運営 / 更新 2026-10-17

介護保険料の滞納による給付制限と訪問介護事業所:支払方法の変更・一時差止・給付額の減額

利用者が介護保険料を滞納すると、市町村が被保険者証に記載を入れ、訪問介護の費用の払い方や保険給付の額が変わることがあります。この記事は、介護保険法第66条・第67条・第69条と施行規則で、支払方法の変更、保険給付の一時差止、給付額の減額の3つの仕組みと、訪問介護事業所が被保険者証で確かめる点を整理します。個別の利用者がどれに当たるかは市町村が判断するため、この記事では確定しません。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

保険料滞納で変わる3つの措置:支払方法の変更・一時差止・給付額の減額

対象は、保険料を滞納している第一号被保険者(市町村の区域内に住所を有する65歳以上の人、法第9条第1号)の要介護被保険者等です。措置は滞納の期間に応じて3つに分かれ、市町村が被保険者証への記載や支払の差止として行います。事業所が行う措置ではなく、事業所は被保険者証の記載を確認して対応を合わせる立場です。

支払方法の変更は、保険料の納期限から1年間(施行規則第99条)納付しないときの措置です。市町村は被保険者証の提出を求め、支払方法変更の記載をします(法第66条第1項)。

記載がある間は、居宅サービスの費用を市町村が事業者へ直接支払う仕組み(法第41条第6項)が適用されません(同条第4項)。1年の期間が経過する前でも、特別の事情がなければ記載できます(同条第2項)。

保険給付の一時差止は、納期限から1年6月間(施行規則第103条)納付しないときの措置で、保険給付の全部または一部の支払が一時差し止められます(法第67条第1項)。差し止める額は滞納額に比べて著しく高額にならないようにします(施行規則第105条)。支払方法変更の記載を受けている人がなお納付しないときは、差し止めた額から滞納額を控除できます(法第67条第3項)。

給付額の減額は、保険料を徴収する権利が時効によって消滅した期間(保険料の時効は2年、法第200条第1項)があるときの措置です。要介護認定などの際に、被保険者証へ給付額減額等の記載がされます(法第69条第1項)。

記載された減額期間中に居宅サービスを使うと、1割負担の給付割合を示す「百分の九十」が「百分の七十」に読み替えられ(同条第3項)、2割負担の人は「百分の八十」が「百分の七十」になります(同条第4項)。高額介護サービス費なども支給されません(同条第1項)。

保険料滞納に伴う3つの措置の比べ方(条文の整理)
措置きっかけ利用者への影響根拠
支払方法の変更納期限から1年間、保険料を納付しない被保険者証に記載された間は、市町村が事業者へ直接支払う仕組みが適用されない法第66条、施行規則第99条
保険給付の一時差止納期限から1年6月間、保険料を納付しない保険給付の全部または一部の支払が差し止められ、なお納付しないと滞納額が控除されることがある法第67条、施行規則第103条・第105条
給付額の減額保険料を徴収する権利が時効(2年)で消滅した期間がある減額期間中の給付割合が下がり、高額介護サービス費などが支給されない法第69条、第200条

この記事で決めること

訪問介護事業所の管理者や事務担当者が、利用者の被保険者証に支払方法変更や給付額減額の記載があるとき、どの措置で何が変わるか、事業所が何を確かめて記録するかを、介護保険法と施行規則で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、被保険者証の記載確認表(支払方法変更・給付額減額の記載の有無、市町村への確認事項、証明書の交付記録)を作成できる状態を目指します。

措置にならない場合と、記載が消える場合

滞納に災害その他の特別の事情があると市町村が認めるときは、支払方法の変更も一時差止も行われません(法第66条第1項、第67条第1項)。支払方法の変更について施行規則第100条は、その事由に、世帯の生計を主として維持する人の収入が事業の休廃止・事業の著しい損失・失業などで著しく減少したこと、不作・不漁などで著しく減少したこと、被保護者であること(記載の原因となる滞納の納期限に生活扶助を受けていなかった場合に限る)、原子爆弾被爆者に対する援護の医療給付を受けることとなったこと、の4つを挙げています。一時差止の事由は施行規則第104条が第100条の第1号から第3号までと定めているため、4つ目は含まれません。

支払方法変更の記載は、滞納している保険料を完納したとき、または滞納額が著しく減ったときなどに消除されます(法第66条第3項)。特別の事情があって消除を受けるときは、被保険者証と、その事情を証する書類を市町村に提出します(施行規則第102条)。事業所が利用者に「滞納しているから措置される」と告げるのは、判断が市町村にあるため避け、記載の有無は被保険者証で確認します。

