運営 / 更新 2026-10-15
訪問介護員が労災で休むとき:休業補償給付60%+特別支給金20%と待期3日
訪問介護員が訪問中や移動中の業務上のけがで休むと、労災保険から休業補償給付が出ます。ただし支給は休業4日目からで、最初の3日間は事業所が労働基準法に基づいて補償します。支給額、請求書の様式、請求できる期間を、e-Govの条文と厚生労働省・労働局の案内で整理します。
この記事で決めること
訪問介護事業所の経営者が、訪問中や移動中の業務上のけがで訪問介護員が休んだときに、労災保険の休業補償給付の支給開始日と支給額、最初の3日間の事業主の補償義務、請求書の様式と提出先、請求権の時効を確認し、休業中の手続きと資金繰りを決めるための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、業務上のけがで休む訪問介護員の休業対応メモ(休業した日の一覧、待期3日間の補償の支払い記録、請求書の事業主証明の日付、請求期限の控え)を作成できる状態を目指します。
休業4日目から、給付基礎日額の60%が出る
e-Govの労働者災害補償保険法第14条第1項によると、休業補償給付は、業務上の負傷や疾病による療養のため労働することができず、賃金を受けない日の第4日目から支給されます。額は1日につき給付基礎日額の100分の60です。
給付基礎日額は、同法第8条第1項により、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額です。平均賃金は、原則として算定の事由が発生した日(負傷では事故の日、疾病では診断で確定した日)以前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割って求めます。計算の式と時給制の最低保障は「訪問介護員の平均賃金の計算」で、解雇予告手当での使い方は「訪問介護員を解雇するときの30日前の予告と解雇予告手当」で確認できます。
福井労働局と厚生労働省の案内によると、休業補償給付とあわせて、休業4日目から1日につき給付基礎日額の20%の休業特別支給金も支払われます。つまり、合計では給付基礎日額の80%相当が1日ごとに受け取れる見込みになります。
| 休業の日 | 誰が払うか | 額の目安 |
|---|---|---|
| 1〜3日目(待期期間) | 事業主(労働基準法第76条) | 1日につき平均賃金の60% |
| 4日目以降 | 労災保険(休業補償給付) | 1日につき給付基礎日額の60% |
| 4日目以降 | 労災保険(休業特別支給金) | 1日につき給付基礎日額の20% |
最初の3日間は、事業所が平均賃金の60%を払う
休業の初日から3日目までは待期期間とされ、労災保険からは出ません。福井労働局の案内は、業務災害の場合、この3日間は事業主が労働基準法に基づく休業補償を行う義務があると説明しています。1日につき平均賃金の60%です。
労働基準法第76条第1項は、労働者が療養のため労働できず賃金を受けない場合に、使用者は療養中、平均賃金の100分の60の休業補償を行わなければならないと定めています。厚生労働省のリーフレットは、通勤災害と複数業務要因災害の場合には、この事業主の補償責任の規定はないとしています。
訪問介護では、訪問先での転倒、利用者の介助中の腰痛、移動中の交通事故などで、突然休む職員が出ることがあります。その日が業務災害に当たるかで事業所の負担が変わるため、事故の経緯の記録が重要です。移動中の事故の記録は「訪問介護員の移動中事故の確認記録」で整理しています。
請求は、所轄の労働基準監督署に様式第8号で行う
請求先は、被災した労働者が所属する事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長です。業務災害の請求書は様式第8号の休業補償給付支給請求書、通勤災害は様式第16号の6の休業給付支給請求書で、災害の種類によって様式が異なります。
厚生労働省の様式第8号には、療養のため労働できなかった期間や賃金を受けなかった日の日数を書く欄、平均賃金の算定内訳を書く別紙があり、診療担当者(病院や診療所)が療養の期間や経過を証明する欄もあります。事業所に関わる部分は、賃金の支払い状況と平均賃金の算定内訳です。実際の記載方法は、最新の様式の記入例と所轄の労働基準監督署の案内で確認してください。
請求書は被災した労働者本人の名義で請求する書式で、事業所は賃金の支払い状況や平均賃金の算定内訳など、事業所にしか分からない部分を記載する立場になります。賃金台帳や出勤簿から数字をすぐ出せるように、休業した日の一覧と平均賃金の算定の元になる賃金額を整えておくと、請求が遅れにくくなります。
請求の権利は2年で時効になる
労働者災害補償保険法第42条第1項は、休業補償給付を受ける権利を、これを行使することができる時から2年を経過したときは、時効によって消滅すると定めています。休業が長く続く場合は、期間ごとの請求の予定を決めておくと請求漏れを防げます。
労働災害で休業した場合は、労働者死傷病報告も別に必要になることがあります。報告の期限と電子申請は「労働者死傷病報告の出し方」で確認できます。
このページの範囲と、確認する先
このページが確認したのは、e-Govの労働者災害補償保険法第8条・第14条・第42条と労働基準法第76条、福井労働局の休業(補償)等給付の案内、厚生労働省のリーフレット、様式第8号です(2026-10-15に確認)。傷病補償年金への切り替えや、複数の事業場で働く職員の計算は扱いません。
個別の事故が業務災害と認められるか、支給の可否や額がいくらになるかは、労働基準監督署が判断します。業務外の病気やけがで休むときは「健康保険の傷病手当金」を確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- けがをした日と、療養のために働けなかった日を勤務表から洗い出し、休業の初日から3日目までを待期期間として印を付ける。業務災害の場合、この3日間は事業主が平均賃金の60%以上を休業補償として支払う必要があるため、支払い額と支払い日を記録する
- 給与の締め日の直前3か月分の賃金台帳から、給付基礎日額のもとになる平均賃金(賃金総額÷総日数)を、労働基準監督署の様式の算定内訳に合わせて計算し、本人が請求書を書くときに数字を渡せるようにする
- 休業補償給付支給請求書(様式第8号)の事業主証明欄に、休業した期間の賃金を支払っていないか、支払った額を事実のとおり記入して証明し、本人が診療担当者(病院や診療所)の証明を取れるよう日程を調整して、所轄の労働基準監督署へ提出する
- 休業が続く場合は、請求の権利が行使できる日から2年で時効になることを踏まえて、請求書を出す間隔(通常は月ごとなど)を決めて予定表に入れ、労働者死傷病報告を出す必要があるかを、休業日数に照らして確認する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「労働者災害補償保険法 第8条・第14条・第42条、労働基準法 第76条(休業補償)」(確認日 2026-10-15)
- 厚生労働省・福井労働局「休業(補償)等給付(福井労働局・厚生労働省)」(確認日 2026-10-15)