運営 / 更新 2026-10-17

利用者宅の子どもが介護を担っているとき:訪問介護で気づく点と連携先

利用者宅で子どもが家族の介護を担っていたら、サービス提供責任者は事実を記録し、ケアマネジャーに伝え、必要なら市区町村に相談します。この記事は、子ども・若者育成支援推進法の第2条・第15条と、訪問介護の基準の第14条・第28条を読み、その上で、事業所内の進め方の例を示すものです。個別の世帯がヤングケアラーに当たるか、虐待に当たるかの判断は扱いません。

事務机に置かれたノートパソコンと書類・手帳の写真

法律が定める支援の対象:家族の介護その他の世話を過度に行っている子ども・若者

子ども・若者育成支援推進法の第2条第7号は、家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者への支援を、基本理念の一つに挙げています。支援は、子ども・若者の意思を十分に尊重して行うとされています。こども家庭庁のページによると、令和6年6月の法改正で、ヤングケアラーが国や地方公共団体等が各種支援に努めるべき対象として明記されました。

第15条第1項は、国や地方公共団体の機関、特定非営利活動法人などで、教育、福祉、保健、医療などの分野の事務に従事する関係機関等が、この子ども・若者に対し、相談・助言・指導、医療及び療養を受けることを助けること、生活環境の改善、修学又は就業を助けることなどの支援を行うよう努めると定めています。「努める」という書き方は努力義務で、訪問介護の事業所に特定の通報や届出を義務づけるものではありません。第2項は、子ども・若者の家族への相談や助言も同じく努めるとしています。

条文には「ヤングケアラー」という語は出てきません。どの程度から「過度」と言えるかは、個々の世帯の状況によるため、事業所が自分で判断を下す必要はありません。気づいた事実を、判断する立場の関係機関に渡すことが、この記事の中心です。

この記事で決めること

利用者宅に家族の介護を担う子ども(ヤングケアラー)がいると気づいたサービス提供責任者が、事実の記録、居宅介護支援事業者への情報提供、市区町村への相談の順に何をするかを、基準と子ども・若者育成支援推進法から確かめるための考え方と確認順を整理します。

読み終えたら、家族の介護を担う子どもに気づいたときの連絡メモ(気づいた日・見たこと・聞いたことの区別・サービス提供責任者への連絡の経路・ケアマネジャーへ伝えた日と内容・市区町村の相談窓口の連絡先と確かめた日)を作成できる状態を目指します。

サービス提供責任者の役割:状況の把握とケアマネジャーへの情報提供

訪問介護の基準の第14条は、事業者に、居宅介護支援事業者その他保健医療サービスや福祉サービスを提供する者との密接な連携に努めることを求めています。子どもの様子は、訪問介護員が利用者宅に入る時間に見える暮らしの一部ですが、その気づきを共有する先として、まず利用者のケアプランを立てている居宅介護支援事業者が基準の上でも想定されています。

第28条第3項は、サービス提供責任者の業務として、利用者の状態の変化やサービスに関する意向を定期的に把握すること、居宅介護支援事業者等に対して、訪問介護の提供に当たり把握した利用者の心身の状態及び生活の状況に係る必要な情報の提供を行うこと、サービス担当者会議への出席等により居宅介護支援事業者等と連携を図ること、訪問介護員等に利用者の状況の情報を伝達することを挙げています。子どもが介護や家事を担っていることは、利用者の生活の状況として「把握した必要な情報」に当たりうる、と読むのが自然です。ただし、この条文が子どもについて特別に定めているわけではありません。

条文の定めではなく運用の例として、訪問介護員が気づいた内容は、その場で子どもに尋ねて確かめず、サービス提供責任者へ伝える流れにしておくと整理しやすくなります。担当する訪問介護員とサービス提供責任者の間の情報の伝え方は、管理者とサービス提供責任者の責務(基準第28条)で確認できます。

記録に書くこと:見たことと聞いたことを分ける

以下は条文の定めではなく、事業所内の運用の例です。記録には、訪問介護員が見たこと(訪問した時間に子どもがいた、利用者の食事や排せつの手伝いをしていた、など)と、利用者や家族が話したこと(誰が何をしているかの説明)を分けて書き、推測や評価(「かわいそう」「過度だ」など)は書きません。判断は後で関係機関が行うため、事実だけが残っていることが役に立ちます。

