運営 / 更新 2026-10-13

訪問介護の夜間・休日オンコール(呼出待機)は労働時間か:手待時間と賃金

夜間や休日に利用者や家族からの連絡を受ける当番(オンコール)を置く訪問介護事業所では、待機している時間が労働時間に当たるのか、手当だけで足りるのかが問題になります。厚生労働省のガイドラインは、労働時間かどうかを契約や就業規則の書き方ではなく、使用者の指揮命令下に置かれているかどうかで客観的に判断するとしています。このページは、その判断軸と、実際に対応した時間の賃金、就業規則に書く事項を整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

夜間・休日に利用者や家族からの連絡を受ける当番を置く訪問介護事業所の経営者が、呼出待機(オンコール)の時間が労働時間に当たるかの判断軸と、待機手当・実際に対応した時間の賃金・就業規則に書く事項を、厚生労働省のガイドラインと労働基準法で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、オンコール当番の運用票(当番表、呼出しから応答・出勤までの時間の決まり、待機中の行動の制限、対応した時間の記録様式、手当と賃金の払い方)を作成できる状態を目指します。

待機の名前ではなく、労働から離れられるかで決まる

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、労働時間を、使用者の指揮命令下に置かれている時間と定めています。使用者の明示または黙示の指示で業務に従事する時間が労働時間です。オンコールという名前や、待機手当という名目では決まりません。

同じガイドラインは、労働時間に当たるかは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者から義務づけられ、またはこれを余儀なくされていた等の状況の有無から、個別具体的に判断するとしています。規程に「待機は労働時間としない」と書いても、それだけで決まるわけではありません。

ガイドラインは、労働時間として扱う時間の例に、使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められ、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間(いわゆる手待時間)を挙げています。オンコールの待機がこれに近いかを、次の表の事実で確かめます。

確認する事実を5つに分ける

オンコールが労働時間に当たるかは、事業所の運用の事実で決まります。次の表は、ガイドラインの手待時間の定めと、厚生労働省の検討会資料が整理した裁判例から、運用票に書いて確かめる事実を並べたもので、右の2列は事業所側の確認項目としての整理です。この表だけで個別の事案を判定するものではありません。

検討会資料が紹介する奈良県立病院産科医師事件(大阪高裁 平成22年11月16日)では、宅直(オンコール)に病院の規定がなく、医師間の自主的な取り決めで行われ、担当医の名前も病院に報告されていなかったため、明示または黙示の業務命令が認められず、宅直の時間全体は労働時間とは認められませんでした。一方、呼出しを受けて緊急に診療した場合には、時間外手当が給付されていたと整理されています。これは医療機関の例で、訪問介護の当番にそのまま当てはまるとは限りません。

オンコールの運用で確かめる5つの事実(厚生労働省ガイドラインと検討会資料、2026-10-13確認)
確かめる事実判断に関わる理由運用票に残すこと
当番を会社が命じているか使用者の明示または黙示の指示があるかは、労働時間かどうかを分ける軸。職員同士の自主的な取り決めで、会社が把握していなかった宅直は、労働時間と認められなかった例がある当番表を会社が作って職員へ示した日と、命じる旨の文書
呼出しがあれば即時に応答・出勤する義務があるかガイドラインが手待時間の例に挙げるのは、指示があれば即時に業務に従事することを求められる状態応答までの時間(何分以内)と、現場へ出勤する義務の有無
待機中の行動をどこまで制限するか労働から離れることが保障されているかを見る。制限の内容は事業所が決める事項で、資料が個別の制限を例示しているわけではない守ることを決めた項目と、決めなかった項目
実際に対応した時間の長さ電話対応や訪問をした時間は、実際に業務に従事した時間。検討会資料の事例でも、緊急に診療した場合は時間外手当が給付されていた対応を始めた時刻と終えた時刻、内容の記録
呼出しの頻度資料に頻度の基準はない。ガイドラインは状況を踏まえた個別具体的な判断としており、事業所側の確認項目として残す月ごとの呼出し回数と、夜間・休日の別

