運営 / 更新 2026-10-24
訪問介護の調理の区分:流動食は身体介護、一般的な調理は生活援助(老計10号)
訪問介護の調理は、老計第10号で3つの項目に分かれます。嚥下(飲み込み)が難しい人のための流動食などの調理は身体介護、一般的な調理と配膳・後片づけは生活援助、利用者と一緒に手助けしながら行う調理は見守り的援助として身体介護の例示に入ります。この記事は、3つの分かれ目と、そもそも対象外になる調理を整理します。
調理が出てくる3つの項目:1-1-3・1-6・2-5
身体介護の1-1「排泄・食事介助」の下に、1-1-3「特段の専門的配慮をもって行う調理」があります。通知の例は「嚥下困難者のための流動食等の調理」です(以下、平成30年4月1日適用の改正後の本文)。生活援助には2-5「一般的な調理、配下膳」があり、「配膳、後片づけのみ」と「一般的な調理」が並んでいます。
もう一つが身体介護の1-6です。改正後の1-6は、利用者と訪問介護員等が一緒に行う動作の例として、「利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う調理、配膳、後片付け(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)」を挙げています。同じ台所に立つ場面でも、3つの項目のどれで整理するかが分かれます。
| 項目 | 区分 | 通知の例示 | 分かれ目 |
|---|---|---|---|
| 1-1-3 特段の専門的配慮をもって行う調理 | 身体介護 | 嚥下困難者のための流動食等の調理 | 心身の障害や疾病等に伴って必要になる特段の専門的配慮があるか |
| 1-6 自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助 | 身体介護 | 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う調理、配膳、後片付け | 利用者が動作を行い、訪問介護員等が声かけ・見守り・必要な手助けで支えているか |
| 2-5 一般的な調理、配下膳 | 生活援助 | 配膳、後片づけのみ/一般的な調理 | 特段の専門的配慮がなく、訪問介護員等が代わりに行う家事か |
この記事で決めること
訪問介護で調理の依頼を受けたとき、身体介護(流動食など)・生活援助(一般的な調理)・見守り的援助(一緒に行う調理)のどれに当たるかと、対象外になる調理を知りたい人向け。ための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、調理の区分確認表(1枚):利用者ごとに、特段の専門的配慮の有無、動作を行う人、調理の対象、老計第10号の項目、ケアマネジャーと保険者に聞いた日と回答を作成できる状態を目指します。
身体介護になるのは「特段の専門的配慮」がある調理
1-1-3が身体介護になる理由は、通知の身体介護の定義の3つ目にあります。通知は身体介護を、身体に直接接触して行う介助、利用者と一緒に行う自立支援・重度化防止のためのサービス、そして「その他専門的知識・技術(介護を要する状態となった要因である心身の障害や疾病等に伴って必要となる特段の専門的配慮)をもって行う」サービスと定義しています。
通知の注は、入浴や整容そのものは要介護状態が解消されても必要な行為だが、それを「介助」する行為は不要になると述べ、「特段の専門的配慮をもって行う調理」についても、調理そのものは必要な行為でも、要介護状態が解消されれば、流動食等の「特段の専門的配慮」は不要になると書いています。つまり、調理の中身ではなく、介護を要する状態に伴って必要になる配慮があるかどうかが、身体介護にする理由になります。
例示は「嚥下困難者のための流動食等の調理」の1つです。刻み食やとろみをつける調理が1-1-3に当たるのか、どの程度の配慮が必要なら身体介護か、という個別の線引きは通知には書かれていません。利用者の状態、ケアプランへの位置づけ、請求の区分は、担当のケアマネジャーと保険者に確かめてください。
生活援助になるのは、特段の配慮のない一般的な調理
2-5の「一般的な調理」は、通知の生活援助の定義に沿った、家事としての調理です。生活援助は、身体介護以外の訪問介護で、掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助であって、利用者が単身、または家族が障害・疾病などのため本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行うものとされています(要件は生活援助中心型を算定できる利用者の要件で整理しています)。
