運営 / 更新 2026-10-20

介護テクノロジー導入支援の国の要綱:訪問介護の補助率・基準額・要件(令和8年度)

介護テクノロジー導入支援事業は、見守り機器・インカム・介護ソフトなどの導入費を補助する事業で、実施するのは都道府県です。国の実施要綱は、訪問介護事業所も対象に含むと書いています。補助率の下限、機器ごとの基準額、補助を受ける事業所の要件、導入後の報告まで、要綱の本文で確認できる範囲を整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

実施するのは都道府県:国の要綱は「下限」を決める

要綱の「実施主体」は都道府県と書かれています。対象は、介護保険法に基づくサービスを提供するすべての事業所で、括弧書きで訪問介護事業所と居宅介護支援事業所が含まれると明記されています。要綱の「留意事項」は、サービスの種別で制限することがないよう都道府県に求めています。

補助の対象になるのは、福祉用具情報システム(TAIS。公益財団法人テクノエイド協会が提供するデータベース)で「介護テクノロジー」として選定された機器などの導入費です。補助率は国の要綱が下限だけを示し、実際の率は都道府県が決めます。県ごとの率・上限額・受付時期は訪問介護の記録ICT導入に使える都道府県の補助(令和8年度、3県の例)で3県の例を確認できます。

この記事が読んだのは、厚生労働省の四国厚生支局が掲載している「(別添1)介護テクノロジー導入支援事業実施要綱」の本文で、令和8年度の記載です。通知の日付と番号は、本文と掲載ページのどちらにも見当たらなかったため書いていません。

この記事で決めること

訪問介護の管理者が、介護テクノロジー導入支援事業の国の実施要綱を読み、訪問介護事業所に当たる補助率の決め方、機器ごとの基準額、補助を受けるための要件、導入後の報告の義務を、要綱の本文で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、補助を申請する前に確かめる、県の募集・対象機器・要件の準備状況の一覧を作成できる状態を目指します。

補助額の決まり方:実支出額×補助率と基準額の少ないほう

1機器の補助額は、導入費の実支出額に補助率を掛けた額と、機器の種類ごとの基準額を比べて、少ないほうです。たとえば基準額が30万円の機器に、補助率を掛けた額が35万円になっても、補助は30万円までです。

基準額は、TAISでの分類で決まります。移乗支援(装着型・非装着型)、入浴支援、介護業務支援に載るインカムは1台あたり100万円、それ以外の機器は1台あたり30万円です。介護ソフトは、次の表のとおり職員数で変わります。

表の職員数別の基準額が使えるのは、職員数によって必要なライセンス数が変わるなど合計金額が変動する契約で、介護ソフトやバックオフィスソフトだけを導入する場合です。それ以外の方式の契約は、一律250万円が基準額と書かれています。

要綱の表2・表3が定める基準額(令和8年度の記載)
対象基準額
移乗支援(装着型・非装着型)・入浴支援・インカム1台あたり100万円
上記以外の介護テクノロジー1台あたり30万円
介護ソフト・バックオフィスソフト(申請時点の職員数1〜10名)100万円
同(11〜20名)150万円
同(21〜30名)200万円
同(31名以上)、または職員数で金額が変わらない契約250万円

補助率が上がる条件:訪問介護は4つの要件

表1は、補助率を2段に分けています。要件を満たす事業所は「4分の3を下限に都道府県が設定した率」、それ以外は「2分の1を下限に都道府県が設定した率」です。入所・泊まり・居住系以外のサービスである訪問介護に当たる要件は、①②③⑤の4つです。

①は、職場環境の改善で収支が改善された場合に職員の賃金へ還元することを、導入の効果として明記することです。②は、従前の介護職員等の人員体制の効率化を行っていること、③は、利用者のケアの質の維持・向上や職員の休憩時間の確保など、負担軽減につながる取組を行う予定があることです。

⑤は、令和8年度内にケアプランデータ連携システムまたは同等のシステムを利用することです。同等のシステムとは、「居宅介護支援費に係るシステム評価検討会」で、同等の機能とセキュリティを備えると認められたものです。加入手順は訪問介護のケアプランデータ連携システム:加入手順・費用と処遇改善加算の令和8年度特例要件にあります。

入所・泊まり・居住系の要件④(委員会の設置)は、訪問介護には当たりません。

パッケージ型と、導入と一体の業務改善支援

要綱は、単体の導入のほかに「パッケージ型」の導入支援を設けています。介護業務支援に分類される機器と、連動して効果が高まる機器を一緒に入れる場合で、要綱は「介護ソフト+インカム」などを例に挙げています。補助の上限は、事業所ごとに400万〜1,000万円の範囲で都道府県が決めます。

パッケージ型で補助率の高い区分に入る条件は、訪問介護などでは、従業員がデジタル中核人材養成研修を受講していることと、令和8年度内に、ケアプランデータ連携システムなどで5事業所以上とデータ連携を行うことです。要綱は、データ連携を、異なる介護ソフトベンダーのユーザー間で居宅サービス計画書やサービス利用票のデータをやり取りする場合として想定しています。

付帯経費も、主となる機器と一緒に入れる場合に限り対象です。要綱は、Wi-Fi環境の整備(配線工事、ルーター、アクセスポイントなど)と、機器の導入に伴うPC・タブレットを例に挙げ、通信費は含まないと書いています。

