運営 / 更新 2026-10-24

利用者から金品の紛失を訴えられたら:基準第36条・第37条の初動

利用者や家族から「財布の中身が減った」「預けた物が見当たらない」と訴えられたとき、管理者やサービス提供責任者が最初にすることは、盗難かどうかの判断ではなく、訴えの記録と、記録の照合です。この記事は、指定居宅サービス等基準の第36条(苦情処理)と第37条(事故発生時の対応)、老企第25号の留意事項で確かめた範囲で、当日の初動を整理します。法的な責任や警察への届出は扱いません。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

まず苦情として受け付けて記録する(基準第36条)

第36条第1項は、利用者や家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するため、苦情を受け付ける窓口を設置するなど必要な措置を講じるよう定めています。同条第2項は、苦情を受け付けた場合に、その内容等を記録するよう定めています。金品の紛失の訴えは、まずこの苦情として受け付け、訴えの内容を記録します。

老企第25号は、第1項の必要な措置を、相談窓口、苦情処理の体制と手順の概要を明らかにし、利用申込者への説明文書に記載して事業所に掲示することなどと説明しています。苦情の受付の細部は訪問介護の苦情処理(基準第36条)にまとめています。

記録には、訴えを受けた日時、訴えた人、なくなったとされる物や金額、最後に見た日と場所を、聞いたとおりに書きます。盗難と決めつける言葉も、否定する言葉も、この段階では記録に入れません。

この記事で決めること

訪問介護の管理者やサービス提供責任者が、利用者や家族から金品の紛失・盗難を訴えられた当日に、苦情としての受付と記録、事故に当たる場合の連絡先、記録の照合、賠償と再発防止の順で、基準で確かめた範囲の動き方を知る。ための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、金品の紛失・盗難の訴えを受けたときの初動記録票(受けた日時・訴えた人・訴えの内容・照合した記録・連絡した先と日時・指定権者への確認結果・賠償の要否の判断・再発防止策)を作成できる状態を目指します。

盗難かどうかを決めずに、手元の記録を照合する

紛失の訴えがあった時点では、事業所が盗難の有無を断定できる材料はありません。決めつけずに、事業所に残っている記録で説明できる範囲を確かめます。

兵庫県の通知(平成16年)は、買い物代行で現金を預かるとき、預かり金、購入商品、お釣りを記載しレシートや領収書を貼った記録帳と、訪問介護記録への記載を求め、管理者とサービス提供責任者が定期的に確認するとしています。福岡市の通知(平成26年)は、事業所が預り金を管理する場合に、金銭出納帳、領収書、定期報告などの管理を求めています。どちらも自治体の通知で、全国共通の定めではありません。

訴えを受けた当日に並べる記録の例
記録確かめること
訪問介護記録訴えられた日の前後に、金銭や物に関わるサービスがあったか
買い物代行の記録帳・レシート預かり金と釣り銭、購入商品が記録で合っているか
事業所が管理する金銭出納帳(ある場合)出入金と領収書、定期報告が揃っているか
担当した訪問介護員の勤務の記録いつ誰が訪問したか

事故として扱うときの連絡・記録・損害賠償(基準第37条)

第37条第1項は、指定訪問介護の提供により事故が発生した場合に、市町村、利用者の家族、利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡し、必要な措置を講じるよう定めています。第2項は、事故の状況と事故に際して採った処置の記録、第3項は、賠償すべき事故が発生した場合に損害賠償を速やかに行うことを定めています。

条文は、金品の紛失の訴えがどの時点で「事故」に当たるかを定義していません。事故として扱う範囲と市町村への報告の要否・期限は、指定権者の基準で確かめる事項で、この記事では確認していません。

事業所のある市町村の窓口に確かめた日と回答を記録します。事故の連絡と記録の細部は訪問介護の事故発生時の対応(基準第37条)とヒヤリハット記録と事故報告書の書き方にあります。

賠償と再発防止:老企第25号が示す備え

老企第25号は、第37条の留意事項として3点を挙げています。対応方法をあらかじめ定めておくことが望ましいこと、速やかに賠償するため損害賠償保険に加入するか賠償資力を有することが望ましいこと、事故が生じたら原因を解明して再発を防ぐ対策を講じることです。

賠償すべき事故かどうかは、記録の照合と事実の確認が済んでから判断します。保険の補償の範囲は契約ごとに違うので、訪問介護の賠償責任保険の補償の確認点を参考に、加入先の窓口へ早めに相談します。

再発防止では、金銭や貴重品を預からない原則、預かる場合の記録と確認の頻度を見直します。預かりの原則と買い物代行の手順は訪問介護員の利用者の金銭・通帳の取扱いにあります。

この記事で確認した範囲

基準第36条と第37条は e-Gov の条文を2026年10月24日に、老企第25号の留意事項は厚生労働省の通知本文を同日に確認しました。自治体の通知は、兵庫県(平成16年)と福岡市(平成26年)の本文を2026年10月8日に確認した内容です。

金品の紛失の訴えが事故に当たるかの定義、盗難の有無や責任の判断、警察への届出、自治体ごとの事故報告の対象と期限は確認しておらず、扱っていません。個別の事案は、指定権者と加入する保険の窓口に確かめてください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 訴えを受けた日時、訴えた人、なくなったとされる物や金額、最後に見た日と場所を、聞いたとおりに記録する。盗難と決めつける言葉も、否定する言葉も記録に書かない
  2. 当日までの訪問介護記録、買い物代行の預かり金と釣り銭の記録帳、レシート、担当した訪問介護員の勤務の記録を並べて、記録で説明できる範囲と説明できない範囲を分ける
  3. 事故として扱うと判断した場合は、市町村、利用者の家族、居宅介護支援事業者等への連絡の日時と相手を記録する。苦情として扱う場合は、窓口の説明と苦情の内容の記録を残す
  4. 事業所の指定権者が定める事故報告の対象と期限を確かめた日と回答を記録し、賠償すべき事故かを判断する前に、加入する損害賠償保険の窓口への連絡を決める。原因を解明し、金銭や貴重品を扱う手順、記録の確認の頻度を見直して、再発を防ぐ対策を書く

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

次に読む: 訪問介護の事故発生時の対応(基準第37条):連絡・記録・損害賠償 →