運営 / 更新 2026-10-24
訪問介護の賃上げ・職場環境改善支援補助金(令和7年度):交付率の分かれ目と賃金改善
令和7年度の介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業は、報酬改定を待たずに賃上げを支える国の補助金です。訪問介護の交付率は、満たす要件で26.4%、20.4%、15.6%の3段階に分かれ、補助額は基準月(令和7年12月)の介護総報酬に交付率を掛けて出し、受け取った側は賃金改善を行って実績報告書を都道府県に出し、2年間保存します。この記事は、厚生労働省の介護保険最新情報Vol.1454の実施要綱の範囲で、訪問介護の交付率、3つの要件、賃金改善の決まり、報告を整理します。
この補助金は何か:目的と補助額の計算
実施要綱は、令和8年度の介護報酬改定の時期を待たず、人材流出を防ぐための緊急的対応として賃上げ・職場環境改善の支援を行うことを目的に挙げ、令和7年12月16日から適用するとしています。通知は令和7年12月25日付の介護保険最新情報Vol.1454です。
補助額は、被保険者ごとに「基準月の介護総報酬×交付率」で出し、事業所ごとに合計します(1円未満は切り捨て)。基準月は原則として令和7年12月で、基準月のサービス提供による報酬額から6か月分の補助額を算出します。介護総報酬は、基本報酬に各種加算・減算を加えた単位数に、1単位の単価を掛けたものです。
計算の例として、ある事業所の基準月の介護総報酬の合計が100万円で、最も高い26.4%の段階に当たるなら、補助額は26万4,000円で、そのうち賃金改善経費分は21万6,000円です(21.6%の分)。これは仕組みを見るための例で、実際の額は被保険者ごとの計算と都道府県の審査で決まります。
この記事で決めること
令和7年度の介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業(補助金)で、訪問介護の交付率がどの要件で決まるか、補助額の計算、賃金改善と実績報告で何をするかを知りたい訪問介護事業所の人向け。ための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、補助金の賃金改善記録表(1枚):基準月の介護総報酬、満たした要件と交付率、補助額、賃金改善に充てた賃金項目と対象職員、前年同時期との平均賃金水準の比較、職員への周知の日付を作成できる状態を目指します。
訪問介護の交付率:3つの要件で26.4%・20.4%・15.6%に分かれる
実施要綱の別紙1表1は、訪問介護の交付率を次のように示しています。要件①(処遇改善加算の算定)だけなら15.6%、①に③(職場環境改善の取組)を加えると20.4%、①に②(生産性向上や協働化の取組)と③を加えると26.4%です。参考欄の数字は、②が6.0%、③が4.8%で、15.6%に4.8%を足すと20.4%、さらに6.0%を足すと26.4%になります。
要綱は、②を満たす事業所は③も満たしているものとして扱います。表の段階は上の3つです。また、令和6年度の介護人材確保・職場環境改善等事業の補助金の交付を受けた事業所は、③の取組を実施済みとみなされます。
賃金改善に充てる額(賃金改善経費分)は、26.4%の段階で21.6%、20.4%の段階と15.6%の段階でどちらも15.6%です。差の4.8%は職場環境改善等経費として、賃金改善以外の取組にも使える分です(次の節以降で述べます)。
| 満たす要件 | 交付率 | うち賃金改善経費分 |
|---|---|---|
| ①+②+③ | 26.4% | 21.6% |
| ①+③ | 20.4% | 15.6% |
| ①のみ | 15.6% | 15.6% |
3つの要件:処遇改善加算・ケアプランデータ連携・職場環境改善
要件①は、基準月に介護職員等処遇改善加算を算定していることです。基準月に算定していなくても、申請時に算定している、または算定を誓約した場合は、審査では基準月から算定しているものとして扱い、誓約した場合は実績報告書で算定を報告します。加算の区分と加算率は訪問介護の介護職員等処遇改善加算で扱っています。
要件②は、生産性向上や協働化の取組として、ケアプランデータ連携システムに加入していること、または事業所の法人が社会福祉連携推進法人に所属していることのどちらかです。加入しておらず申請時に加入している、または加入を誓約した場合の扱いは①と同じで、誓約したときは実績報告書で加入を報告します。システムの加入手順はケアプランデータ連携システムにあります。
要件③は、現場の課題の見える化(業務の洗い出しや棚卸し)、業務改善活動の体制づくり(委員会やプロジェクトチームの立ち上げなど)、業務内容の明確化と職員間の役割分担のうち、いずれかの取組を計画しているか、すでに実施していることです。処遇改善加算の職場環境等要件との関係は職場環境等要件で整理しています。
対象外になるのは、令和8年4月以降に新規開設された事業所と、計画書の提出時点で廃止・休止となることが明らかな事業所です。