導入と一体で、業務改善の支援を受けることも要件で、その費用は、実支出額と45万円の少ないほうが補助されます。支援は、生産性向上の知識を持つ第三者による助言・指導(メーカーや販売店による操作説明は含まない)か、都道府県が設ける介護生産性向上総合相談センターなどの相談・研修のいずれかです。

補助を受ける事業所の要件:訪問介護に関係する項目

要綱の5は、補助を受けるすべての事業所の要件を(ア)〜(ク)に並べています。次の表は、訪問介護の事業所に関係する項目を抜き出したものです。委員会の設置を求める(カ)のサービス一覧に、訪問介護は載っていません。

要綱5の補助要件のうち、訪問介護に関係する項目(令和8年度の記載)
項目要綱が書いていること
(ア)情報セキュリティIPAの「SECURITY ACTION」の一つ星または二つ星を宣言する。法人番号がない事業所は、代表者を個人事業主として申し込む。個人情報保護の観点から十分なセキュリティ対策を講じる
(イ)業務改善計画厚生労働省の生産性向上ガイドラインなどを参考に業務改善に取り組み、業務改善計画を作る
(エ)LIFE補助を受けた事業所は、科学的介護情報システム(LIFE)による情報収集に協力する
(オ)効果検証厚生労働省等が行う効果検証事業等に、可能な限り協力する
(キ)ケアプランデータ連携訪問介護を含む一覧のサービスは、令和8年度内にケアプランデータ連携システム(同等のシステムを含む)の利用を開始する
(ク)介護情報基盤介護WEBサービスを使う準備として、クライアント証明書の導入と端末の初期設定を整える。カードリーダーは、訪問介護などで不要と判断する場合を除いて導入する

導入後に続く報告と、併用できない補助

補助を受ける事業所は、業務改善計画を、申請先の都道府県と厚生労働省老健局高齢者支援課の介護業務効率化・生産性向上推進室に提出します。補助を受けた年度の翌年度に効果を報告し、さらに補助を受けた翌年度から3年の間、計画の内容に対する効果の報告を求められます。報告の内容と期限は、要綱では別途通知するとされています。

要綱の留意事項は、令和7年度補正予算の「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業」や経済産業省の「IT導入補助金」など、ほかの補助金で助成されたものを、この事業の補助対象外としています。ほかの補助を使う場合の考え方はデジタル化・AI導入補助金で訪問介護の記録ソフトを入れる:対象者・補助額・申請前の手続きで整理しています。

要綱は、都道府県に、見守り機器・インカム・介護ソフトを優先して補助する方針とするよう求めています。優先の度合いは県ごとに違うため、導入したい機器がこの3種類かどうかも、募集の案内で確かめてください。

申請の前に確認する順番

最初に、自分の都道府県の介護保険担当課のページで、令和8年度の募集の有無、補助率、上限額、受付期間を確かめます。要綱は都道府県が補助率と上限を決めると書いているため、国の要綱だけでは申請できるかどうかも金額も決まりません。

次に、導入したい機器がTAISで「介護テクノロジー」として選定されているかを確認します。そのうえで、SECURITY ACTIONの宣言、介護WEBサービスの利用準備(介護WEBサービスの登録手順と開始日(介護情報基盤の導入))、ケアプランデータ連携システムの利用開始の予定を、交付申請の前に整えておきます。

情報セキュリティ対策の考え方は訪問介護事業所の情報安全管理:厚労省の手引き(令和8年4月)のチェックリスト5区分で確認できます。個々の事業所が補助の対象になるかどうかは、都道府県の担当課に確認してください。この記事は、要綱の本文だけで書いており、都道府県ごとの上乗せや運用は扱っていません。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 自分の都道府県の介護保険担当課のページで、令和8年度の募集の有無、補助率、上限額、受付期間を確かめる
  2. 導入したい機器がTAISで「介護テクノロジー」として選定されているかと、基準額のどの区分に当たるかを確かめ、見積もりと照らす
  3. SECURITY ACTIONの宣言、ケアプランデータ連携システムの利用開始の予定、介護WEBサービスの利用準備を、交付申請の前に整える
  4. 導入後の業務改善計画の提出と、翌年度から3年の効果の報告を、誰がいつ行うかを決めて記録する

関連ガイドで計画をつなぐ

隣接する判断をつなぎ、記事単体で計画を止めないためのガイドです。

よくある質問

迷いやすい範囲と確認順を、質問ごとに整理します。

介護テクノロジー導入支援事業は訪問介護事業所も使えますか?

国の実施要綱は、対象を介護保険法に基づくサービスを提供するすべての事業所とし、訪問介護事業所と居宅介護支援事業所を含むと書いています。実施するのは都道府県で、募集の有無や補助率、上限額は県ごとに違うため、自分の県の案内で確かめます。

訪問介護で補助率が高い区分に入る要件は何ですか?

要綱の表1では、収支が改善した場合に職員の賃金へ還元することの明記、人員体制の効率化、ケアの質の維持・向上や負担軽減の取組の予定、令和8年度内のケアプランデータ連携システムまたは同等のシステムの利用の4つを満たすと、4分の3を下限に県が設定した率になります。それ以外は2分の1を下限とする県の設定率です。

補助を受けたあとに報告は必要ですか?

要綱は、業務改善計画を都道府県と厚生労働省の担当室に提出し、補助を受けた年度の翌年度に効果を報告することを求めています。補助を受けた翌年度から3年の間、計画の内容に対する効果の報告も求められます。内容と期限は別途通知とされています。

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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