運営 / 更新 2026-10-07
訪問介護の通常の事業の実施地域の決め方と地域外の利用者への対応
通常の事業の実施地域は、運営規程に書く項目の一つで、利用申込みの受付や交通費の扱いを決めるときの基準になります。ただし、地域の外の申込みを一律に断る線ではありません。この記事では、実施地域をどう決めて書くか、地域外の申込みを受けるか断るかを考える順番、地域外で受けるときの交通費の取り方を、国の運営基準と解釈通知の範囲で整理します。市町村や指定権者ごとの運用は、全国共通の部分と分けて確認します。
この記事で決めること
訪問介護事業者が、通常の事業の実施地域の定め方と、地域外の申込みを受けるか断るかの考え方、地域外で受けるときの交通費の取り方を整理するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、実施地域の定義と地域外の申込み対応を一枚にまとめた受付判断表を作成できる状態を目指します。
通常の事業の実施地域:運営規程の記載と区域の特定
通常の事業の実施地域とは、その事業所が通常の場合にサービスを提供する地域のことです。運営基準は、事業所ごとに作る運営規程に、この地域を書くよう定めています。運営規程の概要は、利用の申込みを受けたときに利用者へ渡す重要事項の説明文書にも載せるため、利用者が最初に目にする情報にもなります。
解釈通知は、この地域を、客観的にその区域が特定されるものにするよう求めています。たとえば市区町村名や町丁目の単位で書けば、利用者もケアマネジャーも、申込みの住所が地域の内か外かを同じように判断できます。「事業所から車で20分程度」のように人によって読み方が変わる書き方は避けます。
実施地域の位置づけ:目安であり地域外の提供を禁じない
解釈通知は、通常の事業の実施地域を、利用申込みに係る調整などの観点からの目安と位置づけています。そのうえで、この地域を越えてサービスを行うことを妨げるものではない、と書いています。つまり、地域外の利用者にサービスを提供すること自体は、運営基準違反にはなりません。
実施地域を決めるときは、訪問介護員が無理なく移動できる範囲を軸にします。移動の時間は報酬の対象に別枠では入らないため、地域を広げるほど1人あたりの訪問件数が下がりやすくなります。商圏の絞り方そのものは訪問介護の商圏・需要・競合の調べ方で、移動と空き時間を含む稼働の見方は稼働実績から見直す訪問介護の受入可能件数で扱っています。
地域外の申込みを受けるか断るかの検討順
利用者の住所が実施地域の外にあっても、その事実だけで断ってよいと決まるわけではありません。運営基準は、正当な理由なくサービスの提供を拒むことを禁じています。
解釈通知は、拒める正当な理由の例として、現員では申込みに応じきれない場合と、申込者の居住地が実施地域の外にある場合を挙げ、そのほか自ら適切なサービスを提供することが困難な場合も含めています。実施地域外は、拒める例の一つとして示されているものです。
実務では、次の順に考えると、断る理由と記録を揃えやすくなります。まず、運営規程の実施地域と申込者の住所を照らします。地域内であれば、地域を理由には断れません。
地域外であれば、移動時間を含めて、既存の利用者へのサービスを保ちながら受けられるかを検討します。受けられるなら、次の節の交通費の説明に進みます。受けられないなら、断る理由と検討した内容を記録します。
断る場合でも、断って終わりにはできません。運営基準は、自ら適切なサービスを提供することが困難と認めたときは、利用申込者を担当する居宅介護支援事業者への連絡、適当な他の訪問介護事業者の紹介など、必要な措置を速やかに講じるよう求めています。拒否できる理由の類型と、連絡・紹介の順番は訪問介護の提供拒否禁止と提供困難時の紹介・連絡で整理しています。
| 申込者の住所 | 断れるか | 受けるときの費用 | 記録しておくこと |
|---|---|---|---|
| 実施地域の内 | 地域を理由には断れない。人員が足りないなど別の事情は個別に検討する | 交通費は取れない(実施地域外の交通費としては取れない) | 申込日、住所、検討した内容 |
| 実施地域の外 | 例示された正当な理由に当たり得る。ただし、受けることも妨げられない | 利用者が選んだ場合に、交通費(移動に要する実費)を受け取れる | 移動時間の見込み、断る場合はその理由と連絡・紹介先 |
地域外で受けるときの交通費と事前の説明・同意
運営基準は、利用者が選んで、通常の事業の実施地域の外にある居宅でサービスを行う場合に限り、その交通費を利用者から受け取れるとしています。解釈通知は、これを移動に要する実費と説明し、保険給付のサービスと区別がつかないあいまいな名目での費用の徴収は認めないとしています。名目は「交通費」と明記します。
受け取る前に、利用者または家族へ交通費の額などを説明し、同意を得ることも定められています。額は、運営規程のその他の費用の額の欄に書く項目でもあるため、規程にない金額をその場で決めて請求しません。
同意は書面で残すと、あとで確認しやすくなります。交通費全般の扱いは訪問介護の利用料等の受領(基準第20条・交通費と保険外サービスの別料金の条件)で扱っています。
実施地域の内にある居宅への訪問では、交通費を受け取れません。地域の線の引き方は、利用者の負担にも関わります。事業所の都合で地域を狭く書いて、近隣の利用者から交通費を取ることは、この定めの趣旨と合いません。
実施地域の見直しと所在地の窓口での確認事項
実施地域を変えるときは、運営規程の変更になります。指定を受けたあとに運営規程を変更する場合は、変更届の対象になります。
届出の時期や様式は指定権者によって異なるため、変更前に所在地の指定権者の案内を確認してください。必須の記載事項は訪問介護の運営規程の必須記載事項(8項目)で確認できます。
地域外の利用者が増えてきたときは、移動時間と交通費の同意の取り方を見直す好機です。事業計画の収支への影響は事業計画シミュレーター(職員ごとの移動時間の入力)で、職員ごとの移動時間を入れて試算できます。ここで示した条文と解釈通知は全国共通の基準で、市町村独自の運用や、保険者と指定権者が異なる場合の取扱いは、このページでは確認できた範囲を超えるため、所在地の担当窓口へ確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 運営規程の通常の事業の実施地域を、市区町村などの区域で客観的に特定できる書き方に直す
- 申込者の住所を実施地域と照らし、地域外なら移動時間を含めた受入可否を検討して記録する
- 地域外で受けるときは、交通費の額を運営規程に定め、利用者または家族へ説明して同意を得る
- 断る場合は理由を記録し、居宅介護支援事業者への連絡と他の事業者の紹介を行う
一次資料
制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(確認日 2026-10-02)
- 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(平成11年9月17日老企第25号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)」(確認日 2026-10-04)