運営 / 更新 2026-10-13

訪問介護の利用者キャンセルと休業手当:勤務表で特定された後の取消しと労基法第26条

利用者の都合で訪問が直前に取りやめになったとき、その時間の賃金を払う必要があるかは、訪問介護事業所の経営者や管理者が迷う点です。厚生労働省の通達(平成16年8月27日基発第0827001号)は、利用者からの利用申込みの撤回を理由に労働者を休業させた場合の休業手当を取り上げており、労働基準法第26条は、使用者の責めに帰すべき事由による休業では平均賃金の100分の60以上の手当を払うと定めています。このページは、通達が示す前提と判断の基準、払わなくてよいとされる場合を整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護事業所の経営者や管理者が、利用者の申込み撤回や時間変更で訪問がなくなったときに、職員へ労働基準法第26条の休業手当が必要になる前提と判断の基準、代替業務を出した場合の扱い、一部休業の差額を、条文と厚生労働省の通達で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、利用者の取消し時の対応表(取消しの連絡を受けた日時、勤務表で特定済みかの確認、代替訪問・時間変更の検討内容と結果、休業手当の要否を確認した相手)を作成できる状態を目指します。

労働基準法第26条:使用者の責めに帰すべき休業は平均賃金の100分の60以上

労働基準法第26条は、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合に、使用者は休業期間中、その労働者に平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならないと定めています。これが休業手当です。利用者のキャンセルそのものを定めた条文ではなく、キャンセルで職員を休ませたときに、この条文に当たるかどうかが問題になります。

平均賃金は同法第12条で、算定すべき事由の発生した日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額とされています。賃金が労働した日や時間によって決まる場合は、賃金の総額を期間中に労働した日数で割った金額の100分の60を下回ってはならないという最低保障もあります。賃金締切日があるときは、3か月は直前の賃金締切日から数えます。

具体的な金額の計算は、給与計算の担当者や社会保険労務士に確認する事項です。

通達が示す前提:勤務表で日と時間帯が特定された後の休業

厚生労働省の通達「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(平成16年8月27日基発第0827001号)は、休業手当の項で、利用者からの利用申込みの撤回を理由として労働者を休業させた場合に、休業手当を支払っていないものが認められると指摘しています。そのうえで、労働日と勤務時間帯が月ごとなどの勤務表で労働者に示されて特定された後、労働者が労働契約に従って働く用意をし、働く意思を持っているのに、使用者が労働日の全部または一部を休業させ、それが使用者の責めに帰すべき事由によるものである場合に、法第26条の休業手当を払う必要があるとしています。

通達の文面は「キャンセル」ではなく「利用申込みの撤回」「利用時間帯の変更」です。勤務表で日と時間帯が確定する前の取消しがこの項に当たるかどうかは、通達には書かれていません。どこから確定とみなすかは、勤務表の作成と変更の運用、就業規則や雇用契約の書き方によって変わるため、労働基準監督署に確認する事項です。

勤務表の考え方は訪問介護の勤務形態一覧表の書き方や雇用・勤怠と訪問介護の移動時間と合わせて確認できます。

休業手当が必要になる判断の基準と、払わなくてよいとされる場合

通達は、利用者からの利用申込みの撤回や利用時間帯の変更を理由に労働者を休業させる場合の判断として、他の利用者宅での勤務の可能性について十分に検討したか、その労働者に代替業務を行わせる可能性があったか、などを含めて判断するとしています。使用者として行うべき最善の努力を尽くしたと認められない場合は、使用者の責めに帰すべき事由があるものとして、休業手当の支払が必要になるとされています。

一方で、代替業務を提供した場合や、就業規則の規定に基づいて始業・終業時刻を繰り上げ・繰り下げたり、休日を振り替えたりして、他の利用者宅で勤務させるなど、必要な業務を提供した場合には、休業手当の支払は必要ないとされています。取消しが出たときに、代わりの訪問や時間の入れ替えを検討した記録があるかどうかが、判断の材料になります。

