運営 / 更新 2026-10-14

訪問介護の介護等の総合的な提供(基準第29条の2):特定の援助に偏ってはならない

訪問介護の運営基準第29条の2は、身体介護と家事援助を常に総合的に提供し、特定の援助に偏ってはならないと定めています。特定の行為だけを専門にする事業を考えている人は、開業前にこの条文の読み方を確かめておくと安心です。この記事は、条文と老企第25号の解釈から、何が「偏り」とされるかを整理します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護の開業を考える事業者や管理者が、運営基準第29条の2の総合的な提供の義務と、老企第25号が示す偏りの判断の材料を、事業設計の前に条文で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、介護等の総合的な提供の自己点検表(月ごとの提供時間の内訳、運営規程・広告・勤務体制・他の事業の確認、指定権者へ確認する事項)を作成できる状態を目指します。

第29条の2は、介護等を常に総合的に提供し、特定の援助に偏ることを禁じている

運営基準第29条の2は、指定訪問介護事業者が事業を運営するにあたり、入浴、排せつ、食事等の介護、または調理、洗濯、掃除等の家事(条文は「介護等」と呼びます)を常に総合的に提供するものとし、介護等のうち特定の援助に偏することがあってはならないと定めています。

老企第25号は、この条を、運営基準第4条の基本方針などを踏まえ、多種多様な訪問介護サービスを提供すべきことを明確にしたものと説明しています。指定訪問介護は生活全般にわたる援助を行う事業だからという理由です。

老企第25号は、指定訪問介護事業者は身体介護と家事援助を総合的に提供しなければならないとしています。条文が求めているのは、両方を提供することと、その中の特定の行為だけに偏らないことです。区分の具体的な考え方は「老計10号とは?訪問介護でできること・できないこと一覧(身体介護・生活援助の区分)」にあります。

老企第25号が示す「偏り」の見方

老企第25号は、身体介護のうち特定のサービス行為に偏ったり、家事援助のうち特定のサービス行為に偏ったりしてはならないとしています。偏りは、身体介護と家事援助のどちらかだけを行う場合に限らず、それぞれの中の特定の行為に集中する場合も対象になります。

「偏っている」の意味について、老企第25号は、特定のサービス行為のみを専ら行うことはもちろん、特定のサービス行為に係るサービス提供時間が、月単位などの一定期間のサービス提供時間の大半を占めていれば、これに該当するとしています。「大半」が何割かは、通知に数値が書かれていません。

判断の材料も、サービス提供の実績だけではありません。事業運営の方針、広告、従業者の勤務体制、その事業者が行う他の事業との関係などの事業運営全般から見て、特定のサービス行為に偏ることが明らかであれば、本条に抵触すると書かれています。

運営のどこが見られるか:実績・方針・広告・勤務体制・他の事業

次の表は、老企第25号が判断の材料に挙げた5つを、事業所が確かめる点の例とあわせて並べたものです。右の列は通知に書かれた基準ではなく、確かめるときの例です。

老企第25号が「偏り」の判断に挙げる事業運営全般(第3の3(18))
判断の材料確かめる点の例
サービス提供の実績月のサービス提供時間のうち、特定の行為が占める割合
事業運営の方針運営方針や運営規程に書いた提供内容が、特定の行為に限られていないか
広告ホームページやチラシで案内するサービスが、特定の行為に限られていないか
従業者の勤務体制勤務の組み方が、特定の行為だけを行う形になっていないか
その事業者が行う他の事業との関係同じ事業者の他の事業と合わせて、訪問介護が特定の行為の受け皿になっていないか

開業前の事業設計で確かめること

運営規程には、指定訪問介護の内容として、身体介護や家事援助などのサービスの内容を書きます。書き方は「訪問介護の運営規程の必須記載事項(8項目)」で整理しています。特定の行為だけを書く構成にしていないかを、第29条の2とあわせて見直します。

通院等乗降介助のように、算定要件が別に定められているサービスについては、「訪問介護の通院等乗降介助の算定要件と単位数(1回97単位)」で要件を確かめられます。ただし、そのサービスだけを専ら提供する運営が本条にどう当たるかは、条文と通知からは断定できないので、指定申請の前に指定権者へ確認してください。

保険外のサービスを組み合わせる場合は、「混合介護の取扱い(同時一体的な提供の扱いと保険外サービスの例)」の区分けも前提になります。他の事業との関係も判断の材料に挙がっているため、全体の事業構成を示せるようにしておくと安心です。

基準該当訪問介護には適用されない点と、次に知りたいこと

老企第25号は、第29条の2は基準該当訪問介護事業者には適用されないと書いています。基準該当訪問介護事業者は、指定訪問介護事業者とは別の類型です。この記事が扱うのは、指定訪問介護事業者の場合です。

指定を受けて訪問介護を始める流れは、「指定訪問介護と保険外の訪問サービス:開業前に比べる指定・給付・確認事項」で、収入の見立ては「訪問介護の基本報酬の早見表(区分別の1回の報酬額と月の訪問回数別の月間売上)」で確かめられます。

この記事は、条文と通知の読み方を整理したもので、個別の事業が第29条の2に適合するかどうかの判断を請け負うものではありません。最終的な扱いは、指定申請先の都道府県や市町村に確認してください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 月ごとのサービス提供時間を、身体介護と家事援助の別、さらに行為の別に集計し、特定の行為が占める割合を並べる
  2. 運営規程、ホームページやチラシ、勤務表、同じ事業者の他の事業の内容を、特定の行為に限られていないかの目で見直す
  3. 特定の行為が大半を占める見込みがある場合は、その運営が第29条の2にどう当たるかを、指定申請前に指定権者へ確認する事項として書き出す
  4. 確認した内容と日付を、運営規程の改定記録とあわせて残す

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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