運営 / 更新 2026-10-13
特定事業所加算の体制要件4項目:会議・研修計画・健康診断・緊急時対応の記録
特定事業所加算の体制要件は、区分に共通して、個別の研修計画、会議の定期的な開催、文書による指示と報告、健康診断、緊急時対応の明示の4項目です。この記事は、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)と留意事項通知(老企第36号)を2026-10-13に確認し、項目ごとに通知が求める運用と、後から示せるように残す記録を整理します。加算率や区分の選び方は特定事業所加算(Ⅰ)〜(Ⅴ)の算定要件で扱います。
この記事で決めること
特定事業所加算の届出を考える訪問介護事業所の事業者が、共通の体制要件4項目それぞれについて、告示と留意事項通知が求める運用(会議の開き方と頻度、指示と報告の方法、研修計画に書く内容、健康診断の対象と時期、緊急時対応の明示方法)と、後から示せるよう残す記録を確認するための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、特定事業所加算の体制要件の記録台帳(研修計画の様式・会議の開催日と概要・指示と報告の保存先・健康診断の実施日と対象者・緊急時対応を明示した文書)を作成できる状態を目指します。
体制要件4項目と、残す記録の対応
告示の第三号イは、特定事業所加算(I)の基準として、(1)研修計画、(2)会議と文書による指示・報告、(3)健康診断等、(4)緊急時等における対応方法の明示を、人材要件などと並べて定めています。この記事では、このうち(1)〜(4)を体制要件と呼びます。人材要件の割合の数え方は、介護福祉士の配置・割合が効く加算の早見表で確認します。
体制要件は、資格や人数と違い、日々の運用そのものが対象です。届出の時点で整えるだけでなく、算定している間、続けていることを示せる記録が必要になります。留意事項通知は、会議の概要の記録と、報告内容の保存を明記しています。
| 要件 | 告示の定め | 通知が求める運用 | 残す記録の例 |
|---|---|---|---|
| (1) 研修計画 | 全ての訪問介護員等(登録型を含む)とサービス提供責任者に、一人ごとに研修計画を作り、研修(外部研修を含む)を実施または実施を予定する | 研修内容の全体像と研修のための勤務体制の確保を定め、個別に研修の目標・内容・期間・実施時期等を定める | 個人別の研修計画、事業所全体の研修の計画、研修の実施記録 |
| (2) 会議・指示・報告 | 会議を定期的に開催する。担当のヘルパーへ利用者の情報と留意事項を文書等の確実な方法で伝えてからサービスを始め、終了後に適宜報告を受ける | 会議はサービス提供責任者が主宰し、登録ヘルパーを含む全員が参加する。「定期的」は概ね1月に1回以上。指示は手交のほかFAX・メールでもよい | 会議の開催概要の記録、指示文書、サービス提供責任者が保存する報告の記録 |
| (3) 健康診断等 | 全ての訪問介護員等に、健康診断等を定期的に実施する | 常時使用する労働者に当たらない訪問介護員等も含め、少なくとも1年以内ごとに1回、事業主の費用負担で実施する | 対象者の一覧、実施日、費用負担がわかる記録 |
| (4) 緊急時対応の明示 | 緊急時等における対応方法が利用者に明示されている | 緊急時等の対応方針、緊急時の連絡先、対応可能時間等を記した文書を利用者に交付して説明する。重要事項説明書への明記でよい | 交付した重要事項説明書、説明した日の記録 |
個別の研修計画に書く内容
告示は、全ての訪問介護員等(あらかじめ事業所に登録し、指示があったときに利用者の居宅へ直接訪問する登録型の訪問介護員等を含みます)とサービス提供責任者に対して、一人ごとに研修計画を作ることを求めています。研修は外部の研修でもよく、実施するか、実施を予定していればよいとされています。
通知は、計画に書く内容を2つに分けています。ひとつは、事業所のサービス従事者の資質向上のための研修内容の全体像と、研修を実施するための勤務体制の確保です。もうひとつは、訪問介護員等及びサービス提供責任者ごとの、個別具体的な研修の目標、内容、研修期間、実施時期等です。
全体の年間予定表だけでは、個別の計画としては足りない点に注意します。
採用や育成の全体像は訪問介護員の採用・研修・定着計画、勤務表や研修の基準上の位置づけは訪問介護の勤務体制の確保等(基準第30条)で確認できます。
会議を開くときの決まり
告示の会議は、利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項の伝達、または訪問介護員等の技術指導を目的とした会議です。通知は、サービス提供責任者が主宰し、登録ヘルパーも含めて、事業所でサービス提供に当たる訪問介護員等の全てが参加するものでなければならないとしています。
全員が一堂に会する必要はなく、サービス提供責任者ごとにいくつかのグループに分けて開いても差し支えありません。開催状況は、その概要を記録しなければなりません。「定期的」とは、概ね1月に1回以上開催されていることをいいます。
登録ヘルパーが多い事業所では、全員が出られる日を一つに決めるのが難しいため、グループ別の回を月内に組み、誰がどの回に出たかを名簿で確認できるようにしておくと、全員の参加を示しやすくなります。開催日、出席者、話し合った内容の概要は、訪問介護の書類台帳に保存場所を決めて残します。
文書による指示と、サービス後の報告