1日の労働日の一部だけを使用者の責めに帰すべき事由で休業させた場合も、実際に働いた時間に支払われる賃金が1日分の平均賃金の100分の60に満たないときは、その差額を支払わなければならないとされています。例えば、午前の訪問がなくなり午後だけ働いた日は、午後の賃金が基準に届くかどうかを確かめます。

通達が示す、利用者の取消しと休業手当の整理
場面通達の整理事業所が確認すること
勤務表で特定された後、利用者の撤回で訪問がなくなり、代わりの業務も出していない最善の努力を尽くしたと認められない場合は、休業手当の支払が必要他の利用者宅への振替や時間の入れ替えを検討した記録
他の利用者宅の訪問や始業・終業時刻の変更などで、必要な業務を提供した休業手当の支払は必要ない就業規則に繰上げ・繰下げや休日振替の定めがあるか
1日のうち一部だけが取消しになった実際に働いた時間の賃金が平均賃金の100分の60に満たなければ、差額を支払うその日に払った賃金額と、1日分の平均賃金
勤務表で日と時間帯が特定される前の取消し通達には記載がない労働基準監督署への確認

登録ヘルパーに当てはまるか:通達の「非定型的パートタイムヘルパー」

通達には「登録ヘルパー」という言葉は出てきません。近い区分として、月・週・日の所定労働時間が、一定期間ごとに作る勤務表によって非定型的に特定される労働者(非定型的パートタイムヘルパー)が示されています。通達は、この区分が訪問介護労働者の多数を占めており、労働条件の明示、労働時間の把握、休業手当の支払、賃金の算定などに問題が多くみられると述べています。

契約の名前が委託や委任であっても、労働者に当たるかどうかは、使用者の指揮監督などの実態に即して総合的に判断すると書かれています。自事業所の登録ヘルパーが、この区分や労働者に当たるかどうかは、契約の名前だけでは決まりません。雇用の形は訪問介護の登録ヘルパーの雇用形態で、賃金の払い方は訪問介護事業所の賃金の支払い方で確認できます。

確認した範囲と、事業所が準備すること

このページが確認したのは、労働基準法第26条・第12条の条文(e-Gov法令検索)と、厚生労働省の通達(平成16年8月27日基発第0827001号)の休業手当の項です。利用者の取消しが使用者の責めに帰すべき事由に当たるかは、個別の事情による判断で、このページは判断をしません。具体的な事案や金額は、労働基準監督署や社会保険労務士に確認する事項です。

準備としては、勤務表をいつ確定させるか、確定後に取消しが出たときの振替の手順、就業規則の繰上げ・繰下げと休日振替の定めを、あらかじめ決めて書面にしておくことが挙げられます。取消しが出た日に、代替の訪問を検討した内容と結果を記録しておくと、あとで休業手当の要否を説明しやすくなります。利用者側のキャンセル料の扱いは別の論点で、訪問介護の利用料等の受領で確認できます。

利用者が不在だったときの算定と記録

訪問したが利用者が不在だったときの生活援助の算定と記録は、訪問介護の利用者不在時の生活援助:算定できない場合と記録・連絡の整理にまとめています。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 取消しの連絡を受けたら、連絡を受けた日時、取消しの理由(利用者の撤回か時間変更か)、対象の職員と訪問時間を対応表に書く。その訪問が勤務表で日と時間帯が特定された後のものかを確認する
  2. 同じ日に他の利用者宅へ回せる訪問がないか、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げや休日の振替で必要な業務を出せないかを検討し、検討した内容と結果を残す。就業規則にその定めがあるかも確認する
  3. 代わりの業務を出せなかったとき、または1日の一部だけが取消しになったときは、休業手当が必要になる可能性があるものとして記録する。要否と金額は事業所で断定せず、労働基準監督署や社会保険労務士に確認する事項として書く
  4. 取消しが多い月は、取消しの件数、振替できた件数、休業になった時間を月次で集計する。勤務表の確定時期や取消し時の振替の手順を、就業規則と雇用契約の書き方と照らして見直す日を決める

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

次に読む: 訪問介護の登録ヘルパーの雇用契約・勤務表・移動時間 →