運営 / 更新 2026-10-21

利用者に嘔吐・下痢(ノロウイルスなど)が疑われるとき:訪問介護員の連絡・手洗い・洗濯の注意

利用者に激しい嘔吐や水様便があるときは、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎を疑い、責任者への報告、脱水と窒息への注意、石けんと流水での手洗いを優先します。厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き 第3版」(令和5年9月)は、ノロウイルスはアルコール消毒の効果が弱く、乾燥した嘔吐物が感染源になりうるとしています。このページは、疑うきっかけと対応を手引きで確認し、感染症全般の手順は訪問介護の感染対策の手引きで扱っています。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

ノロウイルスの特徴:少量でうつり、嘔吐物と便に大量に含まれる

手引きは、ノロウイルスを冬季の感染性胃腸炎の主要な原因となるウイルスとし、少量(100個以下)でも感染して集団感染を起こすことがあると説明しています。潜伏期間は12〜48時間で、感染経路は飛沫感染、接触感染、経口(糞口)感染です。急性期の便1gには1億個以上、嘔吐物1gには100万個以上のウイルスが存在するとされています。

以前は二枚貝などの食品が原因として知られていましたが、手引きは、現在は二枚貝よりも感染者を介したヒトからヒトへの感染の例が多く報告されているとしています。手引きは、介護施設等では感染した利用者の便や嘔吐物に触れた手指で扱う食品などを介した二次感染が多く、おむつや嘔吐物の処理には特に注意が必要としています。施設・事業所内の手すり、ドアノブ、水道の蛇口、テーブル、取っ手など、手に触れる場所も汚染されている可能性があるとされ、利用者宅でも手に触れる場所に気をつける参考になります。

嘔吐物が乾燥するとエアロゾル(空気中に漂う微小な粒子)になって感染源になりうるため、速やかに片付けることが重要だと書かれています。なお、食品は85℃以上で1分間以上の加熱でウイルスが死滅するとされています。

この記事で決めること

訪問介護員やサービス提供責任者が、利用者に激しい嘔吐や水様便があってノロウイルスなどの感染性胃腸炎が疑われるときに、報告の目安、脱水と窒息への注意、石けんと流水による手洗い、汚れた衣類やシーツの洗濯の考え方を、厚生労働省の感染対策の手引き第3版で確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、嘔吐・下痢があったときの連絡メモ(症状が出た日時・嘔吐と水様便の回数・水分が取れているか・熱の有無・連絡先と受診の相談の記録欄)を作成できる状態を目指します。

疑うきっかけと報告:激しい嘔吐・水様便は責任者へ

手引きは、初期症状は嘔吐と下痢で、特に激しい嘔吐や、下痢のなかでも水様便があったときは、必ず看護職員に報告するとしています。この記載は施設の職員向けです。訪問介護では看護職員が同じ場にいないため、サービス提供責任者や管理者への報告と、ケアマネジャーやかかりつけ医への相談につなぐ流れが考えられます(本サイトの整理例で、手引きが定めた手順ではありません)。

報告するときは、症状が出た日時、嘔吐と水様便の回数、水分がとれているか、熱の有無を伝えると、受診の相談がしやすくなります(これも本サイトの整理例です)。連絡の流れは訪問介護のサービス提供・ケアマネ連携・月次報告と合わせて確認してください。

手引きは、突然嘔吐した人の近くにいた人や嘔吐物に触れた可能性のある人は、潜伏期間の24〜48時間を考慮して様子を見るとしています。担当した職員が発症したときの就業停止の考え方は訪問介護員の予防接種・体調不良時の就業停止・体液に触れたときの受診で確認できます。

利用者への対応:脱水と窒息に注意する

手引きは、下痢や嘔吐が続くと脱水を起こしやすいため水分補給が必要で、口から水分がとれない場合は補液(点滴)が必要になるので、早めに医師の診察を受けるとしています。多くは2〜7日で治るものの、脱水、けいれん、肝機能異常、脳症などを合併して命に関わることもあり、脱水に対する予防や治療が最も大切とされています。

高齢者は嘔吐の際に嘔吐物を気道に詰まらせることがあるため、窒息しないよう横向きに寝かせるとされています。緊急で受診が必要と思われる状態のときの対応は訪問介護の緊急時対応の義務で確認できます。嘔吐したときに誤嚥を起こして肺炎になる場合の見る点は利用者に誤嚥性肺炎が疑われるときで整理しています。

食事は、嘔吐のあとに様子を見ながら判断するとされています。脱水や電解質(体の塩分などのバランス)の崩れを防ぐため、1日を通じて水分と栄養をとれるようにする考え方が示されています。どの程度の水分をどう与えるかは、利用者の状態に応じて医師などに確認する事項です。

手洗いと洗濯:アルコールだけに頼らない

手引きは、ノロウイルスはアルコールによる消毒効果が弱いため、エタノール含有の擦式消毒薬による手指消毒の有効性は低いとしています。ノロウイルス対策では、利用者の介助後、配膳前、食事介助時に、液体石けんと流水で正しく手を洗うことが大切で、擦式消毒は流水でただちに洗えない場合の補助として使うとされています。

