事業計画 / 更新 2026-10-20
訪問介護の運転資金と資金繰り
訪問介護の資金繰りでは、サービスを提供した月の売上と、審査を経て現金が入る月を分けて考えます。初期投資、給与、家賃、返戻や未収も月別に置き、最も現金が少なくなる時点を確認します。
売上・請求・決定・入金を別の状態で管理する
サービス提供から実績確定、請求提出、審査、支払決定、入金までを一つの売上数字へまとめないようにします。対象となる国保連の公式日程を確認し、提供月、請求月、決定月、入金月を月次表の別列へ記録します。
返戻、保留、過誤、利用者負担の未収が生じた金額は、通常の入金予定から切り離します。原因、対応者、再請求または回収の予定月を記録し、未解決の金額を将来入金として確定扱いしません。
訂正履歴
- 2026-08-24: 返戻・採用遅延を保守ケース限定とした記述を訂正。事業計画ツールでは基準・保守・成長の全ケースに一律で適用する。
この記事で決めること
売上と入金のずれを含む月末現金を確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、初回入金までの月末現金と資金不足月が分かる資金繰り表を作成できる状態を目指します。
支払日から逆算して月末現金を作る
開始時の現金へ、各月の回収額を加え、給与、社会保険、家賃、システム、借入返済、税等の支払を実際の予定月で差し引きます。損益計算上の費用計上時期ではなく、まず銀行口座から現金が動く時期をそろえます。
物件、採用、備品などの初期投資も契約月と支払月を分けます。開業前から発生する固定費と初回入金までの支出を含め、十二か月の各月末現金と期間中の最低現金を確認します。
| 月 | この月の入金 | この月の支出 | 月末現金 |
|---|---|---|---|
| 5月 | なし(4月提供分は別に扱う) | 80万円 | 220万円 |
| 6月 | なし | 80万円 | 140万円 |
| 7月(23日に5月提供分が入金) | 100万円 | 80万円 | 160万円 |
| 8月(24日に6月提供分が入金) | 100万円 | 80万円 | 180万円 |
日程表の見方と、東京都以外の確認先
上の例では、5月に提供した分が入金されるのは7月23日です。5月末と6月末の現金は、売上が立っていても減り続けます。提供月から入金までの月別日程は訪問介護の国保連請求・入金・返戻の月次サイクルの表にあります。
日程表は東京都国民健康保険団体連合会の令和8年度のものだけを載せています。他県は各国保連の公表を確認してください。例の金額は仮の数値で、売上や入金を保証するものではありません。
返戻・採用遅延の前提と保守ケース限定の追加遅延を分ける
請求の一部が予定月に入らない割合、利用者負担の未収、採用遅延による提供開始の後ろ倒しは、シナリオ名で切り替わる設定ではなく、入力した値が基準・保守・成長のいずれにも共通して適用されます。保守ケース専用の「追加入金遅延(additionalCollectionLag)」は、0〜12か月の整数で入力し、通常の入金までの月数へ追加で上乗せします。
基準・成長ケースの入金月や、返戻・再請求の回収月を予測するものではありません。複数の不利な前提を一度に変えず、影響の大きい要因を特定します。
入金日は全国一律と決めつけず、対象年度と地域の国保連が公開する案内で確認します。公式日程が未確認の間は確認済みの予定として扱わず、追加の入金遅れを置いた結果も併記します。
不足月が来る前の変更条件を決める
期間中の最低現金と最初の資金不足月を確認し、いつまでに何を変えれば不足を回避できるかを逆算します。採用、物件契約、設備購入、新規受入のそれぞれに、延期または縮小を検討する期限を置きます。
シミュレーターの月末現金は入力前提に基づく計画値であり、融資や入金を保証しません。請求結果、採用状況、実際の支払は月ごとに実績へ置き換えます。月末現金が社内で決めた下限を割り込む前に、計画を見直して経営判断を更新します。
助成金を資金繰りに入れるときの注意
助成金は支給申請の後に決まるため、入金の時期と金額を見込みで入れると、月末現金が実際より多く見えます。確認できた制度と事前申請の要否は訪問介護の開業で確認する公的な助成金・補助金にまとめています。
借入返済を入れた損益分岐の考え方
借入の返済額を月次の支出に足すと、黒字になる訪問件数は増えます。据置期間の前後で返済額が変わる場合の比べ方は、訪問介護の損益分岐点(訪問件数)の計算式とシミュレーター前提の「借入返済を足した損益分岐」の表で、架空の数値により確かめられます。
赤字でもかかる法人住民税の均等割
法人で開業すると、売上が立つ前の赤字の期間でも、法人住民税の均等割は年額で発生します。区分と年額の見方は「訪問介護を法人で開業すると赤字でもかかる法人住民税の均等割:区分と年額の目安」で整理しています。
シミュレーター結果の3指標(最低現金・資金不足の初月・年間営業損益)の読み方
事業計画シミュレーターの結果には、基準ケースの3つの指標が出ます。「12か月の最低現金」は、1か月目から12か月目までの月末現金のうち最も少ない額です。
月末現金は、開始時点の現金から初期投資を引いた額を出発点に、入金があった月に増え、人件費・変動費・固定費の支出があった月に減るものとして計算します。最低現金がマイナスなら、どこかの月で現金が足りなくなる入力です。
「資金不足の初月」は、月末現金が初めてマイナスになる月で、「なし」なら12か月の間はマイナスにならない入力です。売上の入金は売上の月から入金までの月数だけ遅れるため、営業損益が黒字でも、入金が始まる前の月に不足が出ることがあります。この月が出たときは、開始の延期、初期投資の縮小、追加資金の3つを比べます。
