運営 / 更新 2026-10-26
訪問介護の法定研修まとめ:業務継続計画・感染症・虐待防止の研修は年1回以上
訪問介護の事業者が実施する研修と訓練のうち、基準省令が義務づけるものは、業務継続計画、感染症の予防及びまん延の防止、虐待の防止の3つです。条文は「定期的に」と書くだけで、回数は解釈通知にあります。この記事は、省令の条文と解釈通知の原文をもとに、研修の種類、年1回以上という回数、新規採用時の扱い、記録を一覧にします。
研修と訓練の一覧:条文と回数の目安
訪問介護の基準省令(平成11年厚生省令第37号)で、事業者に研修や訓練の実施を求める条文は次のとおりです。条文の文言は、業務継続計画、感染症、虐待防止の3つでいずれも「定期的に」で、回数は書かれていません。回数の目安(年1回以上)は、解釈通知で示されています。
| 研修・訓練 | 条文 | 回数の目安(解釈通知) | 新規採用時 |
|---|---|---|---|
| 資質の向上のための研修の機会の確保 | 第30条第3項 | 条文に回数の定めなし | 条文に定めなし |
| 業務継続計画の研修と訓練 | 第30条の2第2項 | 研修も訓練も定期的(年1回以上) | 別に研修を実施することが望ましい |
| 感染症の予防及びまん延の防止の研修と訓練 | 第31条第3項第3号 | 研修も訓練も定期的(年1回以上) | 感染対策研修を実施することが望ましい |
| 虐待の防止の研修 | 第37条の2第3号 | 定期的な研修(年1回以上) | 必ず実施することが重要 |
この記事で決めること
訪問介護の事業者が、省令で義務づけられた研修と訓練の種類・回数・新規採用時の扱い・記録を、条文と解釈通知の原文どおりに一覧で確かめ、年間の研修計画に落とし込むための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、訪問介護の年間研修計画表(業務継続計画・感染症・虐待防止の研修と訓練の実施月、新規採用者の受講日、参加者名簿と実施記録の保管先)を作成できる状態を目指します。
新規採用時の研修:「望ましい」と「必ず」の違い
新規採用時の研修は、解釈通知の文言が3つで異なります。虐待防止は「新規採用時には必ず虐待の防止のための研修を実施することが重要」です。業務継続計画と感染症は、新規採用時に研修を実施することが「望ましい」とされています。
年間の計画を立てるときは、入職した月に虐待防止の研修を必ず入れ、感染対策と業務継続計画の研修も入職時に合わせて行う形にしておくと、記録で説明しやすくなります。
ここでいう「必ず」は解釈通知の文言です。通知は省令の趣旨を示す文書で、守らなかったときの扱いや運営指導での見られ方は、この記事では確かめていません。指定権者に確かめます。
訓練が求められるのは2つ
訓練(シミュレーション)が条文に出てくるのは、業務継続計画(第30条の2第2項)と感染症(第31条第3項第3号)の2つです。虐待防止(第37条の2第3号)は研修だけで、訓練の定めはありません。
解釈通知は、訓練も定期的(年1回以上)に行うとしています。業務継続計画では、感染症や災害が発生した場合に迅速に行動できるよう、事業所内の役割分担の確認や、実践するケアの演習などを行うとされています。
感染症の業務継続計画に係る研修は、感染症の予防及びまん延の防止のための研修と一体的に実施しても差し支えない、と解釈通知にあります。同じ日にまとめて行う計画にしても、それぞれの内容と記録がそろっていれば足ります。
記録・事業所内研修・登録型の訪問介護員
解釈通知は、業務継続計画、感染症、虐待防止のいずれの研修についても、研修の実施内容を記録することを求めています。日付、内容、参加者、使った資料を残しておくと、運営指導のときに実施の事実を示せます。
感染症の研修は、厚生労働省の研修教材などを使って事業所内で行うものでも差し支えない、とされています。虐待防止の研修も、事業所内での研修で差し支えないと解釈通知にあります。外部の研修に出さなければならないわけではありません。
感染症の研修の対象は、解釈通知が「登録訪問介護員等を含めて、訪問介護員等その他の従業者」と書いています。登録型で働く訪問介護員も、日程を組むときの対象に含めます。
