運営 / 更新 2026-10-21
訪問介護員の予防接種・体調不良時の就業停止・体液に触れたときの受診
訪問介護員は、利用者の間を移動して複数の人に接するため、自分が感染症を持ち込む側にならない備えが必要です。厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き 第3版」(令和5年9月)は、職員の健康管理として、入職時の予防接種歴などの確認、ワクチンによる予防、感染を疑う症状があるときの就業停止の検討、利用者の体液に触れる事故への備えを挙げています。利用者宅での手洗いや防護具の使い方は訪問介護の感染対策の手引きで扱い、このページは職員自身の側を手引きの記載で確認します。
入職時に確認する予防接種歴・既往・抗体価
手引きは、職員の入職時に、麻しん、風しん、B型肝炎などの感染症の既往、予防接種の状況、抗体価の状況を確認しておくと、感染症が流行したときに役立つことがあると書いています。外国人職員については、国によって定期接種の制度や接種状況が異なることに留意するとされています。
予防できる感染症のワクチンについては接種を勧奨するとされ、常勤雇用される人については、雇入れ時の健康診断として胸部エックス線検査を行うことになっていると、労働安全衛生規則を挙げて書かれています。健康診断の対象や項目は訪問介護の従業者の健康診断で整理しています。
この記事で決めること
訪問介護事業所の管理者が、ヘルパー自身が感染症の媒介者にならないために、入職時の予防接種歴の確認、感染を疑う症状があるときの就業停止の検討、利用者の血液等の体液に触れた事故への備えを、厚生労働省の感染対策の手引き第3版の職員の健康管理の章で確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、ヘルパーの感染症への備えメモ(入職時の予防接種歴の確認欄・症状があるときの連絡先と就業停止の扱い・体液に触れたときの受診先)を作成できる状態を目指します。
ワクチンによる予防:手引きが推奨として示す内容
手引きは、ワクチンで予防できる病気について、職員は可能な限り予防接種を受け、施設や事業所内で感染症を媒介する者にならないようにすることが重要だと書いています。ワクチンにアレルギーがあって接種できない人や、接種しても免疫がつかない人もいるため、接種を受けられない人には一般的な健康管理の強化が求められるとされています。
手引きは、環境感染学会の「医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版」の推奨として、インフルエンザワクチンは毎年の接種、B型肝炎ワクチンは医療処置をする人が採用時までに接種すること、麻しん・風しんワクチンは、かかったことがなく接種もしていない場合に入職時までの接種が推奨されると載せています。感染歴や接種歴がはっきりしない場合は、抗体検査で免疫の有無を確認しておくことが望ましいとされています。これらは医療関係者向けのガイドラインの推奨を手引きが引用したもので、訪問介護員への接種を事業所に義務づける規定ではありません。
事業所が予防接種の機会を提供する場合について、手引きは、接種の意義、有効性、副反応の可能性を十分に説明して職員の同意を得たうえで、積極的に機会を提供し、希望する職員が円滑に接種できるよう配慮するとしています。個別の職員に接種が必要かどうかは、医師に確認する事項です。
| ワクチン | 手引きが示す推奨 |
|---|---|
| インフルエンザ | 毎年接種する |
| B型肝炎 | 医療処置をする人は採用時までに接種する |
| 麻しん・風しん | かかったことがなく接種もしていない場合は、入職時までに接種する。感染歴や接種歴が不明なら抗体検査で免疫の有無を確認する |
感染を疑う症状があるときの就業停止
手引きは、職員が感染症を疑う症状を呈した場合には、事業所の実情を踏まえたうえで、感染力がなくなるまで就業停止を検討する必要があると書いています。感染した状態で働くと、病原体を利用者や他の職員に広げるリスクが極めて高く、完治するまで休養させることは本人の回復と感染経路の遮断に有効だとされています。
あわせて手引きは、就業の停止は就業規則との整合をはかるよう留意する必要があるとしています。休ませる場合の賃金の扱いは手引きには書かれていないため、就業規則に定めておくか、労働基準監督署に確認します。感染経路ごとの予防策の項では、空気感染が疑われる場合は職員は原則として出勤しない、飛沫感染が疑われる場合は職員は出勤しないと書かれています。
職員の家族が感染している場合について、手引きは、職員自身も健康に気を配って早めに管理者へ相談すること、症状があればすぐ受診すること、症状がなくても潜伏期の可能性があるため一定期間は体温測定やマスク着用を徹底することを挙げています。必要に応じて、休暇の取得や、利用者と接しない部署への一時的な配置換えを調整するとされています。訪問介護事業所では配置換え先が限られるため、サービス提供責任者の代替や訪問の組み替えを事前に考えておくとよいでしょう(この部分は手引きの記載ではなく、本サイトの提案です)。