記録を残す先は、訪問介護のサービスの提供の記録(基準第19条)と身分を証する書類の携行(第18条)の枠組みの中で、利用者の記録として整えるか、事業所内の別の連絡記録に整理します。子ども本人の氏名や学校名、家庭の詳しい事情は、必要以上に書かない運用にしておくと、記録の取り扱いに迷いません。個人情報の扱いは、事業所の方針と訪問介護の掲示・秘密保持・広告・紹介に関する運営基準を確かめてください。

連携先を決める順番:ケアマネジャー、次に市区町村

以下は条文の定めではなく進め方の例で、まず利用者を担当するケアマネジャーに、サービス提供責任者が事実を伝えます。サービス担当者会議の場で触れる方法もありますが、利用者や家族の前で話してよい内容かは事前に相談します。サービス担当者会議での事業所の動きは、サービス担当者会議で訪問介護事業所がすること:状況の把握・訪問介護計画の提出・変更の連絡にあります。

次に、子ども・若者育成支援推進法の第15条は、地方公共団体の機関も含めて関係機関等が支援に努めるとしているため、ケアマネジャーとの相談の結果、必要であれば市区町村の担当窓口に相談する流れが考えられます。ただし、窓口の名称や支援の内容は市区町村ごとに異なり、この記事では確認していません。事業所を置く市区町村と、利用者が住む市区町村の窓口に、相談の受け方を確かめてください。

子どもに命や安全の危険が及んでいるように見える場合や、利用者に対する虐待が疑われる場合は、上の順番にこだわらず、市区町村への連絡を含めて早めに検討する、という扱いも事業所内で決めておく例として考えられます。高齢者虐待の通報の決まりは高齢者虐待の通報義務:市町村への通報と通報者の保護で確認できます。

訪問介護の範囲との線引き:頼まれても、子どもの代わりにはならない

訪問介護は、利用者に対する介護保険のサービスで、同居家族がいること自体の扱いは訪問介護の同居家族へのサービス提供可否にまとめています。子どもがしている手伝いを、訪問介護の内容に加えるかどうかは、ケアプランと訪問介護計画の見直しの中で決める事項で、事業所が単独で決める運用は避けたほうがよいと考えられます。見直しはケアマネジャーに相談します。

また、これも運用の例ですが、訪問介護員が子どもに家事や介護の手伝いを頼むことは避け、利用者や家族に頼まれた場合は、サービス提供責任者に相談して、ケアマネジャーと範囲を確かめる、と決めておくと迷いません。範囲の考え方は、老計10号とは?訪問介護でできること・できないこと一覧(身体介護・生活援助の区分)にあります。

事業所で整えておくこと

次の3点を事業所内で決めておくと、訪問介護員が気づいたときに動きやすくなります。気づいたことを誰にどの方法で伝えるか、ケアマネジャーへの伝え方と記録の最小限の項目、市区町村の相談窓口の連絡先の3点です。

こども家庭庁のページには、介護・障害・生活保護・医療などの関係機関向けのポスター「ヤングケアラーに気づくために」や、関係通知が掲載されています。この記事ではポスターと通知の本文を読んでいないため、気づきのポイントの内容は書いていません。研修や内部資料を作るときは、こども家庭庁のページの資料を直接開いて確かめてください。

実行チェックリスト

次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。

  1. 訪問介護員が気づいた内容を、サービス提供責任者へ伝える連絡の経路を決め、見たことと聞いたことを分けて書く記録の項目を、事業所内で決める
  2. 利用者を担当するケアマネジャーに、サービス提供責任者から事実を伝える方法(電話・サービス担当者会議の前の相談など)を決め、伝えた日と内容を連絡メモに記録する
  3. 子どもに家事や介護の手伝いを頼まないこと、頼まれたときはサービス提供責任者に相談してケアマネジャーと範囲を確かめることを、訪問介護員に伝える内容として決める
  4. 事業所を置く市区町村と、利用者が住む市区町村の担当窓口に、相談の受け方を確かめ、窓口の連絡先と確かめた日を連絡メモに書く

一次資料

個別地域の運用は指定権者で確認してください。

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