運営 / 更新 2026-10-15
訪問介護の運営指導で指摘された項目:岐阜県・岩手県・新宿区の令和6年度の公表例
訪問介護の運営指導で実際に何が指摘されたかを、岐阜県、岩手県、東京都新宿区が公表した令和6年度の資料で整理しました。指摘は、訪問介護計画と記録、報酬の請求、人員と勤務表、運営の体制整備、変更の届出の5つに分けられます。3つの自治体が公表した例であり、全国の指摘件数の順位ではありません。
この記事で決めること
運営指導を控えた訪問介護の事業者が、自治体が公表した指摘の実例から自己点検の優先順を知るための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、運営指導の指摘事項の自己点検表(分類、確認する書類、自事業所の状況、直す期限)を作成できる状態を目指します。
この記事の範囲:3つの自治体が公表した令和6年度の指摘例
運営指導で確認される書類は訪問介護の運営指導(実地指導)で確認される記録・書類、確認項目ごとの自己点検は訪問介護の運営指導の確認項目と確認文書:自己点検表(個別サービスの質・体制の全項目)が扱います。この記事は、実際に指摘された内容を、確認の優先順を考える材料として並べます。
使った資料は、岐阜県の「令和6年度 運営指導における主な指摘事項」、岩手県の「令和6年度 運営指導の主な指摘事項(サービス別)」、新宿区の令和6年度集団指導資料「運営指導における指摘事項等について【訪問介護】」です。新宿区の資料は、実例を一部変更して掲載したものと断っています。
都道府県・市区町村ごとに公表の形式も範囲も違うため、指摘の件数を数えて多い順に並べることはしていません。自治体差があるので、自事業所の指定権者が公表している資料も確認してください。
訪問介護計画と記録:計画がない、計画とずれている、記録が足りない
岐阜県は、訪問介護計画が作成されないまま訪問介護を提供した事例、同じく計画がないまま訪問介護費や初回加算を算定した事例を指摘しています。サービス内容に変更があったのに居宅サービス計画と訪問介護計画が変更されていなかった事例も挙げています。
新宿区は、訪問介護計画の作成後に実施状況を把握していない事例、サービス内容や所要時間が変わったのに変更後の内容が計画に位置づけられていない事例、居宅サービス計画に位置づけられていないサービスを提供していた事例を挙げています。居宅サービス計画と一致しない場合は、ケアマネジャーに連絡して計画の変更を提案するよう求めています。
サービス提供の記録については、新宿区が、利用者の心身状況の記載がない、サービス種類の記載がない、買い物代行の代金受払の記載がない、利用者がサービス実績を確認する欄に記載がない、といった例を挙げ、記録は請求の根拠になるため具体的かつ正確に残すよう求めています。
報酬の請求:提供していない時間・区分での算定
新宿区が挙げた算定の誤りは、次の4つです。
| 指摘された内容 | 指導の内容 |
|---|---|
| 清掃や調理を利用者と一緒に行うとして身体介護を算定したが、実際は一緒に行っていなかった | 見守り的援助に当たらないので、身体介護ではなく生活援助で算定する |
| 通院介助で、介助が必要でない診察時間やタクシー移動の時間も所要時間に含めて算定した | 常時介助が必要でない時間は所要時間から差し引いて算定する |
| 予定していたサービスの一部が不要になり提供時間が短くなったのに、予定の時間で算定した | 実際に提供したサービスの提供時間で算定する |
| 20分未満のサービス提供なのに身体介護1を算定した | 標準的なサービス提供時間に合う適正な区分で算定する |
報酬の請求:資格・人員・加算の要件
岐阜県は、訪問介護員等の資格を持たない従業員が利用者にサービスを提供して請求した事例を挙げ、その場合は訪問介護費の所定単位数を算定できないとしています。2人の訪問介護員等による訪問で、資格を持たない従業員が提供したケースは、1人分の所定単位数を算定できないとしています。
加算については、岐阜県が特定事業所加算(Ⅱ)の会議の概要を記録するよう求め、岩手県が特定事業所加算の算定にあたり、訪問介護員等とサービス提供責任者の研修の目標、内容、期間、実施時期などを定めた計画を作成するよう求めています。岐阜県は共通事項として、サービス提供体制強化加算について、常勤換算で出した前年度(3月を除く)の平均を用いた職員の割合が分かるようにするよう指摘しています。
岩手県は、事業所と同一敷地内の建物に居住する利用者への訪問介護で減算が適用されていない事例を確認し、同様の事例がないか自主点検して報告するよう求めています。加算や減算の要件は、訪問介護の特定事業所加算(Ⅰ)〜(Ⅴ)の単位(加算率)と算定要件一覧(体制・人材)や訪問介護の加算 月次自己点検チェックリスト(6加算の記録の確認項目)で確かめられます。
