運営 / 更新 2026-10-17
小規模多機能型居宅介護の指定基準:市町村が指定、員数・管理者・登録定員
小規模多機能型居宅介護は、訪問介護とは指定する者が違い、市町村長が指定する地域密着型サービスです。この記事は、訪問介護の事業者が小規模多機能型居宅介護への事業の広がりを考えるときに、介護保険法第78条の2と、指定地域密着型サービス基準第63条〜第67条を読み、従業者・管理者・登録定員・設備を訪問介護の基準と比べるための整理です。指定の申請手順、報酬、個別の事業所が基準を満たすかの判断は扱いません。
指定するのは市町村長:効力はその市町村の被保険者に限られる
訪問介護は都道府県知事が指定しますが、小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスで、指定は市町村長が行います。介護保険法第78条の2第1項は、指定は事業所ごとに行い、指定をする市町村長がその長である市町村が行う介護保険の被保険者への給付について効力を有すると定めています。
第4項は、申請者が市町村の条例で定める者でないとき、従業者や人員が市町村の条例で定める基準を満たしていないとき、事業所が市町村の区域の外にあって所在地の市町村長の同意を得ていないときなどは、指定をしてはならないと定めています。申請できる者の条件と人員の基準は市町村の条例が定める部分があり、全国共通の基準省令に加えて、事業所を置く市町村の担当窓口に確かめる必要があります。
この記事は、全国共通の基準省令(指定地域密着型サービス基準)の部分だけを扱います。市町村の条例の内容や公募の有無は読んでいないため、書いていません。
この記事で決めること
訪問介護の事業者が小規模多機能型居宅介護への広がりを考えるときに、指定する市町村、従業者・管理者・登録定員・設備の基準を条文で確かめ、訪問介護の基準との違いと自社で足りない点を洗い出すための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、小規模多機能型居宅介護の基準チェック表(事業所の所在する市町村と担当窓口・夜間及び深夜の体制・看護師または准看護師の候補・介護支援専門員の候補・管理者と代表者の研修の修了状況・登録定員の案・宿泊室の見込みの広さ・市町村に確かめた日と回答)を作成できる状態を目指します。
従業者の員数:通い3人に1人以上、訪問1人以上、夜間の体制、看護師または准看護師
基準第63条第1項は、夜間及び深夜以外の時間帯について、常勤換算方法で、通いサービスの提供に当たる者を利用者の数が3又はその端数を増すごとに1以上、訪問サービスの提供に当たる者を1以上と定めています。利用者の数は前年度の平均値で、新規に指定を受ける場合は推定数です(第2項)。
夜間及び深夜の時間帯は、夜間及び深夜の勤務に当たる者を1以上、宿直勤務に当たる者を必要な数以上置きます。宿泊サービスの利用者がいない場合で、夜間及び深夜を通じて訪問サービスを提供するための連絡体制を整備しているときは、これらを置かないことができます(第5項)。
従業者のうち1以上は常勤であること(第3項)、1以上は看護師または准看護師であること(第4項)も定められています。訪問介護の人員の枠組みにない看護職員の確保が必要になります。
さらに第10項は、居宅サービス計画と小規模多機能型居宅介護計画の作成に専ら従事する介護支援専門員を置くと定め、第11項で、その介護支援専門員は別に厚生労働大臣が定める研修を修了している者としています。利用者の処遇に支障がない場合は、事業所の他の職務に従事できます。サテライト型には本体事業所との関係で例外がありますが、この記事では読んでいません。
管理者と代表者:認知症の介護の経験と研修の修了
基準第64条第1項は、事業所ごとに専らその職務に従事する常勤の管理者を置くと定め、管理上支障がない場合は、他の職務や他の事業所、施設等の職務に従事できるとしています。ここまでは訪問介護の管理者と同じ書き方です。
違いは第3項です。管理者は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、指定認知症対応型共同生活介護事業所などの従業者、または訪問介護員等として3年以上認知症である者の介護に従事した経験があり、別に厚生労働大臣が定める研修を修了している者でなければなりません。訪問介護員等としての経験が数えられる点は、訪問介護の事業者にとって確かめる価値があります。
第65条は、事業者の代表者にも、認知症である者の介護に従事した経験または保健医療サービス・福祉サービスの経営に携わった経験があり、別に厚生労働大臣が定める研修を修了していることを求めています。研修の内容と受講できる機会は、この記事では確認していません。
登録定員と設備:登録29人以下、宿泊室は1室7.43平方メートル以上