「年間営業損益」は、12か月の営業損益(売上から人件費・変動費・固定費を引いた額)の合計です。入金の時期は関係しないため、年間営業損益が黒字でも最低現金がマイナスになることがあり、逆に入金が早ければ赤字でも期間内の現金が残ることがあります。3つの指標は別のものとして、順に見ます。
この3指標は基準ケースの値で、保守ケースの追加の入金遅延は反映されません。返戻や過誤の再請求による入金月のずれ、借入の返済、税金、助成金の入金も含まれません。実際の資金は、これらの分だけ入力より少なくなり得るため、3指標は入力した前提のもとでの目安として読みます。
詳細設定の返戻割合と採用遅延月数の置き方
事業計画シミュレーターの詳細設定には、入金の遅れとは別に2つの欄があります。「返戻等で当月回収できない割合」は%で、「採用遅延で提供できない月数」は0〜12か月で入力します。どちらも基準・保守・成長の3つのケースに同じ値が効きます。
「返戻等で当月回収できない割合」は、各月の売上のうち入金にならない部分の割合です。10%なら、売上の90%だけが入金月に入り、残りの10%は12か月の間に入金されません。返戻された請求の再請求で後から入る分は計算に入っていないため、再請求で戻る見込みの分は、この割合に入れません。
置く値は外部の平均ではなく、自事業所の請求の実績(返戻になった金額÷請求した金額)で決めます。開業前で実績がないときは、0%の入力と、仮に置いた割合の入力を並べて、差だけを見ます。
「採用遅延で提供できない月数」は、開始から数えた月数の間、サービスの売上を0にする欄です。人件費、変動費、固定費は、この間も同じ額が出ていく入力のままです。採用が遅れた月の給与を払わない計画にするときは、月額の入力側を別に下げます。
数値例は、架空の入力で計算した結果です。月に100件の訪問、1件あたり400単位、1単位10円で、売上は月40万円とします。
月給の人件費は25万円、変動費は3万円、固定費は5万円で、支出は月33万円です。開始時点の現金300万円、初期投資100万円、入金までの月数は2か月とします。
どちらの欄も0のとき、12か月目の月末現金は204万円、最低現金は134万円(2か月目)です。返戻等で当月回収できない割合を10%にすると、入金が毎月4万円減るため、入金のある10か月分で計40万円少なくなり、12か月目の月末現金は164万円になります。最低現金は入金が始まる前の月で決まるので、134万円のまま動きません。
採用遅延を2か月にすると、売上が立つのは3か月目からで、入金は5か月目からになります。入金は8か月分の320万円で、支出の396万円を下回り、12か月目の月末現金は124万円です。最低現金は4か月目の68万円で、0のときより66万円低くなります。
この例では、割合を10%、月数を2か月にした両方を入れると、12か月目の月末現金は92万円です。
見るのは、12か月目の月末現金と最低現金のどちらが動いたかです。返戻の割合は主に年間の現金を減らし、採用遅延は入金が始まる前の落ち込みを深くします。値は自事業所の実績か、採用の予定から置き、数値例の金額は入力の動き方を見るための架空の値として読みます。
開業初期の赤字を後の黒字から引く
法人で開業した初期の赤字は、青色申告書を出すなど条件を満たせば、後の黒字の年の法人税の所得から引けます。繰越期間や条件は「訪問介護の開業初期の赤字を引き継ぐ青色欠損金の繰越控除:10年の期限と条件」で整理しています。
月次の資金繰り表の作り方
入金と支出の行の分け方、給与・社会保険料の支払月の置き方、4か月の数値例は、訪問介護の資金繰り表の作り方:入金2か月後の月次表で整理しています。
労働保険料の事業主負担
資金繰りでは、給与のほかに事業主が負担する労働保険料も支出に入ります。料率と計算例は、訪問介護の労働保険料(労災・雇用保険):事業主負担の料率と計算例(令和8年度)で確かめられます。
次に知りたいこと:開業資金の目安が違う理由
開業資金の総額に運転資金を含めるかで、民間の目安は大きく変わります。違いの整理は訪問介護の開業資金の目安が大きく違う理由にあります。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 開始時点の現金と初期投資を入力する
- 給与・家賃等の支払月を並べる
- 請求月と入金予定月を分ける
- 返戻・入金遅延を含む保守ケースを確認する
関連ガイドで計画をつなぐ
隣接する判断をつなぎ、記事単体で計画を止めないためのガイドです。
よくある質問
迷いやすい範囲と確認順を、質問ごとに整理します。
訪問介護の売上月と入金月は同じですか?
同じとは限りません。提供、請求、審査、決定、入金を分け、対象年度・地域の国保連が公開する日程を確認して月次資金表へ反映します。
資金繰りでは返戻をどう扱いますか?
通常の入金予定から分け、原因、対応者、再請求予定月を記録します。未解決の金額を確定した将来入金として扱いません。
開業前にどの現金指標を確認しますか?
十二か月の月末現金、期間中の最低現金、最初の不足月を確認し、採用・契約・設備を延期または縮小する条件を決めます。
事業計画ツールで確かめる
記事で整理した前提を事業計画ツールへ入力し、基準ケースだけでなく保守ケースの結果も確認します。
この例で収支を試算する →(月約700回の事業所規模のモデル例を入力した状態で開きます。厚生労働省の調査の月平均から換算したモデル値で、公定値ではありません)
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 東京都国民健康保険団体連合会「介護事業所等の皆様」(請求受付・支払日についてのページ(東京都国民健康保険団体連合会 介護事業所等向け案内))(確認日 2026-10-20)
- 東京都国民健康保険団体連合会「令和8年度 介護保険直接受付 会場開設日及び支払日」(受付月ごとの支払日(令和8年10月〜令和9年1月受付)・受付期間と郵送の注記)(確認日 2026-10-10)