虐待防止と業務継続計画の研修では、通知に登録型を明記した文言を確かめられたのは感染症だけです。条文はどちらも「訪問介護員等」に対して行うと書いています。
サービス提供責任者の研修と、資質向上のための研修
第30条第3項は、訪問介護員等の資質の向上のために、その研修の機会を確保することを事業者に求めています。研修の種類や回数の定めはありません。
サービス提供責任者の業務には、訪問介護員等に対する研修、技術指導等を実施することが入っています(第28条第3項第7号)。
年間の計画では、法定の3つの研修を実施月で固定し、そのほかの技術研修や事例検討を第30条第3項の研修として足すと整理しやすくなります。計画表の列に、どの研修がどの条文に対応するかを書いておきます。
年間研修計画の組み方(例)
次は条文や通知にある様式ではなく、上の内容を並べた組み方の一例です。まず、業務継続計画、感染症、虐待防止の3つの研修を、年1回以上の実施月で決めます。次に、業務継続計画と感染症の訓練を、それぞれ年1回以上の実施月で決めます。
続いて、登録型を含む全員が参加できるよう、複数の日に分けるか、事業所内の研修にするかを決めます。最後に、入職月に新規採用者へ虐待防止の研修を入れ、感染対策と業務継続計画の研修も合わせて行う日を決めます。
感染症の委員会は、おおむね6月に一回以上の開催と条文にあります(第31条第3項第1号)。委員会の開催月と研修の実施月を同じ表に並べると、抜けが見つかります。実施のたびに、日付・内容・参加者・資料を記録します。
この記事で確かめていないこと
解釈通知は、令和3年3月の改正時の新旧対照(介護保険最新情報Vol.934)で確かめました。令和6年以降の改正で文言が変わっていないかは確かめていないため、実施前に最新の解釈通知と自治体の案内を見てください。
認知症介護基礎研修の受講義務、特定事業所加算や処遇改善加算が求める研修、ハラスメント防止の措置、研修中の賃金の扱いは、この記事の範囲外です。自治体が独自に求める研修や、運営指導で重視される点も確かめていません。
次に知りたいこと
感染症の委員会・指針・研修の条文は「訪問介護の衛生管理等(基準第31条):感染症対策の委員会・指針・研修」で確かめられます。
業務継続計画に書く項目は「訪問介護の業務継続計画(BCP)に書く項目と厚労省ひな形」にあります。
虐待防止の措置を欠いたときの減算は「訪問介護の虐待防止・業務継続計画未策定減算(各1%)の基準」にあります。認知症介護基礎研修は「認知症介護基礎研修と訪問介護:運営基準の条文と令和6年度Q&Aで確認する受講義務の範囲」、年間の義務を月ごとに並べた表は「訪問介護の開業後の義務カレンダー(研修・訓練・処遇改善の実績報告)」です。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 業務継続計画の研修と訓練、感染症の研修と訓練、虐待防止の研修を、それぞれ年1回以上の実施月として年間の予定表に書く
- 登録型を含む全ての訪問介護員等が参加できる日程か(複数回に分ける、事業所内で実施する)を確かめ、参加者名簿を作る
- 新規採用者の入職時に、虐待防止の研修(新規採用時には必ず)と、感染対策・業務継続計画の研修(望ましい)を実施する日を決める
- 実施のたびに、日付・内容・参加者・資料を記録として保管し、委員会の議事録や指針の見直しと同じ場所にまとめる
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第28条・第30条・第30条の2・第31条・第37条の2」(省令第37号 第28条第3項第7号、第30条第3項、第30条の2第2項、第31条第3項第3号、第37条の2第3号)(確認日 2026-10-26)
- 厚生労働省老健局(独立行政法人福祉医療機構 WAM NET掲載)「介護保険最新情報Vol.934(令和3年3月16日)解釈通知の改正(新旧対照)の訪問介護「業務継続計画の策定等」「衛生管理等」「虐待の防止」」(指定居宅サービス等の解釈通知 訪問介護 業務継続計画の策定等(研修・訓練)、衛生管理等 ハ(感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練)、虐待の防止 ③(従業者に対する研修))(確認日 2026-10-26)