汚れたシーツなどは、付着した汚物中のウイルスが飛び散らないように処理したあと、静かにもみ洗いし、しぶきを吸い込まないように注意するとされています。衣類に便や嘔吐物が付いているときは、付着物を洗い流します。消毒は85℃・1分間以上の熱水洗濯が適しているものの、できない場合は次亜塩素酸ナトリウム液が有効で、十分にすすぐこととされています。

下洗いした場所は、次亜塩素酸ナトリウム液(0.02%)で消毒したあとに洗剤で清掃するとされています。使う薬剤の扱いは、事業所の手順と訪問介護の感染対策の手引きで確認してください。

利用者宅の洗濯機で熱水洗濯ができるかどうかは、家庭ごとに異なります。どの方法で行うかは事業所の手順として決め、家族の同意を得て行うのが現実的です(本サイトの整理例です)。嘔吐物の処理の手順そのものは訪問介護の感染対策の手引きで確認できます。

事業所で決めておくこと

あらかじめ、報告する症状の目安、報告先、嘔吐物の処理に使う手袋やマスクなどの用意、次の訪問先への影響の考え方を、職員全員が知っておく形にすると動きやすくなります(本サイトの整理例で、手引きが様式を定めているわけではありません)。同じ職員が続けて複数の利用者を訪問するため、症状のある利用者の担当と訪問順を、責任者が把握しておくと安心です。記録はサービス提供記録の考え方に沿って残します。

手引きの感染性胃腸炎の章は、集団生活の場を前提に書かれた部分が多く、居室を分ける、共用トイレを分ける、厨房に食器を戻すといった記載は訪問介護にはそのまま当てはまりません。個別の利用者が感染性胃腸炎かどうかの判断、脱水の程度、治療は、医師などの専門職に確認する事項です。このページの内容は手引きの記載の要約であり、個別の事案への助言ではありません。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 激しい嘔吐や水様便があったら、その日時と回数、水分がとれているかを記録し、サービス提供責任者へ報告する
  2. 嘔吐の際は窒息しないよう横向きにするなど、安全の確保を先にし、口から水分がとれないときは早めの受診をケアマネジャーやかかりつけ医へ相談する
  3. ケアの前後は、アルコールの擦式消毒だけに頼らず、石けんと流水で手を洗う。汚れた衣類やシーツは、しぶきを吸い込まないよう処理する
  4. 症状のある利用者を担当した職員の名前と、その後に訪問する利用者の順番を確認し、次の訪問の前に事業所の手順に沿って対応を決めておく

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隣接する判断をつなぎ、記事単体で計画を止めないためのガイドです。

よくある質問

迷いやすい範囲と確認順を、質問ごとに整理します。

ノロウイルスが疑われる利用者宅では、アルコール消毒だけで手指衛生は足りますか?

手引き第3版は、ノロウイルスはアルコールによる消毒効果が弱く、エタノール含有の擦式消毒薬による手指消毒の有効性は低いとしています。ノロウイルス対策では、液体石けんと流水による手洗いが基本で、擦式消毒は流水で洗えないときの補助として使うとされています。

利用者が嘔吐したとき、まず何に気をつけますか?

手引き第3版は、高齢者は嘔吐の際に嘔吐物を気道に詰まらせることがあるため、窒息しないよう横向きに寝かせるとしています。嘔吐物は乾燥するとエアロゾル化して感染源になりうるため、速やかに片付けることが重要とされ、処理の詳しい手順は感染対策の手引きの記事で確認できます。

下痢や嘔吐が続く利用者の水分補給は、どう考えればよいですか?

手引き第3版は、下痢や嘔吐が続くと脱水を起こしやすいため水分補給が必要で、口から水分がとれない場合は補液が必要になるので早めに医師の診察を受けるとしています。脱水の程度の判断や治療は医師に確認する事項です。

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

  • 厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き 第3版(令和5年9月)」(標準予防策(p.5・p.22〜27)、手指衛生の5つのタイミング(p.24)、訪問系の注意(p.17)、嘔吐物・排泄物の処理(p.45)、感染症発生時の対応フロー(訪問系・p.56〜57)、報告の基準(p.62)、職員の健康管理(入職時の確認・就業停止・健康診断・ワクチンによる予防・職業感染対策、p.51〜53)、疥癬(p.110〜113)、感染経路別の予防策(空気感染・飛沫感染・接触感染、p.10〜13)、利用者の健康管理(結核の排菌と治療・感染を疑う症状、p.28〜29)、誤嚥性肺炎(p.114〜115)、感染性胃腸炎・ノロウイルス(p.97〜99)、インフルエンザ(p.94〜96)、薬剤耐性菌感染症(p.117〜118)、研修の章の提供拒否に関する記載(p.40)、帯状疱疹(p.119))(確認日 2026-10-21)

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