かれています。

利用者の健康管理の項は、直ちに報告して記録する症状として、咳や喀痰の増加、発熱、摂食不良、いつもと比べて活気がないことなどを挙げています。高齢者は目立った症状が出にくく、見た目には軽症でも重篤な病態に進んでいることがあるため、「普段の反応と違う」という変化を早く把握することが大切だとされています。

訪問介護員は、食事介助や口腔ケアで利用者の様子を継続して見られる立場です。食事中の様子と食後の咳、食べられた量の変化を記録に残しておくと、受診の相談で具体的に伝えられます。

日頃の対応:口腔ケアと食事の注意、早めの受診

手引きは、誤嚥を起こしやすい高齢者の場合、普段の口腔ケアが重要だとしています。嚥下能力が低い利用者の食事の際には十分注意する必要があり、普段の状況と比べて摂食状態が低下している場合は、無理に食事をさせることのないように注意するとされています。

咳や痰、発熱などの症状がある場合は、早めに医師の診察を受けるとされています。受診の段取りは、サービス提供責任者への報告に続けて、ケアマネジャーやかかりつけ医に相談する流れが考えられます(本サイトの整理例です)。連絡の流れは訪問介護のサービス提供・ケアマネ連携・月次報告と合わせて確認してください。

食事の形態の選び方や嚥下の評価は、医師や歯科医師などの専門職が判断する事項で、訪問介護員が決めるものではありません。口腔の状態を把握して歯科につなぐ加算の要件は口腔連携強化加算で確認できます。

感染対策の位置づけ:他の利用者にうつる病気ではない

手引きは、誤嚥性肺炎は他の利用者に伝播する疾患ではないため、飛沫予防策などの対応は必要ないとしています。咳や発熱がある利用者でも、原因が誤嚥性肺炎か、結核や麻しんのような空気感染する感染症かは、見た目だけでは区別がつかないことがあります(本サイトの補足です)。後者が疑われるときのサービスの見合わせやマスクの考え方は利用者に結核・麻しんの疑いがあるときで整理しています。

なお、ここからは誤嚥性肺炎とは別の、肺炎球菌による肺炎の話です。手引きのワンポイントアドバイスは、肺炎は死亡原因の第5位で、日常的に生じる成人の肺炎のうち4分の1から3分の1は肺炎球菌が原因と考えられるとしています。主に65歳以上の方は予防接種法に基づく定期接種に該当する場合があるため、市町村へ確認するよう案内されており、接種の要否は医師に確認する事項です。

事業所で決めておくこと

記録する項目と報告先を先に決めておくと、慌てずに動けます。食事中のむせ、食後の咳、食べられた量、咳や痰や発熱の有無を記録し、報告先と受診の相談先を訪問する職員全員が知っておく形です(本サイトの整理例で、手引きが様式を定めているわけではありません)。緊急で受診が必要と思われる状態のときの対応は訪問介護の緊急時対応の義務で確認できます。

個別の利用者が誤嚥性肺炎かどうかの判断、食事の形態、治療は、医師などの専門職に確認する事項です。このページの内容は手引きの記載の要約であり、個別の事案への助言ではありません。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 食事中にむせる、食後に咳が続く、いつもより食べられない、咳や痰が増えた、熱があるといった変化を、見た日時と量の目安とあわせて記録する
  2. むせなくても誤嚥性肺炎は否定できないと手引きが注意しているため、「むせていないから大丈夫」と決めず、変化があれば責任者へ報告する
  3. 咳や痰、発熱があるときは、手引きに沿って早めに医師の診察を受けられるよう、ケアマネジャーやかかりつけ医へ相談する
  4. 摂食が落ちているときは無理に食べさせず、口腔ケアの状況も含めて、次の訪問の担当者へ引き継ぐ内容を決めておく

関連ガイドで計画をつなぐ

隣接する判断をつなぎ、記事単体で計画を止めないためのガイドです。

よくある質問

迷いやすい範囲と確認順を、質問ごとに整理します。

むせていなければ、誤嚥性肺炎の心配はありませんか?

そうとは限りません。手引き第3版は、食事の際に誤嚥しなくても誤嚥性肺炎は起こりうるため、むせるなどの症状がなくても否定はできないとしています。高齢者は咳反射が低下し、睡眠中に唾液が肺へ流れ込む不顕性誤嚥もあるとされています。

誤嚥性肺炎は、ほかの利用者にうつりますか?

手引き第3版は、誤嚥性肺炎は他の利用者に伝播する疾患ではなく、飛沫予防策などの対応は必要ないとしています。ただし、咳や痰、発熱がある場合は、原因を自分で決めず早めに医師の診察を受けます。

食事の量が減っている利用者には、どう対応しますか?

手引き第3版は、普段の状況と比べて摂食状態が低下している場合は、無理に食事をさせることのないように注意するとしています。嚥下能力が低い利用者の食事の際には十分注意する必要があり、普段の口腔ケアも重要とされています。

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

  • 厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き 第3版(令和5年9月)」(標準予防策(p.5・p.22〜27)、手指衛生の5つのタイミング(p.24)、訪問系の注意(p.17)、嘔吐物・排泄物の処理(p.45)、感染症発生時の対応フロー(訪問系・p.56〜57)、報告の基準(p.62)、職員の健康管理(入職時の確認・就業停止・健康診断・ワクチンによる予防・職業感染対策、p.51〜53)、疥癬(p.110〜113)、感染経路別の予防策(空気感染・飛沫感染・接触感染、p.10〜13)、利用者の健康管理(結核の排菌と治療・感染を疑う症状、p.28〜29)、誤嚥性肺炎(p.114〜115)、感染性胃腸炎・ノロウイルス(p.97〜99)、インフルエンザ(p.94〜96)、薬剤耐性菌感染症(p.117〜118)、研修の章の提供拒否に関する記載(p.40)、帯状疱疹(p.119))(確認日 2026-10-21)

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