指定申請 / 更新 2026-10-25
有料老人ホームの設置届出:届出事項と、開設後の変更届・廃止届・年1回の報告
老人を入居させて介護や食事の提供などをする施設は、老人福祉法で「有料老人ホーム」にあたり、設置の前に都道府県知事へ届け出ます。届出の義務は、介護保険の指定とは別の法律で定められています。この記事は、老人福祉法の第29条と同法施行規則を2026年10月25日にe-Govで確かめた範囲で、届出の時期・届出事項・開設後の義務を整理したもので、窓口や様式、指導指針は都道府県ごとに異なるため設置予定地の担当窓口で確かめてください。
老人を入居させ、介護や食事などを供与する施設が対象(法第29条第1項)
老人福祉法第29条第1項は、有料老人ホームを、老人を入居させ、入浴・排せつ・食事の介護、食事の提供、その他の日常生活上必要な便宜で厚生労働省令で定めるもの(以下「介護等」)を供与する事業を行う施設としています。省令で定める便宜は、洗濯・掃除等の家事と健康管理です(施行規則第20条の3)。
供与には、他に委託して供与をする場合と、将来供与することを約束する場合も含まれます。条文は介護等の種類を「又は」でつないでいますが、個々の施設が届出の対象に当たるかどうかは、設置予定地の都道府県の担当窓口に確かめてください。老人福祉施設や認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居など、省令で定める施設は有料老人ホームから除かれます。
この記事で決めること
訪問介護の事業者が、自ら有料老人ホームを開設する、または運営する法人と組むことを考えるとき、老人福祉法上の設置の届出の時期・届出先・届出事項と、開設後に続く義務を条文で知りたい人向け。ための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、有料老人ホームの設置届出チェック表(1枚):届出の要否、届出事項16項目の準備状況、前払金の有無と保全措置、開設後の期限つき義務を作成できる状態を目指します。
届出先は設置予定地の都道府県知事で、設置の前に行う
有料老人ホームを設置しようとする者は、あらかじめ、設置予定地の都道府県知事に届け出ます(第1項)。届け出を受けた都道府県知事は、遅滞なく、設置予定地の市町村長に通知します(第4項)。市町村長は、届出がされていない疑いのある有料老人ホームを見つけたときは、都道府県知事に通知するよう努めるものとされています(第5項)。
介護保険の指定とは別の手続きです。介護付きとして特定施設入居者生活介護の指定を受ける場合の人員・設備の基準は特定施設入居者生活介護の指定基準で、入居定員29人以下の場合は地域密着型特定施設入居者生活介護の指定基準で確かめられます。
届出事項は法の3項目と省令の16項目(施行規則第20条の5)
法が定める届出事項は、施設の名称と設置予定地、設置しようとする者の氏名・住所または名称・所在地、そして省令で定める事項です(第1項各号)。省令で定める事項は、次の表の16項目です。書類で裏づけるものが多く、設置の計画が固まってから集めると時間がかかります。
前払金(入居一時金など)を受け取る場合は、保全措置を講じたことを証する書類と、一時金の返還に関する契約の内容も届出事項に入ります(第12号・第13号)。保全措置の内容は、施行規則第20条の10が「一時金に係る銀行の債務の保証その他の厚生労働大臣が定める措置」と定めています。具体的な措置の中身は、この記事では扱っていません。
| 区分 | 届出事項 |
|---|---|
| 設置者と管理者 | 登記事項証明書または条例等、管理者の氏名と住所、直近の事業年度の決算書 |
| 建物と定員 | 建物の規模・構造・設備の概要、建築基準法第6条第1項の確認を受けたことを証する書類、入居定員と居室数 |
| 運営と職員 | 事業開始の予定年月日、施設の運営の方針、供与する介護等の内容、職員の配置の計画 |
| 費用と資金 | 一時金・利用料などの費用負担の額、事業開始に必要な資金の額と調達方法、長期の収支計画 |
| 前払金 | 保全措置を講じたことを証する書類、一時金の返還に関する契約の内容 |
| 入居契約 | 入居契約書と、入居を希望する者への重要事項の説明文書 |
開設後の義務:変更届は1か月以内、廃止・休止は1か月前まで、報告は年1回以上
届出事項に変更があったときは、変更の日から1か月以内に届け出ます(第2項)。廃止または休止をするときは、その日の1か月前までに届け出ます(第3項)。
変更届が要るのは、名称・設置予定地、設置者の氏名・住所と、前の表の16項目のうち、事業開始の予定年月日(第2号)と事業開始に必要な資金の額・調達方法(第14号)を除いた項目です(施行規則第20条の5の2)。
