運営 / 更新 2026-10-18
訪問介護の経営指標の早見表:稼働率・人件費率・損益分岐点・収支差率
訪問介護の月次で見る指標は、稼働率、人件費率、損益分岐点、収支差率の4つが中心です。割合の分母が収入のものと、時間や件数のものが混ざっているため、同じ「率」でも並べて比べられません。このページは、4つの指標の式と厚生労働省の調査で公表されている水準を1枚の表にまとめ、詳しい記事へつなぎます。
4つの指標の式と公表値の早見表
次の表は、4つの指標が何を測るか、式、全国の公表値の有無を並べたものです。公表値は厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査結果(令和6年度決算)の訪問介護の値で、1事業所あたりの月平均から出された数字です。稼働率と損益分岐点には、全国の公表値がありません。
| 指標 | 何を測るか | 式 | 全国の公表値(令和6年度決算) |
|---|---|---|---|
| 稼働率 | 給与を払う時間のうち、利用者へのサービスに使った時間の割合 | サービス提供時間の合計÷有給時間の合計(本サイトの式。制度上の定義はない) | なし(調査結果の本文に「稼働率」の語がない) |
| 人件費率 | 収入のうち給与費が占める割合 | 給与費÷収入 | 67.8%(令和5年度決算は67.0%) |
| 損益分岐点 | 収入と費用が等しくなる月の訪問件数 | (月間人件費+月次固定費+月次変動費)÷1訪問あたりの報酬額 | なし(事業所ごとの費用で決まる) |
| 収支差率 | 収入のうち、支出を引いたあとに残る割合 | (収入−支出)÷収入 | 9.6%(令和5年度決算は11.1%) |
この記事で決めること
月次で数字を見直す訪問介護の運営者が、4つの経営指標の式・分母の違い・全国の公表値の有無を1枚で確かめ、詳しい記事へ進むための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、月次の経営指標の見方メモ(稼働率・人件費率・損益分岐点・収支差率の式と分母の定義、自事業所の数字、公表値との差)を作成できる状態を目指します。
公表値の読み方:1事業所あたりの月平均で、補助金の扱いに注意する
この調査は、令和7年5月に令和5年度決算と令和6年度決算を調べたものです。訪問介護の調査客体は1,502、有効回答は638(有効回答率42.5%)です。
表の9.6%と67.8%は、物価高騰対策関連補助金を含まない税引前の値です。補助金を含めた場合は、収支差率が9.7%、収入に対する給与費の割合が67.7%と、別の数字で公表されています。
収支差率の収入には、介護報酬(利用者負担分を含む)、保険外利用料、補助金(物価高騰対策関連補助金を除く)が入ります。支出には、介護事業費用、借入金利息、本部費繰入が入ります。自事業所の収支差率を計算するときは、借入金利息を支出に入れるかどうかも、公表値と同じにそろえます。
同じ調査では、令和6年度決算で赤字の訪問介護事業所が35.1%、黒字が64.9%と公表されています。9.6%は平均の値で、目標や基準の値ではありません。自事業所の数字がこれより低くても高くても、それだけで良し悪しは決まりません。
人件費率と収支差率は同じ分母で、足し引きして読める
人件費率と収支差率は、どちらも収入を分母にしています。令和6年度決算の月平均では、収入が3,290千円、支出が2,973千円、差引が316千円(収支差率9.6%)で、給与費は2,230千円です。差引316千円は調査表の値で、四捨五入のため引き算とは1千円ずれます。
この月平均から計算すると、給与費以外の支出は743千円で、収入の約22.6%です。収入を100%にすると、給与費が67.8%、給与費以外の支出が約22.6%、残りが9.6%という並びになります。この内訳は、公表された月平均の金額から本サイトで計算したものです。
式の上では、収支差率を動かす要素は、給与費の割合、給与費以外の支出の割合、収入の3つです。どれを動かすかは、自事業所の数字で決めます。
稼働率は時間、損益分岐点は件数で測るため、収入を分母にした2つの割合とは単位が違います。稼働率の数字を人件費率や収支差率に足し引きすることはできません。
月次で見る順番の例:売上、人件費率、稼働率、損益分岐、収支差率
指標を一度に全部見ると、どれが原因か分からなくなります。次の順に見る方法があります。
1つ目は売上です。訪問件数と1件あたりの報酬額から月の売上を出します。計算の組み立ては訪問介護の売上の計算方法と平均で確認できます。
2つ目は人件費率で、売上に対して給与費が重くなっていないかを見ます。公表値との比べ方は訪問介護の人件費率は67.8%(令和7年度調査)|自事業所の数字で比べる計算つきにあります。
3つ目は稼働率で、人件費のうち移動や待機に使われた時間が多くないかを見ます。分母の取り方で数字が変わるため、訪問介護の「稼働率」の計算式と平均:指定基準に定義なし、公的な平均値もなしで定義を固定してから使います。
4つ目は損益分岐点で、実績の訪問件数が分岐の件数を上回っているかを見ます。式の前提は訪問介護の損益分岐点(訪問件数)の計算式とシミュレーター前提で確認できます。
5つ目は収支差率で、月ごとの変動が大きいため、年間でも見ます。利益率との違いは訪問介護の利益率と収支差率の違い(9.6%の読み方)で整理しています。
計画と実績の差を毎月分解する方法は訪問介護の月次KPIと予実差異分析で、黒字でも現金が減る月を見つける方法は訪問介護の資金繰り表の作り方:入金2か月後の月次表で確認できます。
このページで確認した範囲
厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査結果とその概要で、訪問介護の収支差率、収入に対する給与費の割合、赤字・黒字事業所の割合、収支差率の定義を2026-10-18に確認しました。稼働率と損益分岐点の式は、本サイトのシミュレーターの定義です。
自事業所の指標が良いか悪いかの判断、他サービスの水準、地域区分別や規模別の値は扱っていません。数字は全国の平均であり、利益や黒字化を保証するものではありません。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 稼働率の分子と分母に入れる時間を決めて書き留め、月ごとに同じ定義で記録する
- 月の売上と給与費から人件費率を出し、厚生労働省の令和6年度決算の67.8%と、補助金の扱いをそろえて比べる
- 月間人件費・固定費・変動費の合計を1訪問あたりの報酬額で割り、損益分岐点の件数と実績の訪問件数を並べる
- 収入と支出から収支差率を出し、借入金利息を支出に入れるかを公表値の定義にそろえたうえで、年間でも確認する
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省老健局老人保健課「令和7年度介護事業経営概況調査結果(令和7年度介護事業実態調査)」(確認日 2026-09-22)
- 厚生労働省老健局老人保健課「令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要」(確認日 2026-09-22)