市町村が被保険者証の提出を求める手続は、施行規則第101条に定められています。必要があると認めるときは、書面で通知して被保険者証の提出を求め、記載を行うことができます(同条第2項)。利用者から「市町村から被保険者証を出すよう言われた」と聞いたときは、そのまま措置の話とみなさず、市町村の通知の内容を確認してもらいます。

訪問介護事業所が被保険者証で確かめることと、利用料の扱い

訪問介護事業者は、サービス提供の開始時に、被保険者証で被保険者資格・要介護認定の有無と有効期間を確かめます(基準第11条)。確認の手順は訪問介護の受給資格の確認手順:被保険者証・認定有効期間・負担割合証・給付制限にあります。支払方法変更や給付額減額の記載があるかも、同じ機会に確かめて記録に残すと、後の利用料の扱いを説明しやすくなります(運用の提案)。

支払方法変更の記載がある間は、市町村が事業者へ直接支払う仕組みが使えないため、法定代理受領サービスに該当しない指定訪問介護として扱うことになります。この場合も、利用者から受け取る利用料と居宅介護サービス費用基準額との間に不合理な差額を生じさせてはならず(基準第20条第2項)、利用料の支払を受けたら、提供内容と費用の額を書いたサービス提供証明書を利用者へ交付します(基準第21条)。

領収証の交付は法第41条第8項に基づきます。制度の全体は訪問介護の法定代理受領の要件と利用者への説明(基準第15条)で整理しています。

記載があるときの利用料の具体的な受け取り方や請求の方法は、市町村の運用や居宅介護支援事業所の調整で異なる部分があるため、市町村とケアマネジャーに確かめてから利用者へ説明します。給付額減額の記載がある利用者は、減額期間中の給付割合が通常と異なるため、利用者負担の計算や国保連への請求の扱いを、市町村・国保連の案内で確認します。

被保険者証の記載を見つけたときの確認表
確認すること確認先記録に残すこと
支払方法変更の記載の有無と日付被保険者証記載の有無・記載日・確認した日
給付額減額等の記載の有無と減額期間被保険者証減額期間の始期と終期・確認した日
記載があるときの利用料の受け取り方・請求方法市町村の介護保険担当・居宅介護支援事業所確認した日・相手・内容
サービス提供証明書と領収証の交付事業所内の手順交付日・利用者ごとの交付記録

起こりやすい失敗:記載の見落とし、事業所の独自判断、未収金との混同

多いのは、認定の更新や負担割合証の切替で被保険者証を見るときに、記載の確認を落とすことです。支払方法変更の記載は、認定の結果を被保険者証に記載する際に行うと定められている(施行規則第101条第1項)ため、認定の更新や区分変更のたびに、被保険者証で確かめる手順を確認表に入れておくと見落としを防げます(運用の提案)。

もう一つは、事業所が記載の有無から利用者の滞納状況を推測して、サービス提供の可否や利用料の扱いを独自に決めてしまうことです。措置の適用は市町村の判断で、事業所は記載の有無と市町村の案内に沿って対応します。利用者から利用料の支払が滞る場合は、保険料の滞納とは別の論点なので、訪問介護の利用者負担分の未収金:提供拒否・ケアマネ連絡・記録の確認の手順で扱います。

次に読む記事

次に読む記事は3本です。被保険者証と負担割合証の確認手順は訪問介護の受給資格の確認手順:被保険者証・認定有効期間・負担割合証・給付制限、利用者の月額負担の上限は訪問介護の利用者負担の月額上限(高額介護サービス費):申請と事業所の説明、ケアマネジャーとの連絡は訪問介護のサービス提供・ケアマネ連携・月次報告で確認できます。

この記事は、介護保険法と施行規則の条文を整理したもので、個別の利用者に措置が適用されるか、適用後の利用料の具体的な扱いを確定するものではありません。法令は改正されることがあり、取扱いは市町村で異なる部分があるため、実際の対応は市町村の介護保険担当に確認してください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. サービス開始時と認定の更新・区分変更のたびに、被保険者証で支払方法変更と給付額減額等の記載の有無を確かめ、確認日と記載日を利用者ごとの記録に残す
  2. 記載があれば、利用料の受け取り方と請求方法を市町村の介護保険担当と居宅介護支援事業所に確かめ、確認した相手と内容を記録する
  3. 記載がある間に利用料の支払を受けたら、提供内容と費用の額を書いたサービス提供証明書と領収証を交付し、交付日を記録する
  4. 措置の適用は市町村が判断するため、事業所は滞納状況を推測せず、記載の有無と市町村の案内に沿って対応する。未収金は別の手順で扱う

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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