「配膳、後片づけのみ」も2-5の例示です。
一方、通知の食事介助の例は、配膳から摂食介助、下膳、残滓(食べ残し)の処理、食器洗いまでを一連の流れとして並べています。食事を介助する場面の配膳・後片づけは、この流れの一部です。配膳と後片づけだけを行う場合とは、区分の見方が変わります。
一緒に行う調理は、見守り的援助として身体介護の例示に入る
訪問介護員等が代わりに調理すれば生活援助、利用者と一緒に行えば身体介護になる場合がある、というのが改正後の1-6の考え方です。通知の例は、利用者が動作を行い、訪問介護員等が安全確認の声かけ、疲労の確認、必要な手助けをするという形です。
訪問介護員等が調理を進め、利用者が横で見ているだけの場面は、この例示とは別です。一緒に行う動作を計画に書く手順や記録は、見守り的援助(老計10号1-6)で扱っています。
そもそも対象外になる調理:家族の分と、特別な手間をかける調理
指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について(平成12年11月16日老振第76号)の別紙は、一般的に介護保険の家事援助の範囲に含まれないと考えられる事例を挙げています。調理に関係するのは2つです。
1つは「利用者以外のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し」で、主として家族の利便に供する行為または家族が行うことが適当と判断される行為の例です。もう1つは「正月、節句等のために特別な手間をかけて行う調理等」で、日常的に行われる家事の範囲を超える行為の例です。
このため、同居の家族の食事を一緒に作ることや、行事のための特別な料理は、身体介護でも生活援助でも請求の対象に入れにくい行為です。同居の家族がいる場合の線は同居家族がいる利用者への訪問介護で扱っています。個別の事例がどこまで認められるかは、保険者によって運用に差があるため、ケアマネジャーを通じて確かめてください。
区分を決める手順:状態、動作の主体、対象の順に見る
調理の依頼を受けたときは、次の順で見ていくと整理しやすくなります。1つ目は、嚥下困難など、介護を要する状態に伴って必要になる特段の専門的配慮があるかです。あれば1-1-3の候補になります。
2つ目は、利用者が動作を行い、訪問介護員等が声かけや見守り、必要な手助けをする形かです。そうなら1-6の候補です。どちらでもなければ、一般的な調理として2-5の候補になります。
最後に、調理の対象が利用者本人の食事か、家族の分や行事のための特別な調理でないかを確かめます。迷う調理は訪問介護員の判断だけで決めず、サービスの内容をケアプランと訪問介護計画に書き、実際に行った内容を記録で示せるようにしておきます。老計第10号の全体像は老計10号の最新版の記事に、請求の区分の考え方は身体介護中心型と生活援助中心型の分け方の記事にあります。
資料の範囲
2026年10月24日に、老計第10号は厚生労働省掲載の改正通知(平成30年3月30日老振発0330第2号の別紙)で確認しました。老振第76号は、国立社会保障・人口問題研究所の資料集に収録された本文で確認しました。
通知は改正が重ねられるため、平成30年改正より後の改正の有無は、この記事では確認していません。現行の本文は厚生労働省と指定権者の案内で確かめてください。
報酬の単位数や、個別の利用者の調理が身体介護か生活援助かの判断は、この記事の対象外です。利用者の状態に応じた判断は、ケアマネジャーと保険者の確認事項です。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 調理を依頼された利用者ごとに、嚥下困難など介護を要する状態に伴って必要になる配慮の有無と内容を書き、流動食などの調理が老計第10号1-1-3の候補になるかを並べる
- 調理の場面ごとに、利用者が動作を行い訪問介護員等が声かけ・見守り・必要な手助けをする形か、訪問介護員等が代わりに行う形かを分け、1-6と2-5のどちらの候補かを書く
- 調理の対象が利用者本人の食事か、家族の分や正月・節句などのための特別な手間をかける調理でないかを確かめ、対象外になる行為を訪問介護計画に入れていないか点検する
- 区分に迷う調理は、ケアマネジャーと保険者に確かめた日と回答を表に残し、訪問介護計画の内容欄と実績の記録の書き方をそろえる
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。