基準第66条第1項は、登録定員を29人以下(サテライト型は18人以下)と定めています。第2項は、通いサービスの利用定員を登録定員の2分の1から15人まで、宿泊サービスの利用定員を通いサービスの利用定員の3分の1から9人までの範囲で定めるとしています。登録定員が25人を超える場合の通いサービスの利用定員は条文の表で決まりますが、この記事では表を読んでいません。
基準第67条第1項は、居間、食堂、台所、宿泊室、浴室、消火設備その他の非常災害に際して必要な設備を備えると定めています。第2項は、宿泊室を1室の定員1人(処遇上必要な場合は2人)、1室の床面積7.43平方メートル以上とし、個室以外の宿泊室を設ける場合は合計面積をおおむね7.43平方メートルに宿泊サービスの利用定員から個室の定員数を減じた数を乗じた面積以上にして、利用者のプライバシーが確保された構造にするとしています。
第4項は、利用者の家族や地域住民との交流の機会が確保される観点から、住宅地または住宅地と同程度の地域にあることを求めています。訪問介護の事務所の設備(専用の区画)に比べて、立地と宿泊のための建物の要件が加わります。
訪問介護の基準との比較
指定する者、人員、管理者の要件、定員、設備のいずれも、訪問介護の基準とは構成が異なります。
| 項目 | 小規模多機能型居宅介護 | 訪問介護 |
|---|---|---|
| 指定する者 | 市町村長。その市町村の被保険者への給付についてのみ効力(法第78条の2第1項) | 都道府県知事 |
| 従業者 | 通い3人又はその端数ごとに1以上、訪問1以上、夜間・宿直の体制。1以上は常勤、1以上は看護師又は准看護師(第63条) | 訪問介護員等を常勤換算方法で2.5以上(居宅サービス基準第5条第1項) |
| 介護支援専門員 | 計画の作成に専ら従事する者を置く。研修の修了が要る(第63条第10項・第11項) | 置く定めなし。サービス提供責任者を置く(居宅サービス基準第5条第2項) |
| 管理者 | 専らその職務に従事する常勤。認知症の介護に3年以上従事した経験と研修の修了(第64条) | 専らその職務に従事する常勤。資格の定めなし(居宅サービス基準第6条) |
| 定員 | 登録定員29人以下(第66条) | 定員の定めなし |
| 設備 | 居間・食堂・台所・宿泊室・浴室等。宿泊室は1室7.43平方メートル以上(第67条) | 専用の区画と必要な設備及び備品等(居宅サービス基準第7条) |
訪問介護の事業者が確かめる順番
以下は条文の定めではなく、事業所内の進め方の例です。まず、事業所を置く予定の市町村の担当窓口に、申請できる者の条件と公募の有無を確かめます。市町村の条例と運用が、広がれるかどうかを左右するためです。
次に、看護師または准看護師、介護支援専門員、研修を修了した管理者・代表者を確保できるかを整理し、宿泊室を含む建物の見込みを書きます。建物の取得や賃借の費用、報酬の仕組みはこの記事の範囲外です。
ほかのサービスとの指定の主体と人員の比べ方は訪問介護から広げる5サービスの比較:指定の主体・人員・管理者の兼務で、訪問介護自体の人員基準は訪問介護の人員基準(必要人数・常勤換算2.5以上・サービス提供責任者・管理者の兼務)で確認できます。
同じく併設を考えやすい訪問看護の基準は訪問看護ステーションの指定基準:看護職員の員数・管理者・設備(基準第60条〜第62条)で、訪問入浴介護の基準は訪問入浴介護の指定基準:看護職員・介護職員の員数・管理者・設備(基準第45条〜第47条)で整理しています。
同じ認知症の利用者に関わる地域密着型サービスの認知症対応型共同生活介護の基準(共同生活住居・計画作成担当者・夜勤)は認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の指定基準:共同生活住居・計画作成担当者・夜勤で確認できます。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 事業所を置く予定の市町村を決め、指定の担当窓口に、申請できる者の条件(市町村の条例)と公募の有無を確かめて、確かめた日と回答をチェック表に書く
- 通いサービス・訪問サービス・夜間及び深夜の勤務・宿直に必要な従業者の候補を書き、そのうち常勤1以上と、看護師または准看護師1以上を確保できるかを確かめる
- 居宅サービス計画と小規模多機能型居宅介護計画の作成に専ら従事する介護支援専門員の候補と、管理者・代表者に求められる経験と研修の修了状況を書く
- 登録定員の案(29人以下)と、宿泊室の数と1室の床面積(7.43平方メートル以上)の見込みを整理し、チェック表を持って市町村の担当窓口に相談して、確かめた日と回答を記録する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。