運営 / 更新 2026-10-27
訪問介護のキャンセル料の決め方:重要事項説明書への記載・事前の同意・平均的な損害の額
訪問介護の運営基準で、利用者から受け取れると書かれている費用は、利用者負担分と、通常の事業の実施地域外へ行くときの交通費です。キャンセル料は列挙されていません。利用者の都合による直前のキャンセルに料金を求めるかどうかは、契約と重要事項説明書で事業所が決める事項で、決めるときは事前の説明と同意、金額が平均的な損害の額を超えないことが条件になります。
基準第20条が受け取れる費用として書いているもの
指定居宅サービス基準の第20条は、利用料等の受領を定めています。法定代理受領サービスでは、居宅介護サービス費用基準額から事業者に支払われる居宅介護サービス費の額を控除した額、つまり利用者負担分を受け取ります(第1項)。そのほか、利用者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域の居宅で訪問するときは、交通費の額を受け取れます(第3項)。
第20条にキャンセル料という語はありません。それでも、横浜市のQ&Aと大阪府のモデル重要事項説明書は、キャンセル料を契約に基づいて設定できる前提で、設定の条件や文例を示しています。大阪府のモデルには、請求する、しない、およびその徴収率などの設定は各事業者が決める事項で、請求しない場合は条項の記載が不要という注記があります。
取扱いは指定権者によって示し方が異なる可能性があります。事業所の所在地の都道府県・市町村の手引きやQ&Aに、キャンセル料の項目があるかを先に確かめてください。
この記事で決めること
利用者の都合による直前のキャンセルに料金を求めるかどうかと、求める場合の決め方(重要事項説明書への記載・事前の同意・平均的な損害の額)ための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、キャンセル料の取り決め表(連絡期限、料率または金額、請求しない場合、記載する書類、説明と同意の記録の方法を並べた表)を作成できる状態を目指します。
金額は平均的な損害の額を超えないようにする
消費者契約法の第9条第1項第1号は、契約の解除に伴う損害賠償の額を予定する条項や違約金の条項について、解除の事由や時期の区分に応じた同種の契約の解除で事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分を無効とします。キャンセル料を定めるときの上限の考え方です。
同じ条の第2項は、違約金などを請求する場合に、利用者から説明を求められたときは、算定の根拠の概要を説明するよう努めることを事業者に求めています。料率を決めた理由は、聞かれたときに答えられる形で残しておきます。
横浜市のQ&Aは、金額の設定を、民法及び消費者契約法に従って適切に行うよう求め、①利用者ごとに不公平が生じないこと、②利用中止に伴い事業所に発生する平均的な損害の額とすること、③連絡期限とキャンセル料を明確に記載した重要事項説明書などで必ず同意を得ることを挙げています。同じQ&Aは、金額が平均的な損害の額である根拠を説明できる体制を整えるよう示しています。
取り決め表に入れる項目
キャンセル料を請求する事業所は、重要事項説明書に次の項目を書き、運営規程の「利用料その他の費用の額」(第29条第4号)と食い違わないようにそろえます。大阪府の文例の数値は〇〇%と空欄で、率は示されていません。
| 決めること | 文例・考え方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 連絡期限の区分 | 24時間前までは不要、12時間前まで、それより後、の3区分(目安として24時間) | 大阪府のモデルとメモ |
| 区分ごとの料率 | 1提供当りの料金の〇〇%(率は事業者が決める) | 大阪府のモデル |
| 請求しない場合 | 利用者の病状の急変や急な入院等 | 大阪府のモデル |
| 金額の考え方 | 利用中止に伴い事業所に生じる平均的な損害の額を超えない | 消費者契約法第9条、横浜市Q&A |
| 記載する書類 | 連絡期限とキャンセル料を明確に書いた重要事項説明書など | 横浜市Q&A、基準第8条 |
説明と同意の記録の残し方
基準第8条第1項は、サービスの提供開始に際し、あらかじめ、運営規程の概要や勤務の体制などの重要事項を記した文書を交付して説明し、同意を得ることを求めています。キャンセル料を重要事項説明書に書くなら、この説明と同意の手続きの中で扱います。
