運営 / 更新 2026-10-18
障害福祉サービスの利用者が65歳になったとき:介護保険優先の考え方と訪問介護事業所の対応
居宅介護や重度訪問介護を使ってきた障害のある人が65歳になると、介護保険の訪問介護を使う場面が出てきます。訪問介護事業所には、介護保険と障害福祉サービスのどちらが使われるのか、両方使えるのかという相談が来ます。このページは、障害者総合支援法第7条と、厚生労働省の通知・事務連絡で確認できた範囲で、介護保険が優先される範囲と併給できる場合、事業所が確認する点を整理します(個々の利用者への支給は市町村が決めます)。
障害者総合支援法第7条:介護保険の給付が優先される
障害者総合支援法第7条は、自立支援給付(居宅介護や重度訪問介護の給付を含む)について、介護保険法の介護給付など、政令で定める給付を受けられるときは、政令で定める限度で行わないと定めています。これが、障害福祉サービスより介護保険が優先される根拠です。
厚生労働省の平成19年3月28日付の通知は、この優先の対象を、介護保険の介護給付、予防給付、市町村特別給付と第一号事業としています。障害のある人も、65歳以上の人と、40歳以上65歳未満で医療保険に加入している人は、原則として介護保険の被保険者になります。40歳以上65歳未満の人は、要介護状態の原因が加齢に伴う特定疾病によるときに、介護保険の給付を受けられます。
この記事で決めること
訪問介護事業所の運営者・サービス提供責任者が、居宅介護や重度訪問介護を使っていた障害のある人が65歳になって介護保険の利用を申し込んだとき、介護保険が優先される範囲と障害福祉サービスが併給される場合を、公的資料で確かめるための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、65歳到達後の障害のある利用者の受け入れ確認メモ(現在の障害福祉サービスの種類と量、介護保険で足りない部分、担当の相談支援専門員と居宅介護支援事業所、市町村への確認事項)を作成できる状態を目指します。
介護保険を一律に優先するわけではない
同じ通知は、介護保険サービスを一律に優先して利用させるものとはしないと明記しています。市町村は、申請された障害福祉サービスの具体的な内容を本人から聴き取ったうえで、必要な支援を介護保険サービスで受けられるかを個別に判断します。
令和5年6月30日付の事務連絡は、要介護度や障害支援区分が一定以上であること、特定の障害があること、介護保険サービスの単位数に占める訪問介護の単位数が一定以上であることなど、画一的な基準だけで障害福祉サービスの利用を判断するのは適切でないとしています。介護保険への移行を検討するときは、障害の特性を考え、必要な支援を受けられるかという観点でも検討するよう求めています。
同行援護、行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援などは、介護保険にはない障害福祉サービス固有のものとして、通知で支給の対象とされています。
介護保険と障害福祉サービスを併せて使える場合
平成19年の通知は、介護保険のサービスで必要な支援を受けられると判断される場合でも、次の場合には、その限りで障害福祉の介護給付費等を支給できるとしています。一つ目は、市町村が適当と認める支給量が、介護保険の区分支給限度基準額の制約から、ケアプラン上で介護保険サービスだけでは確保できない場合です。二つ目は、利用できる介護保険の事業所が身近にない、あっても定員に空きがないなど、実際に利用するのが難しい場合です(その事情が解消するまでの間に限ります)。
三つ目は、要介護認定で非該当と判定されたなど、介護保険サービスを利用できず、なお障害福祉サービスによる支援が必要と市町村が認める場合です(介護給付費に係るサービスは、必要な障害支援区分が認定された場合に限ります)。
令和5年の事務連絡は、具体的な運用の例として、個々の障害者の障害特性を考慮し、介護保険の訪問介護の支給限度額では必要な量が足りない場合に、足りない分を居宅介護や重度訪問介護で認める例を挙げています。また、家事援助として認められる範囲の違いや、日常生活に生じるさまざまな事態に対応するための見守りなど、介護保険の訪問介護の対象とならない支援が必要と認められる場合に、介護保険の訪問介護とは別に居宅介護や重度訪問介護を認める例も挙げています。これらは例であり、実際の支給は市町村の判断です。
同じ事務連絡は、介護保険が優先されることを、介護保険だけに制限されるという意味に誤解させないよう、併給できる場合があることを利用者や関係者に案内するよう市町村に求めています。事業所が相談を受けたときも、介護保険だけになると断定せず、市町村の障害福祉の窓口への確認を促します。
65歳になる前後の流れと、事業所の確認点
要介護認定の申請は、65歳の誕生日の前日(65歳到達日)の3か月前以内に受け付け、65歳到達日に認定する運用ができると、令和5年の事務連絡は説明しています。そのため、障害福祉サービスを使っている人には、認定にかかる期間を考えて、65歳になる前の適切な時期から申請の案内をするよう、市町村に求めています。
同じ事務連絡は、指定特定相談支援事業所の相談支援専門員が、本人の了解を得て、サービス等利用計画の情報を介護保険側の居宅介護支援事業所に引き継ぐこと、介護保険のサービスが始まってからもサービス担当者会議に参加して情報を共有することを挙げています。訪問介護事業所の側では、サービス担当者会議で訪問介護事業所がすることに、相談支援専門員が出席するかを担当の介護支援専門員に確かめます。
受け入れの前に、事業所は次を確かめます。いま受けている障害福祉サービスの種類と量、介護保険の訪問介護で行える内容との差(訪問介護で行える範囲と行えない範囲)、区分支給限度基準額の中で必要な量を確保できるか、担当の介護支援専門員とケアマネジャーとの連携の窓口です。足りない部分があるときの併給は、事業所が決めず、利用者または介護支援専門員を通じて市町村に確認します。
利用料の面では、法第76条の2に、65歳に達する前に長期間障害福祉サービスの支給決定を受けていた障害者で、介護保険の相当サービスを受ける人のうち政令で定める人に、高額障害福祉サービス等給付費を支給する規定があります。令和5年の事務連絡は、対象となり得る人に市町村が制度の説明や個別の案内をすることが望ましいとしています。対象となるかどうかは本人の所得などで決まるため、事業所が判断せず、市町村の窓口を案内します。
この記事で確認した範囲
障害者総合支援法第7条と第76条の2は e-Gov 法令検索の現行条文を、平成19年3月28日付の通知と令和5年6月30日付の事務連絡は厚生労働省の公開資料の本文を、いずれも2026-10-18に確認しました。通知の別紙の図と、高額障害福祉サービス等給付費の対象要件や金額を定める政令は読んでいません。
重度訪問介護や共生型の指定の取り方は訪問介護の重度訪問介護・共生型との違いで扱っています。個々の利用者の支給の可否は、市町村の障害福祉の窓口に確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 新規の相談で、障害福祉サービス(居宅介護・重度訪問介護など)を使っているかを聞き、使っている場合は支給決定の内容(サービスの種類と時間)を利用者の同意を得て相談支援専門員から共有してもらう
- 介護保険の訪問介護で行える内容と、現在受けている支援の内容を並べ、介護保険の枠に収まらない部分(家事援助の範囲の違い、見守りなど)があるかを書き出す
- 介護保険の区分支給限度基準額の中で現在の量を確保できるかを、担当の介護支援専門員と確かめ、足りない場合は市町村の障害福祉の窓口に併給の可否を確認してもらう
- サービス担当者会議には相談支援専門員にも参加を依頼し、どの事業所がどの時間帯を担当するかを分けて、訪問介護計画と障害福祉側の計画の内容がずれないようにする
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。