賃金改善の決まり:項目の特定・平均賃金水準・偏りのない配分
賃金改善経費分として算出された額に相当する賃金の改善を、事業者は実施しなければなりません。賃金改善は、基本給、手当、賞与など(退職手当を除く)のうち対象とする賃金項目を特定して行います。特定した賃金項目を含め、交付対象期間に、前年同時期と比べて、賃金改善の対象とした職員の平均的な賃金水準を下げてはいけません。
要綱は、安定的な処遇改善が重要なので基本給による改善が望ましいとしつつ、手当や一時金を組み合わせても差し支えないとしています。一方で、一部の職員や同じ法人の一部の事業所だけに改善を集中させるような、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないよう求めています。配分の考え方は処遇改善加算の賃金改善の配分と同じ視点で点検できます。
対象になる職員は、①の分は介護従事者です。②と③の分は介護職員が対象で、事業所の判断で介護職員以外の職員を改善の対象に加えることもできます。②を満たした分は介護職員への配分を基本としつつ、事業者の判断で介護職員以外の職種への配分も含めた柔軟な配分が認められています。
賃金改善の方法は、申請書を用いるなどして職員に周知し、就業規則の内容も介護従事者に周知します。職員から賃金改善について問い合わせがあれば、書面を用いるなど分かりやすく回答します。労働基準法などの労働法規の遵守も求められます。
職場環境改善等経費:使える経費と使えない経費
③を満たして加算される分(訪問介護では4.8%)は、職場環境改善の取組の経費に充てることができます。要綱は、介護助手などを募集するための経費と、職場環境改善のためのさまざまな取組を行う研修費などの経費が含まれるとしています。処遇改善加算の職場環境等要件を、さらに実施するための取組も例に挙がっています。
ただし、介護テクノロジー導入・協働化等支援事業の対象経費(介護テクノロジー等の機器の購入費用)には充てられません。この分は、介護職員等の賃金改善に充てることもできます。その場合も、賃金項目を特定し、平均的な賃金水準を下げないという賃金改善の決まりが同じように適用されます。
計画書と実績報告書:提出先と保存
事業者は、補助金の支給要件と、賃金改善経費・職場環境改善等経費への充当の方法を書いた計画書を、別紙様式で都道府県知事に提出します。計画書の様式には、令和8年3月末までの支給を希望するか、4月以降の支給を希望するかを選ぶ欄があり、3月末までに支給を受けた場合は、3月末までに賃金改善と職場環境改善を実施する必要があると書かれています。提出先や期限は都道府県の案内で確かめます。
実績報告書は、補助金の総額、そのうちの賃金改善経費の総額、賃金改善の所要額、職場環境改善の所要額を書いて都道府県知事に出し、2年間保存します。賃金改善の所要額と職場環境改善の所要額の合計は補助金の総額以上に、賃金改善の所要額は賃金改善経費の総額以上にします。職場環境改善の所要額は研修費、介護助手等の募集経費、その他に分けて書き、その他に金額を書くときは使い道を具体的に書きます。
計画書の記載内容の根拠となる資料も保管します。賃金改善の記録の残し方は、加算側の処遇改善加算の実績報告の記事も参考になります。
この記事で確認した範囲
2026年10月24日に、厚生労働省が掲載する介護保険最新情報Vol.1454の実施要綱と別紙の様式を確かめました。都道府県ごとの申請期限、様式、支給時期、問い合わせ先と、令和8年度以降の処遇改善加算の拡充は、この記事では確認していません。
個別の事業所が補助金の対象になるか、交付率がどの段階に当たるか、いくら受け取れるかの判断は、この記事の対象外です。申請先の都道府県の案内で確かめてください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 基準月(令和7年12月)の介護報酬総単位数と1単位の単価から介護総報酬を出し、満たした要件(①処遇改善加算、②ケアプランデータ連携システム等、③職場環境改善)に対応する交付率で補助額を計算して書く
- 補助額のうち賃金改善経費分の額を確かめ、賃金改善に使う賃金項目(基本給、手当、賞与など)と対象職員を特定して書く
- 対象職員の平均的な賃金水準が前年同時期より下がっていないかを比べ、特定の職員や事業所に偏った配分になっていないかも確かめて書く
- 賃金改善の方法を職員に周知した日と、問い合わせへの回答の記録を残し、計画書・実績報告書とあわせて2年間保存する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省老健局老人保健課「介護保険最新情報Vol.1454「令和7年度介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業の実施について」(令和7年12月25日)」(別紙 実施要綱 4(対象事業所・対象外)、5(補助額)、6(1)(補助金の要件)、7(補助対象経費)、8(計画書・実績報告書)、別紙1表1(訪問介護の交付率))(確認日 2026-10-24)