告示は、サービス提供責任者が、担当する訪問介護員等に対し、利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を文書等の確実な方法で伝えてからサービスを始めること、終了後に担当のヘルパーから適宜報告を受けることを求めています。
通知は、指示に少なくとも書く事項として、利用者のADLや意欲、利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望、家族を含む環境、前回のサービス提供時の状況、その他サービス提供に当たって必要な事項を挙げ、その変化の動向を含めて記載するとしています。「前回のサービス提供時の状況」を除く事項は、変更があったときに記載すれば足ります。
「文書等の確実な方法」は、直接会って文書を手渡す方法のほか、FAX、メールなどでもよいとされています。報告の内容は、サービス提供責任者が、文書(電磁的記録を含みます)で記録を保存しなければなりません。
通知には、運用上の例外も書かれています。1日のうちに同じ訪問介護員等が同じ利用者を複数回訪問する場合で、利用者の体調の急変などの特段の事情がないときは、その利用者の指示と報告を省略してよいとされています。
サービス提供責任者が事業所にいない時間帯のサービスについては、事前に一括で指示を出し、あとで適宜報告を受けてもよいとされています。この場合、前回のサービス提供時の状況などをヘルパー同士で引き継ぐこと、体調の急変に備えてサービス提供責任者との連絡体制を確保することが条件です。
サービスの実施内容を記録するサービス提供記録は、利用者の記録として別に整備する書類です。指示と報告の記録の保存期間は、訪問介護の書類の保存期間で確認します。
健康診断と緊急時対応の明示
通知は、健康診断等について、労働安全衛生法により定期に実施することが義務付けられた「常時使用する労働者」に当たらない訪問介護員等も含め、少なくとも1年以内ごとに1回、事業主の費用負担で実施しなければならないとしています。新たに加算を算定しようとするときは、少なくとも1年以内に健康診断等が実施されることが計画されていれば足ります。
登録ヘルパーのように勤務の時間が短い人も対象に入る点が、通常の健康診断の運用と異なります。健康診断の一般的な決まりは訪問介護の従業員の健康診断で確認します。
緊急時等の対応方法は、事業所の緊急時等の対応方針、緊急時の連絡先、対応可能時間等を記載した文書を利用者に交付して説明することで明示します。交付する文書は、重要事項説明書等にその内容を明記すればよいとされています。訪問介護の緊急時の対応の基準上の義務と合わせ、重要事項説明書に書いた連絡先と対応時間が実際の運用と合っているかを、新しい利用者の契約のたびに確認します。
届出の前と算定中に確認すること
届出の前には、4項目について、直近の記録が示せるかを次の観点で確認します。研修計画は個人別のものがあるか、会議は直近の月に開いた概要があるか、指示と報告は保存されているか、健康診断は実施の日付または計画があるか、重要事項説明書に緊急時の対応が書かれているか、の5点です。
算定を始めたあとも、体制要件が続いていることを示す必要があります。会議を開かない月が出た、新しく入った登録ヘルパーの研修計画が未作成のまま、といった事態は、要件を満たさない期間が生じることにつながります。満たさなくなったときの届出の扱いは、訪問介護の加算届出の提出期限で確認します。
このページは、個別の事業所が要件を満たすかどうかの最終判断や、届出に必要な書類の様式を示すものではありません。留意事項通知の本文は、このページが確認した時点のものと改正で変わる場合があるため、届出前に、事業所を管轄する指定権者に最新の取扱いと必要書類を確認してください。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 訪問介護員等ごと、サービス提供責任者ごとに、研修の目標・内容・期間・実施時期を書いた計画を作る。登録型のヘルパーも対象に入れ、外部研修を使う場合はその予定も書く。事業所全体の研修内容の全体像と、研修のための勤務の確保も別に定める
- 会議の開催日を月ごとに決め、登録ヘルパーを含めた全員が、どの回に出るかを割り当てる。一堂に集まれない場合はグループ別の回に分け、各回の概要を記録に残す。サービス提供責任者が不在の時間帯に備え、事前の一括指示と事後の報告の流れも決める
- 利用者ごとの指示文書の様式を作り、利用者のADLや意欲、主な訴えや要望、家族を含む環境、前回のサービス提供時の状況を書く欄を設ける。ヘルパーからの終了後の報告は、サービス提供責任者が文書か電磁的記録で保存する場所を決める
- 健康診断は、常時使用する労働者に当たらない訪問介護員等も含めた対象者の一覧を作り、事業主負担で実施する日を決める。緊急時の連絡先と対応可能時間を書いた文書を重要事項説明書に入れ、利用者へ交付して説明した日を残す
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準(訪問介護費における特定事業所加算の基準)」(確認日 2026-10-07)
- 厚生労働省老健局「別紙1 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)(抄)(新旧対照表)」(確認日 2026-09-26)
- 厚生労働省老健局「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号)平成27年度改正版」(確認日 2026-09-28)