設置者は、費用の受領の記録などを記載した帳簿を作成して保存し(第6項)、介護等の内容などの情報を入居者や入居しようとする者へ書面で開示します(第7項、施行規則第20条の7)。有料老人ホーム情報を都道府県知事に報告する義務もあり、報告は年1回以上、知事の定める日までに行います(第11項、施行規則第21条の3)。報告された内容は、都道府県知事が公表します(第12項)。
都道府県知事は、運営の状況について報告を求め、職員に立入検査をさせることができます(第13項)。第6項から第11項の違反や入居者の利益を害する行為があるときは改善命令、老人の福祉に関する法令などに違反して入居者の保護のため特に必要があるときは事業の制限・停止命令を出すことができます(第15項・第16項)。
前払金を受け取る場合の保全と返還、受け取れない金銭の定め
設置者は、家賃、敷金、介護等の対価として受け取る費用を除いて、権利金その他の金品を受け取ってはいけません(第8項)。終身にわたって受け取る家賃などの全部または一部を前払金として一括で受け取る場合は、算定の基礎を書面で明示し、返還債務に備えて保全措置を講じます(第9項)。
前払金には、入居一時金、介護一時金、協力金、管理費、入会金など、名称を問わない費用が含まれます。家賃の6か月分を上限とする敷金は除かれます(施行規則第20条の9)。
入居後3か月以内に契約が解除されるか死亡で終了した場合は、日割りで計算した額を差し引いた残りを返す契約を結びます。想定した入居期間内に終了した場合も、その後の期間の日割りの額を差し引いて返還する契約です(第10項、施行規則第21条)。
訪問介護の事業者が検討するときの位置づけと、確かめた範囲
訪問介護の事業者が有料老人ホームの運営法人と組む場合や、自ら開設する場合は、入居者への訪問介護について同一建物の利用者に対する減算の定めがあります。減算の判定は同一建物減算とサ高住・有料老人ホーム併設の90%判定の記事で読めます。
入居者が事業所を選べる扱いは住宅型有料老人ホーム・サ高住の入居者への訪問介護の記事に、収支の差はサ高住・有料老人ホーム等の訪問介護の収支差率の記事にあります。
この記事は、老人福祉法の第29条と、同法施行規則の第20条の3・第20条の5・第20条の5の2・第20条の6・第20条の9・第21条・第21条の3を2026年10月25日にe-Govで確かめた内容です。都道府県ごとの指導指針、事前相談の手順、届出の様式、除外される施設の範囲の細目、保全措置の具体的な方法は確認しておらず、届出の要否と準備は都道府県の担当窓口に確かめてください。
次に知りたいこと:サ高住の登録基準
有料老人ホームがサービス付き高齢者向け住宅として登録を受けると、設置前の届出などが不要になる場合があります。登録の基準はサービス付き高齢者向け住宅の登録基準で条文を確かめています。
次に知りたいこと:軽費老人ホームの基準
老人福祉法の施設には、有料老人ホームのほかに、低額な料金で入所する軽費老人ホームもあります。設備や職員配置は、省令で別に定められています。
対象者、居室の広さ、職員配置、居宅サービスを受けるための援助は、軽費老人ホームの設備・運営の基準の記事で整理しています。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 入居させる対象が老人で、入浴・排せつ・食事の介護、食事の提供、洗濯・掃除等の家事、健康管理のいずれかを自ら、または委託や将来の約束で提供するかを書き出し、届出の対象になりうるかを整理する
- 設置予定地の都道府県の担当窓口に、届出の時期と事前の相談の手順を問い合わせた日と回答を記録する(届出は設置前にあらかじめ行う)
- 省令の届出事項16項目(登記事項証明書、建築基準法の確認を受けた書類、決算書、職員の配置計画、費用負担の額、長期の収支計画、入居契約書など)の準備状況を一覧にし、足りない書類に担当者と期日を付ける
- 前払金を受け取る計画なら保全措置と返還の定めを、開設後の変更届(変更日から1か月以内)、廃止・休止の届出(日の1か月前まで)、年1回以上の報告の期限を、カレンダーに入れる
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「老人福祉法 第29条(有料老人ホームの届出・帳簿・情報開示・前払金の保全・報告・改善命令)」(第29条第1項〜第19項)(確認日 2026-10-25)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「老人福祉法施行規則 第20条の3・第20条の5・第20条の5の2・第20条の9・第21条・第21条の3(有料老人ホームの届出事項・前払金・報告)」(第20条の3、第20条の5第1号〜第16号、第20条の5の2、第20条の6、第20条の9、第21条第1項・第2項、第21条の3)(確認日 2026-10-25)