運営 / 更新 2026-10-28
訪問介護の継続・撤退を考えるときの指標と時期(開業後の月次の見方)
訪問介護を開業したあとに続けるか撤退するかを考える材料は、月次の指標、手元資金が何か月もつか、廃止の届出期限の3つです。公的な基準値は確認できていないため、この記事は可否を判定せず、数字を同じ定義で並べて見る方法と、廃止届の期限から逆算した時期の置き方を示します。
参入前・開業後・手続きの3つの記事の分け方
倒産の件数と原因を開業前の計画の下振れ確認に使う方法は訪問介護の倒産件数と原因にあります。休止・廃止を決めたあとの届出と引継ぎは訪問介護事業所の閉鎖手続きにあります。この記事は、その間にあたる、開業後に実績の数字を見て続けるかを考える段階を扱います。
この記事で決めること
訪問介護を開業したあとの経営者が、続けるか撤退するかを考えるために、どの指標をどの頻度で見るか、廃止の届出期限から逆算していつまでに決める必要があるかを確かめたい。ための考え方と確認順を整理します。
読み終えたら、続ける・止めるを考える月次確認表(指標の実績、資金の残り月数、廃止する場合の届出期限からの逆算)を作成できる状態を目指します。
月次で見る指標と、続ける・止めるを考えるときの問い
指標の式は訪問介護の経営指標の早見表で定義を固定しています。定義を月ごとに変えると推移が比べられなくなるため、先に固定してから記録します。次の表の見る頻度は、本サイトが置く見方の例で、法令や通知の定めではありません。
| 指標 | 見る頻度の例 | 考えるときの問い | 確認先 |
|---|---|---|---|
| 訪問件数と損益分岐点 | 毎月 | 実績の件数が損益分岐の件数を何か月続けて下回っているか | 損益分岐点の計算式 |
| 稼働率 | 毎月 | 移動や待機の時間が増えて、給与を払う時間のうち提供に使えた割合が下がっていないか | 稼働率の計算式 |
| 人件費率 | 毎月 | 収入に対して給与費が重くなり続けていないか | 人件費率 |
| 収支差率 | 毎月と年間 | 月ごとの変動を除いて、年間でも赤字かどうか | 利益率と収支差率の違い |
| 手元資金が何か月もつか | 毎月 | 赤字の月の現金の減り方が続くと、資金がいつ尽きるか | 資金繰り表の作り方 |
手元資金が何か月もつかの数え方(本サイトの式)
式は、手元資金÷赤字の月の現金の減少額で、公的な定義はなく本サイトが置いた式です。たとえば手元資金が600千円で、赤字の月に現金が毎月150千円ずつ減るなら、600÷150で4か月が目安です。この数字は計算の流れを見るための架空の例で、実在の事業所の水準ではありません。
介護報酬は請求の2か月後に入金されるため、売上が立っている月でも現金が先に減ることがあります。入金の遅れを織り込んだ月次表の作り方は訪問介護の資金繰り表の作り方で確認できます。
全国の公表値は目標ではなく参考として置く
厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査結果(令和6年度決算)では、訪問介護の収支差率は9.6%、赤字の事業所は35.1%、黒字は64.9%と公表されています。9.6%は1事業所あたりの月平均から出した値で、続ける・止めるを分ける水準ではありません。
自事業所の数字がこれより低くても、それだけで続けられないとは決まりません。立ち上げ直後は固定費が先に出るため、開業月からの経過月数を添えて、推移で見ます。
廃止届の期限から逆算した時期の置き方
介護保険法第75条第2項は、事業を廃止または休止しようとするときは、その日の1か月前までに届け出るよう定めています。手元資金が尽きる月に廃止するなら、その1か月前までに届け出る必要があるため、資金が尽きる月から1か月以上前に、決める期限を置いておく必要があります。
同法第74条第5項は、廃止または休止の届出をした事業者に、届出の日前1か月以内にサービスを受けていた利用者のうち、引き続きの提供を希望する人へ、ほかの事業者から同様のサービスが受けられるよう便宜を提供することを求めています。引継ぎ先の調整にかかる期間も、廃止の予定日より前に確保します。
具体的な様式、提出先、期限の運用は指定権者ごとに異なります。手順は訪問介護事業所の閉鎖手続きで確認できます。
廃止のほかに考える選択肢
廃止のほかに、一定期間の休止、事業の譲渡があります。事業譲渡と株式譲渡で指定の手続きが異なる点は訪問介護事業所を売却・譲渡するときの指定手続きで整理しています。どれを選ぶかは、費用、利用者の状況、資金で決まるため、この記事では判定しません。
このページで確認した範囲
訪問介護の収支差率9.6%・赤字事業所35.1%は厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査結果、廃止・休止の届出と利用者への便宜の提供は介護保険法第74条第5項・第75条第2項の、当サイトの既存記事での確認結果を使っています。続ける・止めるの基準値、他サービスの水準、地域別・規模別の値は扱っていません。
実行チェックリスト
次の順に確認します。未確認の項目は推測で埋めず、担当と確認期限を残してください。
- 月ごとに稼働率・人件費率・訪問件数と損益分岐点の件数・収支差率を同じ定義で記録する。定義は先に固定し、途中で変えない
- 手元資金を月の資金の減り(赤字の月の現金の減少額)で割り、資金が何か月もつかを出す。黒字の月は計算の対象外にして、赤字が続く月を数える
- どの数字がどの水準になったら見直しに入るかを、事業所の判断として先に書いておく。公的な基準値はないので、全国の平均は目標ではなく参考として置く
- 廃止や休止を選ぶ場合は、予定日の1か月前までに届け出る必要があるため、資金が尽きる時期から逆算して決める期限を置き、利用者の引継ぎ先の調整を始める日も書く
関連ガイドで計画をつなぐ
隣接する判断をつなぎ、記事単体で計画を止めないためのガイドです。
よくある質問
迷いやすい範囲と確認順を、質問ごとに整理します。
訪問介護を続けるか撤退するかを決める公的な基準はありますか?
このサイトで確認した範囲では、続ける・止めるを決める公的な基準値は見つかっていません。令和7年度介護事業経営概況調査結果では訪問介護の収支差率は9.6%、赤字の事業所は35.1%と公表されていますが、平均の値で目標や基準ではありません。事業所ごとの費用と手元資金で決めることになります。
廃止を決めたら、いつまでに届出が必要ですか?
介護保険法第75条第2項は、廃止または休止の日の1か月前までに届け出ると定めています。手元資金が尽きる時期から逆算して、届出の期限を先に置いておく必要があります。様式と提出先は指定権者ごとに異なります。
赤字の月が続いたら、すぐ廃止を考えるべきですか?
月ごとの変動が大きいため、1か月だけで決めず、収支差率や稼働率の推移と、手元資金が何か月もつかを合わせて見ます。休止や事業譲渡など、廃止以外の選択肢もあります。判断は事業所の状況によるため、この記事では可否を判定しません。
一次資料
個別地域の運用は指定権者で確認してください。
- 厚生労働省「介護保険法(第七十五条 変更の届出等)」(第75条第1項(変更の届出・10日以内)・第2項(廃止・休止の届出・1月前まで))(確認日 2026-10-25)
- 厚生労働省老健局老人保健課「令和7年度介護事業経営概況調査結果(令和7年度介護事業実態調査)」(訪問介護の収支差率(差引③)の表)(確認日 2026-10-22)
- 厚生労働省老健局老人保健課「令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要」(確認日 2026-10-25)