横浜市のQ&Aは、重要事項説明の同意は文書で得ることが望ましいとしています。文書での同意を不要と判断した場合でも、説明の内容、説明した日時、方法、対象者を記録に残す必要があると答えています。後から利用者とトラブルになったときの確かめ先になります。
重要事項説明書の記載事項の全体と交付・同意の手順は訪問介護の重要事項説明書:記載事項と交付・同意で確認できます。利用者が署名できない場合の代筆者欄の書き方は代筆者欄と代筆理由の書き方で確認できます。
利用者はどこでキャンセル料を確かめられるか
厚生労働省の介護サービス情報公表システムの利用者向け解説は、利用料情報の見方として、キャンセル料の有無、発生する場合の条件、算定方法を確かめることを挙げています。利用者都合のキャンセルはトラブルの原因になりうるため、料金の透明性を見る視点だと説明しています。
事業所が公表する情報と、重要事項説明書、運営規程の内容は同じにそろえておきます。キャンセル料を請求しない事業所は、その旨が分かる形にしておくと、利用者との行き違いを避けられます。
関連する別の論点
キャンセルした訪問の介護報酬を請求できるかは、サービスを提供したかどうかの問題で、キャンセル料の問題とは別です。入院や中止の場合の算定は訪問介護で利用者が入院・死亡・サービス中止になったときの算定で整理しています。利用者の不在時の扱いは訪問介護の利用者不在時の生活援助を見てください。
訪問介護員側の賃金は、キャンセル料を取れるかどうかとは独立して判断します。勤務表で特定された後の取消しの休業手当は訪問介護の利用者キャンセルと休業手当で確認できます。受け取れる利用料や別料金の条件は訪問介護の利用料等の受領にまとめています。
この記事で確認した範囲
2026-10-27に、指定居宅サービス基準の第8条・第20条・第29条と消費者契約法第9条を、e-Govの現行条文で確認しました。横浜市のQ&A集第15版(令和8年7月現在)、厚生労働省の介護サービス情報公表システムの解説、大阪府のモデル重要事項説明書(訪問看護用)は、本文を読んで確認しています。
訪問介護の料率や金額の全国共通の基準は確認できず、書いていません。文例は訪問看護用のモデルのため、訪問介護で使うときは自事業所の実情に合わせて、指定権者に確かめてください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- キャンセル料を請求するかどうかを決める。請求しない場合は、重要事項説明書にキャンセル料の条項を置かず、運営規程との食い違いが無いことを確かめる
- 請求する場合は、連絡期限の区分(何時間前まで)と、区分ごとの料率または金額を書き出し、1回の訪問で事業所に生じる損害の内訳を、説明できる形で残す
- 請求しない場合(急な入院や病状の急変など)を書き出し、重要事項説明書と運営規程に同じ内容で記載する
- 利用開始の前に重要事項説明書で説明し、同意を文書で得て、説明した日時と方法を記録する。自治体の取扱いは指定権者に書面で確かめて保管する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第8条・第20条・第29条(重要事項の説明、利用料等の受領、運営規程)」(基準省令第8条第1項、第20条第1項〜第4項、第29条第4号)(確認日 2026-10-27)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「消費者契約法 第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)」(消費者契約法第9条第1項第1号・第2項)(確認日 2026-10-27)
- 横浜市健康福祉局介護事業指導課「介護保険事業者向けQ&A集・第15版(令和8年7月現在) 0-1-3 キャンセル料、0-1-2 重要事項説明書について」(Q&A 0-1-3 キャンセル料(更新月 R4.1)/0-1-2 重要事項説明書について)(確認日 2026-10-27)
- 厚生労働省(介護サービス情報公表システム)「介護サービス情報公表システム「基本情報」の読み解き方 3. いくらでサービスを提供しているか」(利用料情報(キャンセル料とその算定方法))(確認日 2026-10-27)
- 大阪府「モデル重要事項説明書(訪問看護用) 4 その他の費用について ② キャンセル料」(「4 その他の費用について」② キャンセル料と(メモ))(確認日 2026-10-27)