運営 / 更新 2026-10-30
利用者の転居と要介護認定の引き継ぎ:法第36条の14日以内と事業所の確認
訪問介護を使っている利用者が他の市町村へ引っ越すと、利用者が被保険者として属する市町村が変わります。介護保険法第36条は、転居先の市町村が、それまでの要介護認定を認定審査会を経ずに引き継げる場合を定めています。この記事は、第36条の14日以内の申請、事業所が被保険者証で確かめること、転居先が通常の事業の実施地域の外になるときの対応を、条文で整理します。
転居先の市町村では、14日以内の申請で認定を引き継げる(法第36条)
第36条の対象は、他の市町村による要介護認定または要支援認定を受けている者が、当該市町村の被保険者になった場合です。被保険者が、資格を取得した日から14日以内に、他の市町村から交付された認定に係る事項を証明する書面を添えて申請したときは、認定審査会の審査と判定を経ることなく、書面に記載されている事項に即して認定をすることができる、と定めています。
条文は「することができる」という書き方で、審査会を省略するかどうかは転居先の市町村の取扱いです。14日を過ぎた場合や書面がない場合の扱いは、第36条には書かれていないため、利用者が期限を過ぎたときは、転居先の市町村の窓口に確かめます。
第12条第1項は、第一号被保険者に、資格の取得と喪失に関する事項を市町村へ届け出るよう求めています。第2項では世帯主が代わって届け出ることができ、第5項では、住民基本台帳法の転入の届出(一定の付記があるもの)があれば、同じ事由の届出があったものとみなされます。この記事は、第一号被保険者(65歳以上)の転居を想定しています。
この記事で決めること
訪問介護の利用者から他の市町村への転居を聞いた事業者が、介護保険法第36条の認定の引き継ぎ(14日以内の申請)と、転居後に被保険者証で確かめる点、実施地域外になるときの対応を条文で確かめる記事。ための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、利用者の転居時の確認メモ(1枚):転居日、転居先の市町村、認定の引き継ぎ申請の期限、新しい被保険者証で確かめた3点を作成できる状態を目指します。
転居後の最初の訪問の前に、新しい被保険者証で3点を確かめる
運営基準第11条第1項は、指定訪問介護事業者に、利用者が提示する被保険者証によって、被保険者資格、要介護認定の有無、要介護認定の有効期間を確かめるよう求めています。転居後の最初の訪問の前に、利用者または家族に、転居先の市町村から新しい被保険者証が交付されているかを聞き、提示を頼んで、この3点を確かめます。
引き継ぎの申請が済んでいない間に、被保険者証に認定の記載がまだない場合、訪問介護費を算定してよいかは、条文だけでは決められません。転居先の市町村に認定の状況を確かめてから、担当のケアマネジャーと相談してください。
運営基準第12条第2項は、居宅介護支援が利用者に対して行われていない等の場合で必要と認めるときに、要介護認定の更新申請が、有効期間が終わる30日前までにされるよう援助することを求めています。引き継ぎのあとの有効期間も被保険者証で確かめ、更新の時期を記録しておくと、この援助を忘れません。
転居先が通常の事業の実施地域の外になるとき
通常の事業の実施地域は、運営規程に書く項目の1つです(運営基準第29条第5号)。第10条は利用申込者への対応として書かれた条文ですが、転居先がこの地域の外になる利用者にも、考え方として参考になります。実施地域等を勘案して、自ら適切な指定訪問介護を提供することが困難と認めた場合は、居宅介護支援事業者への連絡、適当な他の指定訪問介護事業者等の紹介その他の必要な措置を、速やかに講じなければなりません。
実施地域の外でも、利用者の選定により訪問する場合は、第20条第3項で、それに要した交通費の支払を利用者から受けることができます。第4項は、あらかじめ、利用者またはその家族に、サービスの内容と費用を説明して同意を得ることを求めています。実施地域の決め方と地域外の利用者への対応は、通常の事業の実施地域の決め方にまとめています。
転居の連絡を受けたときの確認の流れ
ここまでの条文を、事業所が確かめる順に並べると、次の表になります。確認先は、条文が求める確認を、実際に誰に聞けばよいかで整理したものです。個別の利用者について算定できるかや、引き継ぎが認められるかは、転居先の市町村とケアマネジャーに確認してください。
| 確かめること | 根拠 | 確認先 |
|---|---|---|
| 転居先が通常の事業の実施地域の内か外か | 運営基準第10条・第29条第5号 | 運営規程、居宅介護支援事業者 |
| 認定を引き継ぐ申請を、資格取得から14日以内にしたか | 介護保険法第36条 | 利用者・家族、転居先の市町村 |
| 新しい被保険者証の資格・認定の有無・有効期間 | 運営基準第11条第1項 | 利用者・家族(被保険者証の提示) |
| 更新申請の時期(有効期間の終了30日前まで) | 運営基準第12条第2項 | ケアマネジャー、利用者・家族 |
| 実施地域外で訪問する場合の交通費の説明と同意 | 運営基準第20条第3項・第4項 | 利用者・家族 |
利用者が転居しても変わらないものと、変わりうるもの
訪問介護の1単位の単価は、告示で、事業所が所在する地域区分によって定められています。告示の文言に利用者の住所は出てこないため、利用者が転居しても、事業所の所在地が同じなら、地域区分と単価は変わらないと読めます。告示の表は訪問介護の地域区分と1単位の単価で確かめられます。
利用者の居住地が関わる加算は、転居先で対象になるかが変わりうるため、別に確かめます。中山間地域等に居住する利用者への加算は中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算で確かめられます。
確かめた範囲と、次に読む記事
この記事は、介護保険法の第12条・第36条と、運営基準の第10条・第11条・第12条・第20条・第29条を、2026年10月30日にe-Gov法令検索で確かめた内容です。地域区分の段落は、同じ日に厚生労働省のページで確かめた「厚生労働大臣が定める一単位の単価」の告示にもとづきます。引き継ぎの申請に使う書面の名称や様式、窓口の取扱いは市町村ごとに異なりうるため、書いていません。
次に読む記事は2本です。被保険者証の確かめ方は訪問介護の受給資格の確認手順、転居などで利用が終わるときの手続きは訪問介護の利用終了時の手続きにあります。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 転居の連絡を受けた日、転居日、転居先の住所を書き、通常の事業の実施地域の内か外かを運営規程で確かめて記す
- 転居先の市町村で資格を取得した日から14日以内に認定の引き継ぎの申請をする必要があることを利用者・家族に伝え、申請の有無を確かめた日付を残す
- 転居後の最初の訪問の前に、新しい被保険者証で被保険者資格、要介護認定の有無、有効期間を確かめ、確かめた日と内容を転記する
- 実施地域の外になる場合は、居宅介護支援事業者への連絡と、訪問を続けるか他の事業者を紹介するかの検討結果、交通費を受ける場合の説明と同意の記録を残す
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める一単位の単価」(確認日 2026-10-25)
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第11条(受給資格等の確認)」(第11条第1項・第2項)(確認日 2026-10-10)
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「介護保険法(第十二条 届出等・第三十六条 住所移転後の要介護認定及び要支援認定)」(第12条第1項・第3項、第36条)(確認日 2026-10-30)
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(第10条 サービス提供困難時の対応・第12条 要介護認定の申請に係る援助)」(第10条、第12条第1項・第2項)(確認日 2026-10-30)