運営 / 更新 2026-10-03

訪問介護の利用者に関する市町村への通知(基準第26条):通知が必要な2つの場合と保険給付の徴収・制限との関係

訪問介護の事業者には、利用者が一定の場合に当たるとき、遅滞なく、意見を付してその旨を市町村に通知する義務があります(省令第37号第26条)。通知が必要な場合は2つで、正当な理由なく指示に従わず要介護状態の程度を増進させたと認められるとき、偽りその他不正な行為で保険給付を受け(または受けようとし)たときです。この記事は、条文と、介護保険法第22条・第64条との関係を整理します。通知するかどうかの個別の判断は扱いません。

この記事で決めること

指定訪問介護を受けている利用者が、正当な理由なく指示に従わず要介護状態を増進させたと認められるとき、または偽りその他不正な行為で保険給付を受け(受けようとし)たときに、事業者が遅滞なく意見を付して市町村へ通知する義務(運営基準第26条)の内容を、介護保険法第22条・第64条との関係とあわせて確認するための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、市町村への通知の判断と記録の手順書を作成できる状態を目指します。

条文が定める2つの場合(第26条)

第26条は、指定訪問介護を受けている利用者が次のどちらかに当たる場合に、遅滞なく、意見を付してその旨を市町村に通知しなければならないと定めています。一つ目は、正当な理由なしに指定訪問介護の利用に関する指示に従わないことにより、要介護状態の程度を増進させたと認められるときです。

二つ目は、偽りその他不正な行為によって保険給付を受け、または受けようとしたときです。どちらも条文の文言に当たる事実があるかどうかで判断します。個別の事実が条文に当たるかは、市町村に確認してください。

省令第37号第26条の2つの場合
号通知が必要な場合(条文の要旨)
第1号正当な理由なしに指定訪問介護の利用に関する指示に従わないことにより、要介護状態の程度を増進させたと認められるとき
第2号偽りその他不正な行為によって保険給付を受け、又は受けようとしたとき

通知の趣旨:法第22条・第64条との関係

老企第25号の掲載版は、第26条を、偽りその他不正な行為で保険給付を受けた者や、自己の故意の犯罪行為または重大な過失等により要介護状態等またはその原因となった事故を生じさせるなどした者について、市町村が、既に支払った保険給付の徴収(法第22条第1項)や保険給付の制限(法第64条)を行うことができることから、保険給付の適正化の観点で、事業者が市町村に通知しなければならない事由を列記したものと説明しています。

法第22条第1項は、偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者があるときに、市町村がその給付の価額の全部または一部を徴収できると定めています。法第64条は、正当な理由なしにサービスの利用に関する指示に従わないことなどで要介護状態等の程度を増進させた被保険者について、市町村が介護給付等の全部または一部を行わないことができると定めています。通知の趣旨は、この2つの権限に関わる事由を市町村に伝えることにあると説明されています。

事業者自身の不正は別の規定(法第22条第3項)

第26条の通知は、利用者の側の事情についての義務です。事業者が偽りその他不正の行為によって保険給付の支払を受けた場合は、法第22条第3項が別に定めており、市町村は、返還させるべき額を徴収するほか、その額に100分の40を乗じた額を徴収できるとされています。この記事は事業者側の不正の扱いを説明するものではなく、条文の所在を示すにとどめます。

不正な請求を避けるための記録の整え方はサービスの提供の記録、請求の月次サイクルは請求から入金・返戻・再請求までで確認できます。事業者側に問題が生じた場合の個別の対応は、指定権者に確認してください。

事業所で整えておく手順と記録

条文は、通知の様式、通知先の窓口、「意見」の書き方を定めていません。そのため、通知の方法は市町村に事前に確認しておく必要があります。通知が必要かもしれない事実に気づいたとき、誰が最終判断し、誰が通知を出すかを決めておくと、遅滞なくという要件に対応しやすくなります。

判断の材料になるのは、提供の記録と、訪問介護員等の報告、ケアマネジャーとの情報共有です。事実は日時・内容・利用者への説明と反応を、推測や評価と分けて記録します。ケアマネジャーとの連携はケアマネジャー連携、市町村への通知に係る記録も備え付けの対象に挙がっており、保存の対象と期間の考え方は記録の保存期間で整理しています。年数は自治体の条例等で異なる場合があるため、指定権者の案内で確認してください。

ほかの義務との区別と確認先

指示に従わない利用者への対応は、提供の拒否や他の事業者への紹介の問題と混同しやすい点です。提供拒否の考え方は提供拒否と他事業者への紹介で整理しており、第26条の通知は、それとは別の義務として条文に置かれています。苦情や事故が起きたときの初動は苦情・事故への対応で確認できます。

この記事は、条文と通知の掲載版で確認できた範囲の整理です。個別の利用者が第26条の各号に当たるか、通知の要否、通知に載せる内容の範囲、個人情報の取扱いは、事実関係と自治体の運用で変わります。判断に迷うときは、市町村の介護保険の担当窓口と指定権者に確認してください。確認先の一覧は指定権者に確認する事項の一覧にあります。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 運営基準第26条が定める2つの場合(正当な理由なく指示に従わず要介護状態を増進させたと認められるとき、偽りその他不正な行為で保険給付を受け又は受けようとしたとき)を、管理者とサービス提供責任者の共通の判断基準として手順書の冒頭に書く
  2. サービス提供の記録や訪問介護員等の報告から、該当しそうな事実(日時・内容・利用者への説明と相手の反応)を事実のまま記録する様式を決め、推測や評価と分けて書く
  3. 該当しそうなときは、担当のケアマネジャーとの情報共有と、通知先の市町村の窓口・通知の方法・意見の書き方を、事前に市町村へ確認しておく
  4. 通知は遅滞なく行う義務のため、誰が最終判断して誰が送るかを決め、通知した日付・内容・市町村の回答を記録として残し、運営指導の準備にもつなげる

一次資料

制度の確認に使用した公的一次資料です。個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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