人員と勤務表:常勤換算と兼務の記録
岩手県は、指定訪問介護員の員数が常勤換算で2.5に満たない期間があった事例、訪問看護事業所の管理者を兼務していて、訪問介護事業所の管理者としての勤務時間が少なく管理上支障があると認められた事例を挙げています。複数の職務を兼務する職員について、各職務の勤務時間数が分かる勤務表を整備するよう求める指摘は、共通事項として挙がっています。
訪問中に利用者の病状が急に変わった場合に、速やかに主治の医師へ連絡するなどの措置が取られていなかった事例も、岩手県が訪問介護の運営基準の指摘として挙げています。
運営の体制整備:計画・指針・委員会の記録
岩手県は、業務継続計画が未策定の訪問介護事業所に、速やかな策定と、研修・訓練の定期的な実施を求めています。共通事項として、感染症の予防とまん延防止の指針が改正後の内容で確認できなかった事例、感染症対策の委員会をおおむね6月に1回以上開催し結果を職員に周知すること、身体的拘束等の適正化と虐待防止の委員会を同時に開く場合にそれぞれの開催状況と結果が分かる記録を整理すること、職場のハラスメント防止の方針を明確にして周知することを挙げています。
岐阜県は、虐待の防止のための指針に、職員研修の基本方針、虐待が発生した場合の対応方法の基本方針、相談・報告体制に関する事項なども盛り込むよう求めています。
岩手県は、介護職員等処遇改善加算について、賃金改善の方法を処遇改善計画書を用いて職員に周知することを指摘しています。また、加算(Ⅰ)の算定にあたっては、職場環境等の改善に係る取組をホームページへの掲載等で公表するよう指摘しており、公表する内容は令和6年度の経過措置と令和7年度以降で異なります。
変更の届出と事故の報告:期限のある手続き
岐阜県は、運営規程を変更したのに県へ届け出ていなかった事例を挙げ、変更後10日以内に届け出るよう求めています。岩手県も、運営規程の変更届、業務管理体制の変更届、専用区画の用途が変わった場合の平面図の変更と変更届が出ていない事例を挙げています。運営規程に虐待の防止のための措置が記載されていない事例も、岩手県が指摘しています。
事故については、岐阜県が、施設内で発生した事故等は施設側の過失の有無を問わず、利用者自身や第三者に起因する場合でも報告するよう求め、発生(発見)から1週間以内に県へ報告するよう指摘しています。根拠には岐阜県の事故等発生時の報告事務取扱要領が挙がっています。他の自治体の期限は指定権者の案内で確認してください。
自事業所の点検に使う順番
3つの資料に共通して見えるのは、計画・記録・請求が互いに一致しているか、と、書類や委員会の記録が残っているかの2点です。次の順で自事業所を確かめると、指摘の実例に沿った点検になります。
1つ目は、直近の請求月の数件で、居宅サービス計画、訪問介護計画、サービス提供記録、請求した区分と時間が一致しているかを並べて確かめることです。2つ目は、勤務表で兼務職員の勤務時間数と常勤換算の人数が読み取れるかの確認です。3つ目は、業務継続計画、感染症と虐待防止の指針・委員会記録、運営規程の記載、変更届の控えがそろっているかの確認です。
ここで挙げた指摘は、それぞれの自治体が当時の基準で指摘したものです。個別の事業所が基準を満たしているかは、指定権者が判断します。
次に知りたいこと
確認項目を一つずつ自己点検するときは訪問介護の運営指導の確認項目と確認文書:自己点検表(個別サービスの質・体制の全項目)、年間のどの時期に何を準備するかは訪問介護の開業後の義務カレンダー(研修・訓練・処遇改善の実績報告)へ進めます。請求の誤りが見つかったときの扱いは、訪問介護の報酬返還:不正請求の徴収金(100分の40の上乗せ)と過誤調整の違いで確認できます。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- この記事の分類(計画・記録、請求、人員・勤務、体制整備、届出)ごとに、自事業所で確認する書類を点検表の行に写す
- 直近の訪問介護計画と居宅サービス計画を並べ、サービス内容・時間・頻度が一致しているか、変更後の計画があるかを確かめる
- 直近の請求月の記録を数件抜き出し、記載漏れと算定した区分・時間が合っているかを確かめる
- 勤務表、運営規程、業務継続計画、虐待防止・感染症の委員会記録、変更届の提出控えの有無を確かめ、不足を直す期限とともに点検表に残す
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 岐阜県「令和6年度 運営指導における主な指摘事項(共通事項・訪問系サービス)」(確認日 2026-10-15)
- 岩手県「令和6年度 運営指導の主な指摘事項(サービス別)」(確認日 2026-10-15)
- 東京都新宿区「令和6年度集団指導 運営指導における指摘事項等について【訪問介護】」(確認日 2026-10-15)