開業準備 / 更新 2026-10-16

訪問介護の独立開業準備:法人設立・管理者とサ責・退職時期

現職の訪問介護員が独立して訪問介護を開業するときは、先に法人を作り、次に管理者とサービス提供責任者(サ責)を決め、そのあとで退職の時期と指定申請を合わせます。東京都のガイドブックは、介護保険の事業の申請には法人格が必要としているため、個人のまま指定を受ける形は前提にできません。この記事は、その順序を条文と東京都のガイドブックで整理し、競業や利用者の引き継ぎは確認項目として分けます。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護事業所で働く人が自分で訪問介護を開業するときに、何から順に準備するか、管理者とサービス提供責任者を誰が担うか、いつ退職するか、競業や利用者の引き継ぎで何を確認するかを、条文と東京都のガイドブックで確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、独立開業の準備順序表(法人設立・管理者とサ責の担い手・雇用契約と退職の時期・資金・指定申請の日程)と、勤め先に関する確認項目の一覧を作成できる状態を目指します。

最初に決めること:指定を受けるのは法人

介護保険法第70条は、指定は居宅サービス事業を行う者の申請により、サービスの種類と事業所ごとに行うと定めています。申請者が都道府県の条例で定める者でないときは、都道府県知事は指定をしてはならないとされています(同条第2項第1号)。

東京都福祉局のガイドブック(令和6年10月改訂)は、介護保険の各事業を申請するには法人格を有する必要があると書いています。ほかの都道府県の扱いは、事業所を置く予定の指定権者に確認します。法人の設立は、退職の前でも後でも進められるため、順序の最初に置けます。

管理者とサ責を誰が担うか

省令第5条は、事業所ごとに置く訪問介護員等の員数を、常勤換算で2.5以上と定めています。常勤の職員1人は1.0として数えるため、代表者1人では足りず、複数人の勤務が必要です。数え方の詳細は訪問介護の人員基準(必要人数・常勤換算2.5以上・サービス提供責任者・管理者の兼務)で確認できます。

サ責は、利用者40人または端数を増すごとに1人以上です。新規に指定を受けるときの利用者数は推定数で数えます(同条第3項)。サ責になれるのは介護福祉士その他厚生労働大臣が定める者で、専ら指定訪問介護に従事する人です(同条第4項)。

管理者は、省令第6条により、専らその職務に従事する常勤の人を置きます。条文に資格を求める言葉はありません。管理上支障がない場合は、その事業所の他の職務を兼ねられます。

代表者が管理者やサ責を兼ねる場合に「管理上支障がない」と見られるかは、指定権者に確認します。資格の扱いは訪問介護の管理者の要件:資格の扱い・常勤と専従・兼務できる範囲(省令第6条)で整理しています。

雇用契約と退職の時期の考え方

指定の可否を決める第70条第2項第2号は、従業者の知識・技能と人員が基準を満たしていないときは指定しないと定めています。指定の時点で、必要な人員がそろっている必要があります。開業日から逆算して、新しい法人で雇う人の雇用契約を結ぶ時期を決めます。

いまの勤め先を辞める時期は、収入が止まる期間に直結します。民法第627条第1項は、期間の定めのない雇用では、解約を申し入れた日から2週間で雇用が終わると定めています。

ただし、勤め先の就業規則に退職の申出の期限が書かれていることがあります。民法と就業規則のどちらを優先するか、期間の定めのある契約かどうかは、社会保険労務士などに確認します。

東京都の場合、指定前研修の受講が必須です。対象は原則、管理者に従事する予定の方または法人代表者で、研修は毎月15日前後に開かれ、申込期限は研修月の前月末日です。管理者になる人が、退職前の日程で受けられるかも確認します。

競業と利用者の引き継ぎ:断定せず、確認する

勤め先の利用者に、独立後に自分の事業所を利用してもらえるかどうかは、この記事では断定しません。法的にどこまで許されるかは、就業規則、雇用契約、退職時の誓約書の内容で変わるためです。

自分で確認できる項目は、次の3つです。競業を制限する定めの有無と期間、在職中・退職後の秘密保持の定め、利用者名簿や記録の持ち出しの禁止です。利用者の情報の扱いは、運営基準の秘密保持の定めと関わります(訪問介護の秘密保持等(基準第33条):守秘義務と個人情報の同意)。

契約の効力や、勧誘が問題になるかどうかの判断は、弁護士に確認する事項です。

自分で確認する項目と、専門家に確認する事項
項目自分で確認する専門家に確認する
競業の制限就業規則・雇用契約に定めがあるか、期間と範囲定めが有効か、独立後の営業がそれに当たるか
秘密保持在職中と退職後の定め、誓約書の有無持ち出した情報の範囲が問題になるか
利用者の引き継ぎ勤め先の方針、退職時の手続利用者への働きかけの可否
退職の時期就業規則の申出期限民法との優先関係、期間の定めのある契約の場合

資金と指定申請の段取り

退職してから報酬が入金されるまでは、事業の収入がありません。開業にかかる費用の分け方は訪問介護の開業費と月次費用の分け方、入金までの運転資金は訪問介護の運転資金と資金繰りで見通せます。自分の数字で確かめるときは事業計画シミュレーターに入力できます。

指定申請の手順は訪問介護開業の順番:法人設立・人員・指定申請・開業のロードマップで整理しています。東京都のガイドブックは、工事中や備品が未納入の場合は申請書を受理できないとしています。事業所の準備を終えてから申請する順になります。

この記事は、指定申請の代行や、指定を受けられるかどうかの判定はしません。

この記事で確認していないこと

東京都以外の都道府県の条例とガイドブックは確認していません。管理者とサ責の兼務の範囲、指定前研修の有無、申請の受付期間は、事業所を置く指定権者に確認してください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 事業所を置く予定の指定権者に、法人格の要否、指定前研修の有無、管理者とサ責の兼務の範囲を確認し、準備順序表に書く
  2. 管理者とサ責になる人、常勤換算2.5以上を満たす訪問介護員の見込みを書き出し、開業日から逆算して雇用契約を結ぶ時期を決める
  3. 勤め先の就業規則と雇用契約から、退職の申出の期限、競業の制限、秘密保持、利用者名簿の持ち出し禁止の定めを抜き出し、専門家に確認する事項と分ける
  4. 退職から報酬の入金までの期間の生活費と運転資金を、開業費の見積もりと合わせて資金計画に入れる

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

次に読む: 訪問介護開業の順番:法人設立・人員・指定申請・開業のロードマップ →