運営 / 更新 2026-10-11
訪問介護の利用者負担分の未収金:提供拒否・ケアマネ連絡・記録の確認
利用者負担分の支払が滞ったとき、事業所がまずすることは、未収の事実と連絡の経過を記録し、担当の居宅介護支援事業者(ケアマネジャーの事業所)へ連絡することです。サービスを続けるか断るかは、運営基準第9条の「正当な理由」に当たるかで決まり、国の通知が挙げる例に未収は書かれていません。このページは、督促の文面や法的な回収ではなく、継続の判断材料と記録を整える手順を扱います。
この記事で決めること
利用者負担分の未収金が出た訪問介護事業所が、運営基準第9条・第10条・第14条・第19条・第39条に沿って、サービス継続の判断材料、ケアマネジャーへの連絡、未収の経過の記録を整理するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、利用者負担分の未収経過記録表(請求月・未収額・連絡日と相手・回答・居宅介護支援事業者への連絡・指定権者への確認)を作成できる状態を目指します。
未収が出ても、提供拒否の判断は第9条の枠で考える
指定居宅サービス等の運営基準第9条は、指定訪問介護事業者が正当な理由なく提供を拒んではならないと定めています。老企第25号は、提供を拒める正当な理由を、事業所の現員から申込みに応じきれない場合、居住地が通常の事業の実施地域外である場合、その他自ら適切な指定訪問介護を提供することが困難な場合としています。
この例示に、利用者負担分の未払いは書かれていません。同時に、未払いを理由に断ってよいと読める記述も、断ってはならないと読める記述も、今回確認した条文と通知からは見つかりませんでした。そのため、未収を理由にサービスを断るかどうかは、事業所の事情と未収の経過を記録したうえで、所在地の指定権者へ確認します。
断らざるを得ない状況になったときは、第10条により、居宅介護支援事業者への連絡、他の事業者の紹介など必要な措置を速やかに講じます。第10条と例示の全体は訪問介護の提供拒否禁止と提供困難時の紹介・連絡で確認できます。
未収の事実と連絡の経過を、利用者ごとに残す
第20条第1項は、法定代理受領サービスに当たる訪問介護を提供したとき、事業者が利用者から、費用基準額から居宅介護サービス費の額を引いた額の支払を受けると定めています。この支払が滞ったかどうかは、請求した月、請求額、入金額、未収額を利用者別に台帳へ書いて確認します。領収の扱いは訪問介護の利用料等の受領(基準第20条・交通費と保険外サービスの別料金の条件)で確認できます。
連絡の記録は、連絡した日、方法(電話・訪問・書面)、相手(本人・家族)、回答を1行ずつ書きます。確認できた事実と、担当者が受けた印象は別の欄にします。後から経過を説明するとき、事実だけで時系列を追えるようにするためです。
| 項目 | 書くこと | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 請求と入金 | 請求月、請求額、入金額、未収額 | 請求書の控え、入金記録、領収の記録 |
| 連絡の経過 | 連絡日、方法、相手、回答 | 訪問記録、電話の記録、書面の控え |
| 居宅介護支援事業者への連絡 | 連絡日、相手の事業所と担当者、伝えた内容、回答 | 連絡の記録、サービス担当者会議の記録 |
| サービス継続の判断材料 | 現員の体制、実施地域など第9条の例示に当たる事情と、未収だけの事情を別の行に書く | 勤務表、運営規程、契約書 |
| 指定権者への確認 | 確認した日、質問、回答、担当部署 | 窓口でのやり取りの記録 |
居宅介護支援事業者へは、判断の前に連絡する
第14条第1項は、訪問介護の提供にあたって、居宅介護支援事業者その他の保健医療サービスや福祉サービスを提供する者との密接な連携に努めることを求めています。未収が続いていることは、ケアプラン全体の見直しや、利用者・家族の状況の把握にも関わるため、事業所だけで抱えず、担当のケアマネジャーに伝えます。
連絡の内容は、未収の事実(月と額)、これまでの連絡の経過、事業所が確認したい点に絞ります。利用者の生活状況を推測で書かず、本人や家族から聞いた内容と確認できた事実を分けます。ケアマネジャーへの連絡の仕方は訪問介護とケアマネジャーの連携で整理しています。
第14条第2項は、提供を終えるときに、利用者や家族へ適切な指導をし、居宅介護支援事業者へ情報を提供するよう努めることを求めています。サービスを終了する場合にも、連絡の日と内容を記録に残します。
契約書と重要事項説明書、記録の保存を確かめる
第8条第1項は、提供の開始にあたって、運営規程の概要、訪問介護員等の勤務の体制その他の重要事項を記した文書を交付して説明し、同意を得ることを求めています。利用料の支払の時期や方法を契約書と重要事項説明書にどう書いているか、利用者・家族に説明した記録があるかを、未収が出る前に見直します。
身元保証人や連帯保証人がいないことだけを理由にした断りは、別の論点です。通知の扱いは身元保証人がいない人の訪問介護の申込みと、断る前に確認することで確認できます。
第39条第2項は、提供した具体的なサービスの内容等の記録などを、その完結の日から2年間保存することを定めています。この記事は国の基準の条文を確認したものなので、所在地の指定権者の案内もあわせて確認します。保存の考え方は記録の保存義務・保存期間にあります。
このページが判断しないこと
督促状の文面、法的な債権回収の手続き、消滅時効、連帯保証人への請求、未収を理由に提供を断ってよいかの個別の適否は、このページでは判断しません。法的な手続きは弁護士等へ、提供拒否の扱いは指定権者へ、確認した日と回答を記録して確認します。利用者の氏名や住所、未収額などの個人情報は、このサイトに入力しません。
利用料の領収証の交付と記載
利用者負担分を受け取るときは、領収証を交付し、介護報酬の額とその他の費用を分けて書きます。条文と記載する区分は、訪問介護の利用料の領収証で確認できます。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 請求月、請求額、入金済み額、未収額を利用者別に台帳へ書き、領収の記録と照合する
- 利用者・家族へ連絡した日、方法、相手、回答を時系列に残し、推測と確認できた事実を分ける
- 居宅介護支援事業者へ連絡した日と内容を残し、サービス継続の判断に使う事情を、運営基準第9条の例示に当たるものと未収だけのものに分けて書く
- 未収を理由にサービスを断ってよいか迷う場合は、指定権者へ確認した日・質問・回答を残し、督促や回収の手続きは弁護士等へ確認する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(確認日 2026-10-02)
- 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(平成11年9月17日老企第25号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)」(確認日 2026-10-04)