実際に対応した時間は労働時間として賃金に反映する

待機の時間全体をどう扱うかが分かれる場合でも、呼出しを受けて電話で利用者に対応した時間や、現場へ出て訪問した時間は、使用者の指示で業務に従事した時間です。労働時間として賃金に反映します。待機手当を払っていても、対応した時間の賃金の代わりになるかどうかは、手当の定めと実態から確認します。

労働基準法第32条は、休憩時間を除き1週間に40時間、1日に8時間を超えて労働させてはならないと定めています。第37条は、時間外・休日の労働に、通常の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲で政令が定める率以上の割増賃金を、午後10時から午前5時までの労働に2割5分以上の割増賃金を、それぞれ支払うよう定めています。夜間のオンコールで対応した時間は、深夜の割増に当たるかも確認します。

割増賃金の率の重なり方や、基礎となる賃金に含める手当の計算は、時間外・休日・深夜の割増賃金の計算で確認します。移動時間や記録時間など、オンコール以外の時間の扱いは雇用・勤怠と訪問介護の移動時間に整理しています。

就業規則と労働条件の書面に、当番の決まりを書く

労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、始業および終業の時刻、休憩、休日、休暇などと、賃金の決定、計算および支払の方法を就業規則に書いて、届け出ることを求めています。夜間・休日の当番を置くなら、当番の勤務の時間帯と、手当や対応した時間の賃金の払い方を、この記載事項に合わせて書きます。

常時雇用する人が10人未満の事業所でも、当番の決まりは書面にして職員へ渡しておくことが望ましいです(これは法令上の定めではなく、事業所の運用上の助言です)。就業規則と時間外労働の協定で、就業規則の作成と届出の基本を確認できます。

夜間・休日の連絡体制を置く理由が加算の要件にあるときは、体制の中身と労務の決まりを分けて考えます。緊急時訪問介護加算の算定要件と特定事業所加算の区分と要件で、加算側の要件を確認したうえで、当番の人員と手当を事業計画に入れます。

このページの範囲と、専門家へ確認すること

このページが確認したのは、厚生労働省のガイドラインの「労働時間の考え方」、検討会資料に載る裁判例の整理、労働基準法の第32条・第37条・第89条です。個々の事業所の当番が労働時間に当たるか、手当の額が適切かといった判断は、勤務の実態を見る必要があるため、このページでは行いません。

判断に迷うときは、運用票(当番表、応答までの時間、待機中の制限、対応時間の記録様式)を持って、社会保険労務士や、労働基準監督署の総合労働相談コーナーに確認します。事業所の運営に関わる届出先や自治体ごとの違いは、指定権者に確認してください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 夜間・休日の連絡当番を誰が・何時から何時まで・どの方法で受けるかを決め、呼出しがあったとき何分以内に応答するか、現場へ出勤する義務があるかを書く。会社が命じる当番か、職員同士の自主的な取り決めかも、はっきり分けて残す
  2. 待機中に職員が守ることを洗い出す。自宅にいなければならないか、飲酒や外出が禁じられているか、すぐ出られる距離にいる必要があるか。制限が重いほど、労働から離れることが保障されていない時間に近づくので、その内容を運用票に書く
  3. 呼出しを受けて電話対応や訪問をした時間を、始まった時刻と終わった時刻で記録する様式を作る。この時間は労働時間として賃金に反映し、時間外・深夜に当たるときは割増賃金を支払う準備をする。待機そのものの時間をどう扱うかは、運用票の内容を持って社会保険労務士や労働基準監督署の総合労働相談コーナーで確認する
  4. 待機手当の有無と額、対応時間の賃金の払い方、割増賃金の扱いを就業規則に書く(常時10人以上の事業所は届出も必要)。10人未満でも、労働条件通知書と同じ内容を運用票に書いて職員へ渡す

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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