利用者の血液・体液に触れたときの備えと労災保険
手引きは、ワクチンのない感染症や、ワクチンがあっても接種できない場合があることから、職員が利用者の血液等の体液に直接触れる事例に備えた職業感染対策も必要だとしています。例として、利用者に職員が噛まれてけがをした場合、利用者の血液等の体液が職員の目に入った場合、医療処置の際に針刺し切創があった場合を挙げ、緊急性があるので直ちに医師の診察を受ける必要があるとしています。
管理者には、感染症発生時の緊急報告の体制と、医師による適切な処置(感染リスクの評価、曝露部位の洗浄、予防薬の投与の必要性の判断、予防薬の投与、経過観察、治療)を仰ぐ体制を整えておくことが求められています。初動がその後の流れに大きく影響するため、いつでも誰でも動けるよう準備しておくとされています。
また、業務で利用者の血液等の体液に触れたことにより、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV感染症などに感染した場合の治療、検査、予防薬の投与は、労災保険の給付対象となる場合があると手引きは書いています。対象になるかどうかの判断は労働基準監督署の事項です。労災で休むときの給付は訪問介護員が労災で休むとき、報告の手続きは労働者死傷病報告で確認できます。
事業所で決めておくこと
事業所で決めておくと運用しやすいのは3点です。入職時の確認欄(既往・接種歴・抗体価)、症状があるときの連絡先と就業停止の扱い、体液に触れた事故が起きたときの報告先と受診先を、就業規則や研修資料に書いておきます(本サイトの整理例で、手引きが様式を定めているわけではありません)。事業所の感染症対策の委員会・指針・研修は訪問介護の衛生管理等で扱っています。
個別の職員の出勤停止の可否、接種の要否、事故後の治療の判断は、医師、保健所、労働基準監督署などに確認してください。このページの内容は手引きの記載の要約であり、個別の事案への助言ではありません。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 入職時に、麻しん・風しん・B型肝炎などの既往、予防接種の状況、抗体価の状況を本人に確認し、接種歴が不明な人には医療機関での抗体検査や接種を勧める
- 体調不良や家族の感染を管理者へ早めに連絡する経路と、症状があるときの就業停止の扱いを、就業規則と照らして決めておく
- 利用者に噛まれた、体液が目に入った、針刺しをしたなどの事故が起きたときの報告先と、直ちに受診する医療機関を決めて、全員に周知する
- ワクチン接種の機会を提供する場合は、意義・有効性・副反応を説明して同意を得る手順を決め、接種できない人には一般的な健康管理を強化する
関連ガイドで計画をつなぐ
隣接する判断をつなぎ、記事単体で計画を止めないためのガイドです。
よくある質問
迷いやすい範囲と確認順を、質問ごとに整理します。
訪問介護員は予防接種を受けなければなりませんか?
手引き第3版は、ワクチンで予防できる病気について職員は可能な限り接種を受けることが重要としていますが、義務とは書いていません。アレルギー等で受けられない人には、一般的な健康管理の強化を求めています。
感染を疑う症状があるヘルパーは、必ず休ませなければなりませんか?
手引き第3版は、感染力がなくなるまで就業停止を検討する必要があるとし、就業規則との整合をはかるよう示しています。個別の可否は医師や保健所に確認します。
利用者の血液や体液に触れたときの治療は、労災保険の対象になりますか?
手引き第3版は、業務で体液に触れてB型肝炎等に感染した場合の治療・検査・予防薬の投与が、労災保険の給付対象となる場合があるとしています。個別の判断は労働基準監督署に確認します。
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き 第3版(令和5年9月)」(標準予防策(p.5・p.22〜27)、手指衛生の5つのタイミング(p.24)、訪問系の注意(p.17)、嘔吐物・排泄物の処理(p.45)、感染症発生時の対応フロー(訪問系・p.56〜57)、報告の基準(p.62)、職員の健康管理(入職時の確認・就業停止・健康診断・ワクチンによる予防・職業感染対策、p.51〜53)、疥癬(p.110〜113)、感染経路別の予防策(空気感染・飛沫感染・接触感染、p.10〜13)、利用者の健康管理(結核の排菌と治療・感染を疑う症状、p.28〜29)、誤嚥性肺炎(p.114〜115)、感染性胃腸炎・ノロウイルス(p.97〜99)、インフルエンザ(p.94〜96)、薬剤耐性菌感染症(p.117〜118)、研修の章の提供拒否に関する記載(p.40)、帯状疱疹(p.119))(確認日 2026-10-21)