運営 / 更新 2026-10-15

特定事業所加算を取ると増収はいくらか:加算率×月の報酬額と損益分岐の計算例

特定事業所加算の増収は、加算率に、1回ごとの所定単位数の月の合計と1単位の単価をかけて出します。要件を満たすための追加コストは事業所ごとに違うため、このページは、増収の計算と、追加コストを入れたときの損益分岐の出し方を、架空の数値例で確認します。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

この記事で決めること

訪問介護の管理者や経営者が、特定事業所加算(Ⅰ)〜(Ⅳ)を取るかどうかを決めるために、加算率と月の基本報酬額から増収を出し、要件を満たすための追加コストと比べて損益分岐の報酬額を計算するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、特定事業所加算の損益表(月の所定単位数の合計、1単位の単価、区分ごとの月の増収、要件ごとの追加コスト、損益分岐の月の基本報酬額)を作成できる状態を目指します。

このページで計算するもの:増収と、損益分岐の月の報酬額

特定事業所加算(Ⅰ)〜(Ⅳ)は、指定訪問介護の1回ごとの所定単位数に、区分ごとの割合をかけた単位数を加算する仕組みです。割合は、(Ⅰ)が100分の20、(Ⅱ)と(Ⅲ)が100分の10、(Ⅳ)が100分の3です。区分ごとの要件は訪問介護の特定事業所加算(Ⅰ)〜(Ⅴ)の単位(加算率)と算定要件一覧(体制・人材)にあります。

加算を取る価値は、増収から追加コストを引いた差で決まります。このページは、増収を出す式と、追加コストがいくらまでなら増収が上回るかという損益分岐の式を扱います。区分(Ⅴ)は中山間地域等の利用者が条件のため、ここでは扱いません。

増収の式:月の所定単位数×加算率×1単位の単価

増収の月額は、次の式で概算できます。月の所定単位数の合計は、訪問1回ごとの所定単位数(身体介護中心型や生活援助中心型の時間区分ごとの単位数)を、1か月分足し合わせたものです。1単位の単価は、事業所の所在地の地域区分で決まり、訪問介護ではその他の地域の10円から1級地の11.4円までです。

式:月の増収(円)=月の所定単位数の合計×加算率×1単位の単価。実際の請求は、1回ごと・1人ごとの端数処理があるため、この式の結果は目安です。他の加算や減算の扱いは、この式に入れていません。

数値例:月の所定単位数が187,700のとき、区分ごとの増収

次の数値は説明用の架空の例で、実在の事業所の値ではありません。月に、身体介護中心型の30分以上1時間未満(387単位)を300回、生活援助中心型の20分以上45分未満(179単位)を400回提供し、1単位の単価が10円の地域とします。

所定単位数の合計は、387×300=116,100単位と、179×400=71,600単位を足した187,700単位です。基本報酬の月額は1,877,000円になります。

区分ごとの月の増収(架空の例、所定単位数の合計187,700単位、1単位10円)
区分加算率加算される単位数(月)月の増収(円)
特定事業所加算(Ⅰ)20%37,540単位375,400円
特定事業所加算(Ⅱ)・(Ⅲ)10%18,770単位187,700円
特定事業所加算(Ⅳ)3%5,631単位56,310円

追加コストの欄:要件ごとに、増える人件費・時間・費用を書き出す

追加コストは、要件を満たすために新しく増える費用だけを書きます。すでに行っていることは、費用が増えないため入れません。

人件費や研修費の相場は、このページが確認した一次資料に無いため、数値は示しません。事業所の賃金表と、見積もりで埋めてください。

体制要件は、研修計画の作成と実施、会議の定期開催と文書等での情報伝達・終了後の報告、健康診断等の定期実施、緊急時対応方法の明示の4号で、区分(Ⅰ)〜(Ⅳ)に共通です。会議や研修の時間の人件費、文書での伝達と報告を受ける時間、健康診断の費用、記録の作成にかかる時間を見ます。記録の内容は特定事業所加算の体制要件4項目:会議・研修計画・健康診断・緊急時対応の記録にあります。

区分ごとの要件では、人材要件の介護福祉士の割合を満たすための採用・資格取得の支援と手当、常勤のサービス提供責任者の上乗せ配置、重度要介護者等への対応体制を見ます。割合の出し方は特定事業所加算の人材要件の割合の計算と数値例(別紙9)にあります。届出書類の準備にかかる時間も、特定事業所加算の届出書類:別紙9・9-2・9-3と添付書類8点(京都府)を見て加えます。

追加コストの書き出し表(金額は事業所の数字で埋める欄)
要件増える費用の例数え方
研修計画の作成・実施研修に出る時間の人件費、外部研修の受講料人数×時間×時給、受講料×人数
会議の定期開催と、文書等での情報伝達・終了後の報告会議に出る時間、文書の作成と報告を受ける時間の人件費人数×時間×回数×時給
健康診断等の定期実施診断の費用で、すでに行っていれば増えない人数×1人の費用の差分
人材要件(介護福祉士などの割合)資格手当、資格取得の支援、採用費月の手当の増加分+年の費用÷12
常勤のサービス提供責任者の上乗せ常勤の人件費の増加分月の給与と社会保険料等の増加分
届出書類・毎月の割合の記録作成と確認にかかる時間の人件費担当者の時間×時給

損益分岐:追加コスト÷加算率が、月の基本報酬額の目安

増収が追加コストを上回る条件は、月の基本報酬額×加算率が、追加コストを超えることです。式を変えると、損益分岐の月の基本報酬額は、追加コスト÷加算率になります。次の表は、追加コストの月額を架空の10万円・20万円・30万円としたときの、損益分岐の月の基本報酬額です(円、小数点以下は切り捨て)。

同じ追加コストでも、加算率が3%の区分(Ⅳ)は、20%の区分(Ⅰ)の約6.7倍の基本報酬が必要になります。前の数値例(基本報酬の月額1,877,000円)では、区分(Ⅳ)の増収は56,310円で、追加コストが10万円なら赤字、区分(Ⅰ)の増収は375,400円で、追加コスト30万円でも黒字です。

損益分岐の月の基本報酬額(架空の追加コスト、単位は円)
追加コスト(月)加算率3%(区分Ⅳ)加算率10%(区分Ⅱ・Ⅲ)加算率20%(区分Ⅰ)
10万円3,333,333円1,000,000円500,000円
20万円6,666,666円2,000,000円1,000,000円
30万円10,000,000円3,000,000円1,500,000円

このページの範囲と、次に確認すること

このページが確認したのは、加算率(告示の別表、訪問介護費の注)と、所定単位数、地域区分ごとの単価です。人件費・研修費の相場、利用者の負担の増え方、個別の事業所が要件を満たすか、取るべきかは確認しておらず、判断もしません。

加算ごとの違いは訪問介護の加算の比較表で、届出の期限は加算の届出期限で確認できます。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 直近の月の請求から、訪問1回ごとの所定単位数を合計し、事業所の所在地の地域区分の1単位の単価をかけて、基本報酬の月額を出す
  2. 検討する区分の加算率をかけて月の増収を出し、区分(Ⅰ)〜(Ⅳ)のうち要件を満たせる見込みのある区分だけを並べる
  3. 要件ごとに、新しく増える人件費・研修費・記録の時間を賃金表と見積もりで書き出し、月額に直して合計する
  4. 追加コストを加算率で割って損益分岐の月の基本報酬額を出し、現在の基本報酬額と比べて、届出に進むかを決める

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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